サクラの季節に「SILIN 火龍園」
2011年 4 月10日(日)
サクラの季節に訪ねたい店がある。六本木、東京ミッドタウンのSILIN 火龍園(ファンロン イエン)。日本にいながら香港を味わうことができ、サクラを楽しむことができる。「そろそろSILINに行かなきゃね」妻の催促が暖かくなる日ごとに頻度を増す。「本城さんのところもそうだけど、季節毎に行っておきたいんだよねぇ」用賀 本城とSILINへの訪問は年4回、妻はそんな目標を持っているらしい。そんなある日、前職の会社の後輩でありスカッシュ仲間の女の子(?)を伴い、今年は夜桜の照明は中止のため、日没前のSILINに向った。残念ながら檜町公園のサクラはまだ三分咲き。それでもほんのりと淡い桜色が窓際の席から眺めることができる。3月は別れの季節。4月は新たな出会いの季節。そんな狭間に咲くサクラは、別れや出会いの象徴となる。とくに今年は、重くせつない別れの季節になってしまったけれど…。
「うっわ〜♬美味しそうですねぇ〜っ」美しい皿に盛られたサイマキ海老の湯引きに、後輩女子が思わず声を上げる。テンションの低いお気楽妻との食事に慣れた身には、たまにはこんなリアクションが嬉しい。「これは、手で剥いてがしがし食べるんだよ」尾頭付きのサイマキ海老の食べ方に躊躇した様子の後輩女子に妻が優しく手ほどき。「これが香港だったら、半分の値段で3倍は海老が出てくるんだけどねぇ」海老好きの妻が続ける。続いて名物XO醤、そしてスジアラの姿蒸しが登場。取り分けは私の仕事。撮影した後に丁寧に柔らかな身をほぐし、上品な味付けに仕上げられた上湯(シャンタン)を掛け、白髪ネギを盛り付ける。うぅ〜む、やはり絶品。ところで、総支配人の根本さんの姿が見えない。スタッフに尋ねる。
「実は根本は、独立準備のために1月末に辞めまして…。私、世田谷の店におりました…と申します」新支配人からご挨拶を受ける。うへぇ〜っ!独立?どちらで?連絡先ご存知ですか?「はい、後ほどお伝えします」…ということは円満に辞めたのではあろうが、残念。後輩女子にもぜひ紹介したかった。この店の味と、彼の持ち味で、美味しさが倍増する妙味を味わってもらいたかった。「残念ですねぇ。でも、充分美味しいです♬」後輩女子にも気を遣わせてしまった。彼女は最近父親を亡くしたばかり。そう言えば、彼女が書いたという会葬礼状をいただき、思わず泣き笑い。通り一遍の文面ではなく、肉親しか分からない父親の生前の姿が実にいきいきと描かれていた。そう褒めると「あぁ、とても嬉しいです。葬儀社の方も気を遣った文章を用意していただいたんですけど、何か違うなぁって。でも、そう言っていただくと書いて良かったです」
お気楽妻は私のためにそんな会葬礼状を書いてくれるだろうか。そう問うと、「自分で書くと良いんじゃないの。きっと亡くなる前に式次第を考えたり、自分の葬儀のBGMとかも自分で選びそうじゃない?」なるほど。それも良いかな。「IGAさん、それ良いですよ、きっと」「私はパークハイアットでお別れの会をやってもらうんだ」…って、誰に?私は先に逝っちゃうよ。「うぅ〜ん、そうだねぇ」明るい葬式話で盛り上がる。この会食は、後輩女子を元気づけるためでもあった。彼女の亡き父親はまだまだお若く、余りに早いご逝去。病に倒れ、亡くなられた直前まで会話もでき、覚悟もあったかとは思うけれど、家族の悲しみはどれだけ大きなものだったか。そしてこの春、そんな2万人以上の突然の悲しみが、家族や友人、知人たちに訪れてしまったのだ。その悲しみの総和はどれほど大きなものか。
「今日はありがとうございました。まだまだほろりとすることも多いですが、この悲しみはきっと父との温かい思い出と一緒に抱えながら過ごして行くんだろうなぁ〜と思っています。時間の経過とともに温かい思い出が悲しみより大きくなれたら良いな、って。人とのご縁、感謝していきたいです。これからもよろしくお願いします」帰宅後、そんなメールが後輩女子から届いた。良い子だ(涙)
「わはっ!お久しぶりです。きちんとご挨拶もできずにいなくなり申し訳ありません。独立はまだまだです。立地等の悩み、迷いが大きく…あ、ブログは相変わらず楽しく読ませていただいていま〜す!」SILIN元総支配人の根本さんからメールが届いた。良いヤツだ(笑)
■食いしん坊夫婦の御用達(お店データ/過去の記事) SILIN火龍園