バゲットの謎「VIRON」
2011年 12 月25日(日)
ある週末、なぜか突然ヴィロンのバゲットが食べたくなった。どちらかと言えばご飯好きの私としては珍しい現象。パン好き、それもハード系のパンが大好きな、さらに言えばヴィロンのバゲットがどこのパンより好きな妻に提案。ヴィロンでランチはどう?「行くっ!行きたい!すぐ行く〜!」と数センチ飛び上がった。小さくバンザイまでして、小躍りしている。感情を余り表に出さない妻としては最大限の歓喜の表現だ。「Boulangerie Patisserie BRASSERIE VIRON」は、2003年に渋谷の東急本店の向いにOPENした、1階が対面式のパン屋(Boulangerie)で、ケーキ屋(Patisserie)で、2階のカフェレストラン(BRASSERIE)でお気軽なフランス料理とワインが楽しめる店。
この店は1階も2階も、そのままパリの街角にありそうな雰囲気。赤を基調とした店の内装も、POPも、何種類ものパンもケーキのディスプレーも、おフランスそのもの。ところで、フランスの味をそのまま日本に持ち込み、美味しいバゲットで有名な「PAUL」や「メゾンカイザー」と違い、「VIRON」は日本だけの店舗。フランスの製粉会社VIRONと提携し、レトロドールをはじめとした小麦粉を輸入しパンやお菓子を作っている。つまり、製法やパン屋としてのブランドを輸入するのではなく、フランスで修行した日本の職人たちが“粉”を輸入しパンやお菓子を作っているということ。和魂洋才?和魂和才?いずれにしても、バゲットという食べ物がきちんと日本人のものになったという証。ちょっと大げさだけど。
その日はタイミング良く、待つことなく2階のブラッスリーの席に案内された。いつも行列の店としてはとても珍しい。かなりラッキー。そしてランチに付いているバゲットが小さな木製の籠に入れられて登場。なんとこれがトンカツ屋のキャベツのように、お代わり自由♬「この店のバゲットの皮(クラスト)のかりかりと、もっちりの中身(クラム)のバランスが好きなんだよねぇ♬」バゲットを語らせると、口数が少ない妻が饒舌になる。「この穴(気泡)の空き具合が絶妙だよねぇ♡」この店のバゲットは確かに適度な大きさの気泡が不規則に空いている。かりっと固いぐらいの皮と、しっとりもっちりのクラムを口の中で一緒に味わう。シンプルな味なのに、パンだけでしみじみ旨い。大きな皿にたっぷりのニース風サラダと、バゲットと紅茶だけでかなり満足、満腹。
「え?もうバゲットお代わりしないの?」ご飯だったら小さな茶碗1杯も食べない妻が、バゲットを追加。私はもう充分にいただきました。それにしても妻が食べるバゲットを、ご飯に換算したら何杯分になるのか。いつもカロリーを気にしながら食事をする妻の食べたバゲットは何カロリーになるのか。「美味しいパンだけは、いっくらでも食べちゃうんだよねぇ」理解できないけれど、事実その通り。追加したバゲットをあっと間に平らげる。美味しいご飯だったら味噌汁だけで何杯も食べられるという人がいるように、きっと彼女はコーヒーだけでバゲット1本丸かじりも苦ではないかもしれない。
「ぜぇんぜんヘーキだよ!」記事を読みながら妻が宣う。口数の少ない妻を饒舌にし、小食の彼女を大食漢にする、魔性の食物。恐るべしVIRONのバゲット!