満足度UP↑「鮨いち伍」千歳烏山

KawahagiChutoroの店からは確かに足が遠のいていた。行きたくなかった訳ではなく、むしろ逆。食べに行きたくて仕方なかったのだ。けれど、いつもタイミングが悪かった。ある日は雨。駅からちょっとだけ遠いその店に行くには気が重い。ある日は妻に拒まれた。「だってお米を食べると体重が乗っかってくるんだよね」誤解のないように説明すれば、この店のシャリは小さい。ネタの下に上品に佇んでいる。その上、体重が増えたと宣う妻の“体重”は平均的な女性よりは少なめ。体脂肪率は10%台。それで体重が乗るもないだろう!と思いながらも訪問するきっかけを逸した。そして、ジムに行く予定だったある夜、ジムで走るのをパスして鮨行かない?という提案が可決された。

AjiEbiいち伍」が、その店の名前。数年前に開店したばかりの若い店。店主もまだ若く、接客がやや硬め。お気楽夫婦も何度か通って馴染みになり、年に数回通う程度の半常連客となった。引戸を開けて店内へ。「お久しぶりです。ところで、ウチは右が入口ですからね。IGAさんたち、前も左から入られたんですよ」珍しく長いセリフで店主に迎えられる。そのことばに先客の女性がふふっと笑う。あらら、店の空気が柔らかい。以前あった硬い空気が良い感じに解れている。「1年振りくらいですか」まさか、そんなに空いてないよと返す。ん、当りも柔らかいぞ。「こんばんは。いらっしゃいませ」接客担当の奥さまは相変わらず柔やか、穏やか。ふぅむ、これは良いぞ。

SabaKakiの店の鮨には不満は全くなかった。妻もその味に惚れ込み、この店以外では鮨を食べなくなった。「だってせっかく食べるのに、美味しくない鮨は食べたくないし」おっしゃる通り。その上、口数の少ない店主ともきちんとコミュニケーションが取れ、気遣わずに食べられるようになった店だ。わざわざ他に行く必然はない。握りのお任せ、最初の1貫は旬のカワハギに肝がたっぷり。「この季節は食べないとねぇ」「そうですよね。カワハギの今頃の肝は美味しいですよね」あらら、妻のセリフもきちんと拾った。続いてマグロ。ん、これは旨い。「づけです。最初のが2日、2つ目の中トロが浸けて6日目です」てなことを店主が言ったような気がする。うんまぁい。聞いちゃいない。でも、店主のことばも以前より柔らかい。

SanmaKohada、サンマ、鯖、この店の青魚の握りは、どれも絶妙の味わい。それぞれ醤油をひと刷毛さっと塗り、おろした生姜と共に供される。ぽてっと艶っぽい牡蛎は煮切りを纏い、車海老は淡い返し醤油の衣を1枚羽織っている。すなわち、ネタに合わせて店主がちょっとした仕事をし、客は一切醤油皿を使うことなく、迷わず美味しく食べるだけ。鯵は鯵の、サンマはサンマの、コハダはコハダの、一番美味しく眉目麗しい端正な姿で鮨台の上に優しく乗せられる。黒く輝く塗りの鮨台に映るネタがまた食欲をそそる。目でも美味しい鮨。ん〜っ、やっぱりこの店は旨い。そして居心地の良さも格段と上がった。

い店になったねぇ」満足しつつ、のんびり歩く帰り道、妻が上から目線で呟く。今さら何を言う。頻繁に来るべき店だと改めて主張する。「よしっ!頑張ってジムで走ってまた来よう!」満足度向上の鮨いち伍。またすぐにお邪魔します!

■「食いしん坊夫婦の御用達」 鮨いち伍の訪問記

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