夏バテを蹴っ飛ばせ!「萬来軒」
2013年 8 月17日(土)
暑い夏。食欲が落ち、睡眠不足になり、身体が怠くなる。いわゆる夏バテ。その元凶は乳酸という疲労物質が溜まってしまうこと。そんな夏バテを解消するには、ビタミンB1、B2、クエン酸などをしっかり摂って、乳酸をどんどん消費する必要がある。ビタミンB1、B2を多く含むのは、豚肉、レバー、豆腐などの食材。クエン酸は酢。そして食欲を増進させるには、刺激のある香辛料。すなわち、(豚肉・豆腐)×(酢)×(香辛料)=夏バテ解消には辛旨の四川料理だ!ということで、スカッシュ仲間と共にご近所の名店「萬来軒」に向かった。
四川の豚肉料理と言えば「雲白肉(ウンパイロー)」。薄く切った豚バラ肉が美しく盛付けられ、お酢とたっぷりの辣油を使った真っ赤なソース、薄切りのキューリの緑の色合いが食欲をそそる。「うわっ!美味しい♡」「ビールが進んじゃうね♬」スカッシュ仲間たちが唸る。続いてこの店の名物「四川水餃子」。赤い辣油と芝麻醤のほの甘く辛いソースが絶品。大きめの雲呑のようなシワシワの餃子に良く絡み、実に美味い。30年来通っているこの店で外せない一品だ。
焼餃子も忘れてはいけない一皿。四川料理屋で焼餃子とは邪道。けれど、薄めの皮がカリカリと香ばしく、餡は香り高くジューシー。これが実に旨いのだ。ビールはもちろん、常温で飲む瓶出し紹興酒ともぴったり。ところで、その紹興酒だ。同行のメンバーの1人、酒豪の小顔美女が絶妙な注ぎ方を披露。媚びるでもなく、強制するでもなく、ちょっと首を傾げ、アイコンタクトと共に銚子を差し出されると、つい猪口を出してしまう。そして、ぐびり。気が付けば自分の猪口にもさりげなく注ぎ、顔色も変えずにぐびり。そうか、自分で飲みたいからこその酌上手かと納得。
そして本命、大皿にたっぷり盛られた四川麻婆豆腐が登場。思わず歓声が上がり、メンバー全員が写真を撮りまくる。豆腐に豚挽肉、四川山椒、辣油と揃えば夏バテ打破のための必殺の一皿。熱々のひと匙を白いご飯の上に乗せて、ぱくり。はふはふ。ふわぁ〜っと山椒と辣油の香りが鼻孔を抜け、香辛料たちの痺れる刺激と豆腐の熱さが舌を攻め、美味さがじんわりと口中に広がる。一気に五感を攻め込まれた身体にぼっと火が点く。頭の汗腺ひとつひとつから汗が湧き出すのが分かる。堤防が決壊し、汗が滴る。潔く気持の良い夏の汗だ!
「辛くなかったですかぁ」満席だった店も落ち着き、調理担当のオジちゃんが顔を出す。「辛くて美味しかったです♬」と皆が声を揃える。この店の麻婆豆腐は山椒によって辛さが微妙に違う。日中関係が最悪だった頃、中国の通関に時間がかかり、中国山椒をアメリカ経由で送ってもらったこともあったという。小さな街の小さな中華料理屋。失礼ながらそこまで拘っているとは思えない店構え。常連さんだけで充分に廻っている羨ましい店。「2人で食べて行けるぐらいで良いのよ」接客担当のオバちゃんが呟く。そんな店。「いつも通り美味しかったねぇ」「お安いですよね」たっぷり食べて、ワンコ蕎麦のように次々に注がれる紹興酒付きで、1人3,000円。美味しく辛い四川料理で夏バテ解消。暑い夏など蹴っ飛ばせ!
「そうか、紹興酒に蹴っ飛ばされたのか。それで椅子から落っこちたんだね」Bar808での2次会。調子に乗ってワインを飲んで、大きな音で目が醒めて、気が付いたら床に座り込んでいた。夏バテ防止に水分補給は必要だけれど、アルコールは逆効果。ご用心、ご用心!←自分に。