蔵の街を訪ねて「小江戸とちぎ」

TobuYoshokuれ?池袋から乗るんじゃないんだ」地図を読める女であるお気楽妻にしてこの発言。東武線で栃木に向かうのに浅草まで行くのが不思議らしい。池袋から出ているのは東武東上線、浅草からは東武伊勢佐木線、その先が日光線と説明しても、「ふぅ〜ん」と興味は示さない。妻には馴染みのない路線。お目当ては人気の東武特急スペーシア。予約なしでも大丈夫だろうと思ったのが甘かった。乗車予定の10分程前にチケットを買おうとすると席が離れるとのこと。まぁ、仕方ないかと購入。「おぉ〜っ!小田急のロマンスカーみたいな感じだね」と言いつつ、乗車するとすぐに隣に座っていた男性客に声を掛け、席を替わってもらう交渉を成立させた妻。天晴れ。男性客にお礼を言って並んで座る。さっそくビールとコーヒーで乾杯。ぐぐっと旅の気分が高まる。

KuraKoban昼頃に栃木市に到着。蔵の街、小江戸と称される、かつて北関東有数の商都だった街。タクシーで街の中心部に向かう。メインストリートには古い街並が残り、良い雰囲気。けれど、街を歩く人はいない。銀行だった建物を改築した洋食屋「Alwaysカマヤ」でランチ。2階分吹抜けの開放的な空間でハヤシライスをいただく。本格的に旨し。妻のオーダーしたランチセットのオードブルを肴に白ワインをぐびり。ふぅ〜っ。のんびりとした休日の午後、旅レポをしてしまいそうな雰囲気。と、テーブルの横には芸能人の写真や色紙。既にプロがきちんと旅レポしている模様。「この店は賑わってるのに、街に人はいないね」そうなのだ。駅の観光案内所でもらったガイドMAPもきちんとしているし、見所もたくさんありそうなのに、肝心の観光客がいないのだ。

Kura2Kura3を出て、蔵の街を散策。日光に向かう例幣使(れいへいし:家康の霊柩がある日光東照宮への勅使)街道沿いに、古い蔵や建物が現存する街並が続く。保存されているだけではなく、現役の住まいや店として使われているのが凄い。交差点にある交番も、蔵づくりの建物を模して建てられている。とちぎ蔵の街美術館、とちぎ山車会館などの観光拠点もある。広く取られた歩道は歩き易く、散策ルートに設置された案内板なども整備されている。なのに、街を歩く人は疎ら。点在する観光スポットに行くと他の観光客の何人かと出会う、という程度。観光客向けであろう店にも客は少ない。地元客と観光客の割合もバランス良く、ほぼ満席だった「Alwaysカマヤ」とは対照的。

Kura4Kura5画のセットのような、郷愁ある街並。魅力あるコンテンツではある。けれど、リピーターが多くいるとは思えない。肥料店の看板のままで営業をしている喫茶店はともかく、荒物店は看板通りの商売。和箒や竹笊は、いったい誰が買うのだろうと心配になる。定番のB級グルメでの街興しの手法も、ジャガイモ入り焼そばで実践済み。けれど店に並ぶ人はいない。とても頑張っているのに、観光客は来ない。どの地方都市でも共通の悩みがこの街にもある。中心部の繁華街だった商店街は、何軒かの老舗らしき店舗は頑張っているものの、多くの店が閉じている。コンパクトシティ、マチナカ居住などの僅かな成功事例は列挙できるけれど、全ての街に上手く当てはめるのは難しい。

っ!箒持ってる人がいる。買う人がいたよ」お土産として買ったのか、地元の人なのかは定かではないけれど、真新しい和箒を抱え、なんだか嬉しそうに歩く家族連れを見つけた妻。そう言う妻も嬉しそう。失ってしまった地方都市の賑わいは、そう簡単には戻って来ない。構造的で複合的な課題が、多くの地方都市に山積する。何度も足を運んでもらえる街の魅力作り、地元の人にも利用してもらえる店作り、継続できるモデルが必要なのだ。頑張っていることが伝わって来る街だけに、踏ん張って欲しい。ファイト!栃木!

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