旬のムールをフレンチで♬「ビストロ トロワキャール」

BeerGelee辺の街で育った子供の頃、砂浜の海水浴場ではなく、岩場で潜って遊んでばかりいた。獲れるのはサザエ、たまにアワビ(子供には難しかった)、岩牡蠣、そしてインゲェ(イガイ)と呼んでいた黒い貝。早い話が密漁。子供たちが獲って食べる分くらいは大目に見てもらっていた、長閑で水産資源も豊かだった時代。イガイを茹でたり焼いたりの素朴な食べ方しかしていなかった田舎で、その貝はフランス料理などでも使われるムール貝なのだと東京に住む従姉が教えてくれた。ふぅ〜ん、と聞き流して十数年後、その味を知り、驚き、思わず頷いた。その後、メニューにあれば必ず注文する大好物となった。

Tomatoる週末の夜、あるシェフがfacebookにアップしたムール貝の画像にまんまと釣られ、急ぎ仕事を終え店に向かった。とは言え、まずはビール。喉越し爽やかな白ビール、ヒューガルデンをぐびり。ふぅ〜。夏のヴァカンス直前の残務を処理する慌ただしい日々にひと息付く。目の前に出てきたアミューズは、肉自慢のビストロとしては珍しく、プティトマトのジュレ。皮と実の境目が分らない程柔らかで繊細で、甘さは野菜ではなく、もうこれは殆どフルーツ。適度に酸味もあり、濃厚。実に旨い。入荷の姿を見せてもらうと、一つ一つ丁寧に包装され、まさしく千疋屋に売っていそうな高級果物。ジュ・ド・べべ(Joue de Bebe:赤ちゃんのほっぺ)という品種だと言う。日本の農業の向かう先はこんな品種を育てることだよなと、独り言つ。

VinUsualつもの感じで良いですか?」とシェフの聡ちゃんが尋ねてくれる頃、残業を途中で打ち切り、パソコンを抱えた妻が遅れてやって来た。まさかリゾートまでパソコンを持ち込まないよな?という疑惑を顔には出さずに乾杯。良いタイミングでいつもの感じのオードブル盛合せが供される。フロマージュドテット、リエット、サーモン…。白ワインを飲みながら、一品一品を丁寧に味わう。お気楽夫婦にとってすっかり定着したこの一皿は、メインと言っても良い一皿。小食の2人は、この豊かで饒舌な皿だけで充分満足できる。が、今日はムール貝、それにこれも旬の鮎のコンフィも!と意気込む。

AyuMouleずは鮎のコンフィ。頭も骨も気にせず全て食べられる中型。ほろほろと崩れる繊細な身と共に、鮎の香り、肚の苦みを一口に頬張る。旨ぁ〜いっ。そこに待望のムール・マリニエール登場。海産物として初めてAOC(原産地統制呼称)を獲得したモンサンミッシェル産のムール貝を、ニンニク、オリーブオイル、白ワインなどで味付けた漁師料理が起源の素朴な一皿。山盛りのフリット(フライドポテト)と一緒に食べるのがお約束。モンサンミッシェルのムール貝は、小振りなのに火を入れても縮まず、味は濃厚。ひとつ目を食べ、空になったムール貝の殻を使って2個目以降をパクつく。会話を止める旨さ。

味しかったなぁ♬やっぱり、行きたい!と思った時にさっと行ける店が良いなぁ」と妻。松陰神社前駅から徒歩30秒、残業帰りに思い立っても伺える。人気の店だけれど、毎日満席という訳ではないから、カウンタ席なら2人でサクッと食事ができる。小さな店なのに、きちんと季節の味が楽しめる。相変わらず良い店だ。ということで、夏はムール貝の旬。まだの方は、ぜひ!

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