今日、シブヤで20時♬「神泉 遠藤利三郎商店」

ShibuyaShibuyaNow40年近く前、その場所にあった映画館「東急パンテオン」で『ジョーズ』を観た。巨大なスクリーンと映像の迫力に圧倒された。階上にあった「東急名画座」には、アメリカンニューシネマの名作を観るために通った。ロードショーは900円から1,100円に上がり、名画座は300円だった時代。その後、屋上のプラネタリウムの人気も翳り、2003年に閉館。その場所の地下には地下鉄副都心線が開通し、地上にはかつての建物の数倍の高さの「渋谷ヒカリエ」が建てられた。その建物は東口のランドマークだった「東急文化会館」。そして、渋谷駅を挟んで西口にあった「東急プラザ」がこの3月に閉館。建て替え中の東急東横店なども含め、渋谷駅周辺が大きく変わろうとしている。

BeerSpoon藤に行こうか。客先のヒカリエで仕事を終え、渋谷のオフィスで残業中だった妻を誘うと「良いねぇ」とすかさず返信があった。さっそく電話をすると「IGAさん、こんばんは」と馴染みのスタッフの声。どうやら私のケータイの番号を登録していただいた模様。予約もOKとのこと。予約できた。20時に!と妻にメール。妻も私も(偶然ながら)学生時代を渋谷のキャンパスで過ごした。ワカモノだった頃から慣れ親しんだ渋谷。けれども、ワカモノではなくなった2人にフィットする店は少なくなってしまった。「ヴィロン」「麗郷」「天一」など、渋谷で馴染みの店も数える程。2013年、そこに現れたのが神泉のワインバー「遠藤利三郎商店」。2人にとっては救世主のような店。

VinblancFritんばんは、IGAさん。今日のお席は珍しく2階なんです」と、通されたのは、カウンタ席を見下ろし、壁一面のワインラックを眺められるテーブル席。この景色に向かって飲むのも悪くない。独り生ビールをぐびり。ふぅ〜。身体と気持が緩やかに解けて行く。ワンスプーンのアミューズをぱくり。この店はワインバーと言いながら、料理がきちんと美味しく、眉目麗しい。生ハム、リエットなどのオードブル盛合せをいただきながら、妻を待つ。スタッフが選んでくれた1杯目のグラスワインの白を楽しんでいるところに妻が登場。メニューを見るや「山菜のフリットを食べよう!」と、春になる度に罹る春野菜シンドロームの症状。菜の花が添えられ、塩でいただく一皿は絶品。

CaesarSaladResotto、ちょっと待ってください。何かが違う」シーザーサラダを運んで来たスタッフが引き返し、すぐに笑いながら戻ってきた。「失礼しました。ベーコン乗せるのを忘れてました」うん、見た目の美味しさが何倍も違う。シャキシャキのローメインレタスも、カリカリのクルトンも、微笑むような柔らかさの半熟卵も、厚く削られ存在感抜群のパルミジャーノも、ひとつひとつが美味しさを主張し、厚切りのベーコンの塩味と脂がそれらの食材を引立てる。「最後に春野菜のリゾットまで行っちゃおうか」珍しく炭水化物を摂ろうとする妻。確かにこの店のfacebookで紹介されていたリゾットの画像は魅力的だったけれど、自らオーダーするとは恐るべし春野菜シンドローム。

い店だよね、ホントに」スタッフに見送られて店を出ると、妻が嬉しそうに呟いた。渋谷で芝居や映画を観た後に、高揚した気持を保ちながら美味しく食事が出来て、楽しく飲める店が欲しかった。仕事帰りに気軽に立ち寄り、独りでふぅ〜っと飲んでいても淋しくない店が必要だった。この店の佇まいと、ワインと、料理と、スタッフの接客は、その全てを満たしてくれる。こうして、渋谷の街も自分たちも変化していくけれど、オトナになって出会った馴染みのシブヤ(神泉だけど)も良い感じ。これだから人生悪くない♬

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