この店で味わうために♡「龍景軒(LUNG KING HEEN)」

LUNCHLUNCH2景軒、今回はランチと夜の2回予約したよ」航空券を予約した直後、妻が宣言した。初訪問の2009年以来、これまで10度の訪問。1度の香港滞在で3回も食べに行ったこともある。ミシュランの3つ星の定義は、その店で食べることを目的に旅をする価値がある、というものだから、この『ミシュラン香港』の3つ星を長年獲得し続けている店を訪れるお気楽夫婦の行動は真っ当と言っても良い。11度目の訪問はランチ。それもマカオのショートトリップから帰る週末に設定する辺りが素晴らしい。我が妻ながらやるなぁ。と言うのも、週末は飲茶メニューが豊富。小食ながら食いしん坊の2人。龍景軒の飲茶メニューのポーションは小振りで、そんな2人でもいろいろ楽しめるのだ。

LUNCH3ABALONE粉(チョンファン)は何にしようか」飲茶と言えば、腸粉。2人のお約束。日本ではなかなか食べられないが、香港では定番中の定番。「叉焼と茸の腸粉」をチョイス。季節の茸オススメメニューというプロモーションを行っており、ではと「豚と蝦と松茸の蒸し餃子」を選ぶ。どちらも香り高く、頬張れば笑顔溢れる一品。「白魚とエビの揚げ春巻き」に続いて、この店自慢の逸品「まるごと鮑と若鶏のパイ包み焼き」が登場。この店のランチで、この一皿は欠かせない。小振りのパフにカプッと齧りつく。噛む程にじんわりと鮑の旨みが口中に広がる。このひと口を味わうために、この店のランチを予約したと言っても過言ではない。絶妙に残してあったビールをぐびり。幸福である。

DINNERDUCK夜2回、この店に来なければいけない理由がある。ひとつは景色。店の名前の通り、龍景:素晴らしい眺望を日中、夜景とそれぞれを楽しむため。そしてもちろん、多くの料理を味わうため。ディナーでは飲茶メニューが限られ、ランチでは食べられないメニューがディナーにはあるからだ。最初に料理長お奨めの前菜盛り合わせをいただく。少量で何種類も味わいたい2人にはぴったり。パリパリ飴色の蜂蜜叉焼。この店は焼物も絶品。そしてメニューにないホタテの揚げ物。顔なじみの女性スタッフが妻と何やら話をし、前菜盛り合わせの内容を変更してくれたらしい。どちらも味わい深い一品。香港最後の夜だからと、奮発して頼んだ「KRUG」が美味しさを倍加させる。

SHRIMPSHRIMP SHELL蝦(茹でエビ)だねぇ、やっぱり」この店で必ずオーダーするのは、中型よりやや小振りの新鮮なエビを茹で、唐辛子醤油ダレに付けて食べるシンプルな料理。大きさの揃った美しい海老たちが艶かしく並び、食べてぇ♡と横たわる。手づかみで頭を剥き、ちゅうちゅうと味噌を吸い、殻を剥いてタレをさっと付けてワシワシと食べる。続いてもう一尾。ワシワシ。シンプルだからこそ、食材の勝負。火の入れ加減の戦い。この店の蝦は美味しいだけではなく、食べ終わりふぅと満足の嘆息をついた頃、フィンガーボウルと共におしぼりが出てくるタイミングが素晴らしい。オーダーを取る、料理を運ぶ、取り分ける、チェックをするなど、分業制を続けている老舗と違い、誰もが高いレベルのサービスを最初から最後まで提供してくれる。この店の最大の魅力だ。

See you soon!」顔なじみのスタッフに見送られて、店を後にする。12回の来訪の内、ほとんど毎回顔を見せてくれたメガネの男性スタッフ。この店のスタッフも変わらない。安定したサービスレベルを保つには大切なことだろう。毎回味とサービスに満足し、心地よく帰れる店というのは、香港では貴重だ。大概は美味しく味わうためにサービスの粗さは我慢する、という店が大半だ。「またすぐ来るよ!」鼻息の荒い妻の何度目かの宣言は、なんだか現実味を帯びてきた。

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SINCE 1.May 2005