Yuming World ♬「宇宙図書館」
2017年 10 月07日(土)
♬雨音に気づいてぇ〜遅く起きた朝はぁ〜♫その曲は、深夜のラジオから流れて来た。FM東京(当時)の人気番組「小室等の音楽夜話」で、小室等が「いやぁ、スゴい人が出て来たね」と紹介したのが、荒井由実の「12月の雨」と言う曲だった。決して歌が巧い訳でもなく、声が美しい訳でもなく、けれどやたらと耳に残り、新鮮だった。10代の私に心地良く響いた。すぐにエアチェック(笑)して、「ひこうき雲」「やさしさに包まれたなら」など、初期の頃の名曲を聴いた。「海を見ていた午後」に登場する“山手のドルフィン”を見に行ったりした。その後、「あの日にかえりたい」が初めてヒットチャートの1位になり、その後も「卒業写真」「中央フリーウェイ」などがヒットし、誰もが知るアーティストになった。少し遠い存在になった。
80年代に入り、秋にアルバムを発売し、その後全国ツアーを行うという“ユーミン”のスタイルが定着した。本人も語っているように、「レコード(CD)で儲けた分をコンサートでファンに返す」というモデル。すなわち、豪華で派手な演出のステージは、とてもチケットの販売価格だけでは経済的に成立しない。大手企業の冠が付いたコンサートツアーは、CDのプロモーションという位置付けだったり、CMタイアップが前提だったりというビジネスモデルだった。それでも採算が取れる興行ではなかったと思う。だからこそ公演チケットは“プラチナ”だった。CDも売れた。その間、何度かコンサート会場に足を運んだし、アルバムも買った。けれども、松任谷由実になったユーミンよりは、荒井由実の方が好きだったなどと嘯いてもいた。
2016年冬、久しぶりに「宇宙図書館」というタイトルが付いたユーミンの新譜を手に取った。5月に東京国際フォーラムで行われた公演にも行った。アルバムジャケットと同じデザインの歪んだ書架がある図書館がステージ上に再現されていた。その完成度にワクワク感が高まる。コンサートが始まる。ニューアルバムからの曲に、懐かしい“荒井由実”時代の曲が織り込まれる。過去と現在が交錯する。MCで「図書館は宇宙の入口だ」と語り、図書館発、宇宙行きの列車に誘う。ステージ上では、リアルなユーミンたちアーティストと、薄い膜のような、宇宙空間の帷のようなスクリーンに投影される映像のコラボレーションが展開する。その映像のクオリティに驚いた。アンコールの“名曲”メドレーに打ちのめされる。心震える。ユーミン、凄いっ♫
全国ツアー最終80公演目の前夜、79ステージ目の会場にお気楽夫婦はいた。「もう一回観に行くよ!」という妻の強い要望だった。さすがに同じアーティストの、同じツアーに2度行ったのは初めて。会場も同じ東京国際フォーラム。それでもワクワク感が湧いてくる。2回目ということもあり、余裕を持って楽しめると思ったのもつかの間、あっという間にYuming World に引き込まれる。参りました。デビューから45年。最新曲からデビュー当時の作品まで歌い上げるステージは、時間の流れを感じさせない空間だった。買い求めたパンフレットにはこうあった。「時間は人の脳の中にしか存在しない」…その日のアンコール最後の曲は「青いエアメール」。♬けれどあなたがずっと好きだわ。時の流れに負けないわ♫確かにそんなステージだった。