The Beatles ♡ LOVE ?「ウィズ・ザ・ビートルズ」松村雄策

WithTheBeatlesPaul Mccartneyール・マッカートニーが、現在5度目の来日ソロツアーの最中だ。昨年、全公演が中止になったこともあり、マスコミでも大きく取り上げられ、街角でインタビューを受ける同輩たちが「ビートルズは私の青春でした!」などと答えている。そんな映像にいつも違和感を覚え、何かが引っ掛っていた。そんな時、松村雄策さんの『ウィズ・ザ・ビートルズ』を読み、すっきりとした。中にはこんな記述がある。「新橋のSLの前の酔っ払いに訊くと、みんなビートルズは青春だったと言っていた。はっきり言おう、それは嘘だ。ビートルズは僕達の青春であって、お前達の青春ではない。(中略)だいたい、そんなにファンがたくさんいたら、何枚もミリオンセラーがあったはずだ。」

1962-19661967-1970The Beatlesの活動は、1962年のデビューから、ラストアルバムが発売された1970年までの8年間。その間の日本でのビートルズ人気を松村さんは冷静に分析している。1960年代の日本の人口は1億人弱、そしてビートルズのLP販売枚数は各15〜20万枚。初期のシングルヒット「ロックンロールミュージック」が約85万枚。伝説の武道館来日公演も、5日間で25,000人だ。誰に訊いても「青春でした!」と答えることができる程の数字ではない。その松村さんは66年の武道館公演を中3で観に行った、おそらく最年少の観客だっただろうと書く。その松村さんが現在65歳だから、40代や50代の(私も含めた)ワカゾー(笑)の青春がビートルズだったはずはない。はぁ〜スッキリ。

RubberSoulRevolver称「赤盤」「青盤」と呼ばれるベストアルバム「The Beatles/1962-1966」と「The Beatles/1967-1970」が発売されたのは1973年。15歳、高校1年生の春だった。この2枚組計4枚のアルバムを毎日のように聴いた。今も赤盤1曲目の「LOVE ME DO」から、2枚目最後の「YELLOW SUBMARINE」まで、アルバムの曲順に口ずさめるほど。そして同じ頃、ポール率いるウイングスの「マイラブ」「バンド・オン・ザ・ラン」、ジョン・レノンの「マインド・ゲームズ」がヒット。リアルタイムでポールやジョンをラジオで聴くことができた。名画座で『HELP!』や『LET IT BE』を何度も観た。授業中に角川文庫の「ビートルズ詩集」を読み耽った。遅れてやって来たビートルズマニア。

AbbeyRoadLive at the BBC生時代に、ずっとビートルズ一辺倒だった訳ではない。付き合った女の子の影響で「LED ZEPPELIN」を聴き、「YES」「ELP」「King Krimson」「Camel」などのプログレにも傾倒し、「PANTA&HAL」のライブに行って「頭脳警察」まで遡った。毎年、大晦日の夜には「ニューイヤーズロックFES」に行くのが恒例だった。軟派な雑食系の音楽少年だった。けれども、そんなワカモノにとっても、松村雄策が記すように、ビートルズは「北極星のように今なお不動の位置で輝き続けている、ロックンロールの神様」だった。オトナになって、オリジナルアルバムを改めてCDで買い直した。ほとんどの楽曲をドレミファドン!的な頭出しで当てられる自信もある(笑)。

本武道館のポール・マッカートニー公演、SS席100,000円というチケットを買うのは、きっとそんなオトナなんだろう。決して青春時代がビートルズではなくても、ビートルズが解散した後に、過去に遡ってファンになったオトナたち。ずっとファンであり、ポールやジョンが神様であり続けたと、自分の過去を軽い嘘で上塗りをした(元)音楽少年たち。そんな同輩たちにも読んで欲しい。あぁ、僕は間違っていた!と懺悔する。松村さんのビートルズ愛の前に、ひれ伏し、思わず苦笑いを零し、爽快感も味わえる。ビートルズ世代が歳を取ると、こんなステキなジジイになれるんだ。松村雄策著『ウィズ・ザ・ビートルズ』小学館文庫。おススメ。

鮨の旨さはグローバル「鮨いち伍」

DC1Bethesdaに行きましたですね。私が育った街です。懐かしく見ていました。帰国後にお会いしてお土産話を聞きたいです。よろしくお願いします!」2012年夏、ワシントンD.C.に駐在していた大切な友人を訪ね、彼女たちが住んでいた街の交差点で撮影した写真をブログにアップしたところ、USA出身のスカッシュ仲間から(ほぼ完璧な日本語で)メールが届いた。え!そうなんだ。なんという偶然。奇遇。ではせっかくだからfacebookで繋がれるようにと2人を紹介。すると、お互いにスカッシュの試合会場で見かけたことがあったらしく、さっそくfacebookで友だちになり、翌年に休暇で故郷に帰った際に、ベセスダで一緒に食事をしたとの報告。なんだか嬉しいご縁。

KanbanAji2年後、大切な友人:マダムはDCから帰国したのも束の間、今度はミャンマーに赴任するご主人に帯同するのだという。またしばらく会えないということで、行きつけの鮨屋にお誘いする。ん?待てよ、だったらUSA出身のスカッシュ仲間もご一緒に、とお誘いしたところ、2人とも快諾。DC繋がりの4人の会になった。店の名前は「鮨いち伍」。京王線千歳烏山駅から7〜8分の距離。近くまで来たとの電話に、2人を迎えに向かう。違和感なく現れた2人だけど、あれ?そう言えば2人は、日本で会うのは初めてじゃない?「そうなんです」と声を揃える。4人でfacebookのメッセージをやり取りしているものの、全員で一緒に会うのはもちろん初めて。これまた不思議なご縁。

ChutoroHamaguriビールで乾杯。すると突き出しタコの甘辛煮が登場。ワサビを付けてパクり。絶妙な柔らかさ。旨し。イカの握りからおまかせのコースが始る。美しい飾り包丁が入り、煮切り醤油をひと刷毛。イカの白と醤油の赤のバランスが眉目麗しく、ひと口で頬張ればもちろん美味しい。端正な江戸前の鮨。満足そうに頷く2人のゲスト。うん、良かった。そんなタイミングで大将に2人を紹介し、USA出身のスカッシュ仲間は自宅で鮨を握る、日本人より日本人らしい方なのだと伝えると、焦るスカッシュ仲間。「こんな鮨を食べて、自分で握るなんて言えません」と言いながらも大将の手技を真剣な眼差しで眺める。こぢんまりとした店ならでは。2人もリラックスして楽しんでいる。

KohadaTaisho本酒にしましょうか。嬉しそうに頷く呑んべな2人。望むところだ。石巻の辛口純米酒「日高見」をいただいた後に、大将おススメの「鶴齢(かくれい)」をいただく。新潟県魚沼にある青木酒造の純米吟醸。軽やかで上品な香りの柔らかな酒。ん、旨い。鯵、鰯などの青魚、マグロの漬け、大振りの煮ハマグリ、絶品の鮨ネタとの相性も良い。「美味しいね。やっぱり和食は素晴らしいなぁ」とマダムが呟く。本格的に渡航する前に、住まいの下見などのためにミャンマーを訪れ、帰って来たばかりのマダム。外国人はホテル住まいを強いられること、片側10車線の高速道路、などなど、不思議の国ミャンマーのエピソードに興味津々。「来年は遊びに行くよ」とお気楽妻が意気込む。

ダムの居住遍歴は、ワシントンD.C.だけではなく、スイスやイランなど、実に波瀾万丈。日本語バリバリのUSA出身のスカッシュ仲間も含め、その日の話題や情報はなんだかグローバル。と言うよりは、鮨も握れるベセスダ育ちの日本語が堪能なアメリカ人もいれば、日本で暮した年月と同じくらい海外で過ごしたネイティブ英語の日本人もいる、だけのこと。生まれ育った国、暮した国には関係なく、その人を形成するのは嗜好や志向。何をしてきたのか、何を目指してきたのかという先に現在があり、こうして美味しい鮨を食べている。あれ?今日は何を言いたいのか。(実は風邪を引いて思考モーロー)何はともあれ、美味しい鮨はグローバル。

物語の引力『翼をください』他、原田マハ

Paradisめて読んだ彼女の作品は『カフーをまちわびて』というデビュー作。第1回ラブストーリー大賞を受賞した、スイートな恋物語。兄(原田宗典)の作品よりも好きかな、という程度の読後感。それでも変わった(たぶんゴヤの「裸のマハ」「着衣のマハ」に由来するんだろうなと思われる)ペンネームと、情景にカラフルな色彩を感じる作風がずっと気になっていた。そして、私の中でブレイクしたのが『楽園のカンヴァス』を読んでから。夏のヴァカンス用の1冊として南の島に持参し、その物語世界に夢中になった。主人公は作者のかつての職業と同じ、キュレーター。絵画を巡るミステリーは、ダン・ブラウンの『天使と悪魔』をはじめとしたラングドンシリーズを彷彿させる疾走感。*主人公の名前はなぜかティム・ブラウン。キュレーター出身ならではの視点、トリック、エピソードが満載。やられた!一気にファンになった。

DereGirlsらの青春時代を元に描いた(のかな?)『でーれーガールズ』では、全くジャンルの異なる物語世界を楽しませてくれた。デビュー作『カフーをまちわびて』と同様に映画化されたこの作品の舞台は岡山。「でーれー」とは、岡山弁で「すごい」という意味らしい。東京出身ながら高校時代を岡山で過ごした作者。その実体験が背景にあるのだろう、リアルな(地元では有名な名門)女子高生たちの、夢や、友情や、恋が…。と、書き連ねると、陳腐なプロトタイプの物語を思い浮かべてしまうが、それでも騙されてしまう。30年も前の高校時代の主人公と、漫画家になり創立120周年の記念式典で講演をすることになった現在の主人公を繋ぐキーマンは、とても大切だった友人。そして、そのエンディングに不覚にも涙してしまう。物語の中で登場人物たちが話す岡山弁が、最後にはすっかり「でーれー」愛しくなる。

Mariaぐだら屋のマリア』というタイトルは、多くの絵画の題材にもなっている「マグダラのマリア」に由来しているのだろう。キリスト教の福音書の中で、イエスの死と復活を見届けるマグダラのマリア。その名前を冠した「まぐだら屋」という最果ての地の海を臨む崖上に建つ食堂が舞台。その店の主人がマリアと呼ばれる訳ありの(元夫は与羽:ヨハネ)美しい女性。そして絶望を抱えたワカモノ(紫紋:シモン)がその地に辿り着き、癒され、再生する。出来過ぎである。キリスト教の福音書の物語を思い浮かばせる舞台設定や、登場人物たちの設定に思わず笑ってしまう。それでも、またもや騙されてしまう。物語世界に引きずり込まれ、登場人物たちに感情移入するばかりか、食堂に漂う湯気や、料理の香りや、味を感じてしまう。食堂で出される料理を、文字で味わい、匂いを嗅ぎ、美味しさを感じてしまう。旨い。上手い。

Freedom in the skyをください』はダメ押しだった。第2次世界大戦直前のアメリカと日本が舞台。実在した伝説の女性パイロット、アメリア・イアハートがモデルと思われるエイミー・イーグルウィングが主人公のひとり。世界で初めて4大陸と3大洋を横断した、史実ながらなぜか多くの記録が封印されたニッポン号に搭乗したカメラマン、山田順平がもうひとりの主人公。片や女性として初めての大西洋単独横断飛行など、次々と新たな記録を樹立するヒロイン。片や日本の新聞社に勤務し、そのカメラと飛行機に対する情熱からニッポン号に搭乗することになった順平。交わることのないはずの2人が、なぜかニッポン号の機上で出会うことになる。史実が元になっているとは知らずに読み始め、そのドラマティックな設定と、当時の航空機の飛行能力や操縦技術、無線などの運行体制などのリアルな描写に、胸を躍らせた。実に爽快な読後感。

ぅ〜ん。じゃあ読んでみようかな」妻が半ば興味なさそうに呟く。彼女の読むジャンルは、グレッグ・アイルズ、J.ケラーマン、パトリシア・コーンウェルなど、主に翻訳モノ。重なる作家も多いが、何人かの作家の作品は、お互いに読んでいないものも多い。人によって物語から受ける引力の強さが違う。出会いと惹かれる要素が違う。何かきっかけがあれば読み始めることもあるけれど、嗜好は無理に矯正できない。とは言え、この作品は読むべし。「ん」妻が短く答えた。

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