調布市民の秘密「野川桜ライトアップ」

NewsSakura5気楽夫婦が住む世田谷区の北西部は、調布市に隣接している。最寄り駅の一駅となりは調布市。毎週通っている世田谷のホームコート以外に、月に数回通うスカッシュコートがあるのも調布のスポーツクラブ。そこで知り合った仲間から、ある情報が入った。毎年桜が満開の頃、一夜限りの大イベントがあるという。日程は直前に決まり、密かに発表されるだけなのに、あっという間に調布市民のほとんどが知ることになるらしい。2015年の日程発表は、開催日のなんと3日前。調布市民ではない2人も、友人たちのfacebookでの書込みで情報を知った。「行けるかなぁ」「行きたい」「今年は行こうかな」という調布市民のやり取りに、「行ってみたい!」と参加表明。すると「是非来てください!」と複数の市民からお誘いをいただいた。うわ〜ぃ。

Sakura4Sakura6の調布市民の秘密のイベントとは、調布市を流れる多摩川の支流、野川沿いに1km近く続く桜並木のライトアップだ。実は調布市は映画の街。今でも日活、角川大映などの撮影所やスタジオがあり、美術、映像などの関連企業が集まっている。その中のひとつ、アークシステムという照明機器の会社が、野川沿いに建っていた社屋前の桜の木をライトアップしたことが評判になり、会社移転後もその規模を拡大しながら毎年継続し、今年で12回目の開催になるという。イベント当日、最寄り駅の近くで待ち合わせ。普段は静かな小さな駅も大勢の人。会場へと向かう人の流れに沿って夜道を歩く。駅から10分程歩くと、橋の上に大勢の人。どうやらスタート地点らしい。

Sakura3Sakuraわぁ〜っ!凄ぉいっ!」感情を余り表に出さない妻が驚きの声を上げる。闇夜に浮かぶ夢のようなサクラ色の景色。橋上から眺めると、遥か上流まで延々と両岸に桜並木が続き、岸辺のサクラと、川面に映るサクラと、そして漆黒の背景が幻想的な絵となっている。さすがプロの照明の技。実に見事だ。これは期待以上に凄いねと調布市民に伝えると、「凄いでしょう♬」と嬉しそうで誇らしげな笑顔が返って来る。確かにこれは市民自慢のイベントだ。橋から上流に一方通行でサクラ色の下を歩く。全市民が観に来ているのではないかという人混み。桜の樹によって表情が変わる。月が浮かぶ空とのコントラストを楽しみ、夢の中を歩いているような、浮き足立つ気分でそぞろ歩く。

SashimiTomochan初はグー…」夢の中から現実に戻る。花見客で混雑する地元の人気店「大漁旗」でオーダーした刺身盛りを巡って、ちょっとしたゲームを始める子供のようなオトナたち。6人で3人前の刺身盛りだから、全員が全種類は食べられない。だったら好きな魚を一斉に指差して、ダブったらジャンケンで勝者が食べるというルール。分厚く切られた脂の乗ったマグロに指名が集中。涙をのむ酒好き奥さま。競合のなかった数の子をぽりぽりと齧りながらジャンケンの行方を笑って眺める。お手頃な価格で新鮮でボリュームたっぷりの料理が(残念ながら満席で売切れが多かったが)食べられる、人気の理由も納得の穴場の店だ。なんだか楽しいぞ、調布。

日はIGAさんたちと飲めて良かった♬」コートサイドでお見かけするものの、一緒に飲むのは初めてというスカッシュ仲間から嬉しいコメント。「来年も観に来てまた飲みましょう!」良いですね、ぜひ!と返す。なんだか調布市民の秘密を共有し、仲間に入れてもらった気分。一夜限りの幻夢のようなイベント。参加できるのは(急なスケジュール調整が可能な)地元民だけ。調布市民のお墨付きを頂き、参加資格(?)も手に入れた。来春のサクラの頃にまた一緒に訪ねよう。

料理はレジャー♬「6ヶ月点検ホームパーティ」

PistachioSouchanIGAさん、今度パテを作る時に使ってみてください」馴染みのビストロで、いつものように絶品料理をいただき、帰り際にその店のシェフ聡ちゃんから手渡されたのは鮮やかなグリーンのピスタチオ。おぉ〜っ!これが秘伝のスーパーグリーンというイラン産の逸品か。食材を捏ねる時間、焼きの温度、熟成させる期間、これまで何度もアドバイスをいただき、ビストロ808のシェフ(私ですが)の作るパテドカンパーニュは、徐々にレベルアップ。「ヴァージョンアップしたパテを食べに来ない?」妻が無責任にハードルを上げ、その真偽の程を確かめてもらうため、友人たちをお誘いした。6ヶ月点検という名目を付け、リノベーションを手掛けてくれた建築家の友人も参戦。

CuisineRoastBeef100度で1時間。これが師匠から伝授された焼き時間。合挽肉、チキンのレバーペースト、タマネギやセロリのみじん切りなどと一緒に、スーパーグリーンを捏ねる。ストウブのミニオーバルにベーコンを敷き詰め、焼き上げる。焼いてから1週間ぐらいが食べ頃という師匠のアドバイスだけど、さすがに素人料理ということで3日前に作って冷蔵庫に寝かせる。ホームパーティ当日のランチに、スーシェフ(妻)が焼き上げたローストビーフと一緒に試食会。うん、ピスタチオの鮮やかなグリーンが映えて美味しそうな切り口。味もずいぶんと熟れ、オリジナルの味になってきた。ローストビーフもやや火が入り過ぎたが、ジューシーさを失わずきちんと美味しい。これで準備万端。

KitchenStaubわぁ〜っ、パテ美味しいよ♬」「キャロットラペ、いくらでも食べられそう♡」友人たちにも好評。キャロットラペも師匠の聡ちゃんに教えてもらい、(さすがプロのレシピ通りにはいかないから)独自に工夫して作っているオリジナルな味。だからこそ嬉しい友人たちのリアクション。お気楽夫婦は料理が苦手でも嫌いな訳でもなく、“外食の方が”好きなだけ。けれどもここしばらくは料理をする頻度がやや(お恥ずかしい回数ながら)上がった。リノベーションで使い勝手の良いキッチンになったことも、ストウブを買い揃えたことも料理の頻度を上げた理由のひとつ。料理をすることが楽しいスペース、使って楽しい調理器具などがシェフとスーシェフのモチベーションをアップ。

SinglesRoastbeefSaladeースの作り方教えて」と聞かれると、答えに詰まる。料理によって直感で作る。市販のドレッシングをベースにアレンジしたり、他のモノで代用したり。例えば、キャロットラペにオレンジジュースを煮込んで加えるべきところは、オレンジマーマレードを代打に送る。特別な食材や調味料はめったに使わない。使い残しが確実に出てしまうから。お気楽夫婦にとって、料理はレジャー。決して(今のところ)日常ではない。だからこそ、メニューを考え、料理を出す順番、使う鍋や食器を考え、ムダにならないように工夫して食材を買い出し、食材の下拵えをする、ことを全て“楽しむ”。そして、気の置けない友人たちに集まってもらえば完璧だ。

日も楽しかったぁ。ありがとう」「居心地良くってまた遅くまでお邪魔しました。ビストロ808美味しかったです」「未だかつてないリラックスした6ヶ月点検でした」深夜、帰宅した友人たちからメッセージが届いた。料理がレジャーであるならば、その楽しさはご一緒する友人たちがいればこそ。こちらこそありがとう。そして翌日、残ったローストビーフでサラダを作り、まかない料理として美味しく頂く。これも主催者メリット。ん?次は1年点検で?はい。では、それまでに日々更に外食生活で鍛錬し、研鑽と経験を積み、お待ちしてます♬

今日、シブヤで20時♬「神泉 遠藤利三郎商店」

ShibuyaShibuyaNow40年近く前、その場所にあった映画館「東急パンテオン」で『ジョーズ』を観た。巨大なスクリーンと映像の迫力に圧倒された。階上にあった「東急名画座」には、アメリカンニューシネマの名作を観るために通った。ロードショーは900円から1,100円に上がり、名画座は300円だった時代。その後、屋上のプラネタリウムの人気も翳り、2003年に閉館。その場所の地下には地下鉄副都心線が開通し、地上にはかつての建物の数倍の高さの「渋谷ヒカリエ」が建てられた。その建物は東口のランドマークだった「東急文化会館」。そして、渋谷駅を挟んで西口にあった「東急プラザ」がこの3月に閉館。建て替え中の東急東横店なども含め、渋谷駅周辺が大きく変わろうとしている。

BeerSpoon藤に行こうか。客先のヒカリエで仕事を終え、渋谷のオフィスで残業中だった妻を誘うと「良いねぇ」とすかさず返信があった。さっそく電話をすると「IGAさん、こんばんは」と馴染みのスタッフの声。どうやら私のケータイの番号を登録していただいた模様。予約もOKとのこと。予約できた。20時に!と妻にメール。妻も私も(偶然ながら)学生時代を渋谷のキャンパスで過ごした。ワカモノだった頃から慣れ親しんだ渋谷。けれども、ワカモノではなくなった2人にフィットする店は少なくなってしまった。「ヴィロン」「麗郷」「天一」など、渋谷で馴染みの店も数える程。2013年、そこに現れたのが神泉のワインバー「遠藤利三郎商店」。2人にとっては救世主のような店。

VinblancFritんばんは、IGAさん。今日のお席は珍しく2階なんです」と、通されたのは、カウンタ席を見下ろし、壁一面のワインラックを眺められるテーブル席。この景色に向かって飲むのも悪くない。独り生ビールをぐびり。ふぅ〜。身体と気持が緩やかに解けて行く。ワンスプーンのアミューズをぱくり。この店はワインバーと言いながら、料理がきちんと美味しく、眉目麗しい。生ハム、リエットなどのオードブル盛合せをいただきながら、妻を待つ。スタッフが選んでくれた1杯目のグラスワインの白を楽しんでいるところに妻が登場。メニューを見るや「山菜のフリットを食べよう!」と、春になる度に罹る春野菜シンドロームの症状。菜の花が添えられ、塩でいただく一皿は絶品。

CaesarSaladResotto、ちょっと待ってください。何かが違う」シーザーサラダを運んで来たスタッフが引き返し、すぐに笑いながら戻ってきた。「失礼しました。ベーコン乗せるのを忘れてました」うん、見た目の美味しさが何倍も違う。シャキシャキのローメインレタスも、カリカリのクルトンも、微笑むような柔らかさの半熟卵も、厚く削られ存在感抜群のパルミジャーノも、ひとつひとつが美味しさを主張し、厚切りのベーコンの塩味と脂がそれらの食材を引立てる。「最後に春野菜のリゾットまで行っちゃおうか」珍しく炭水化物を摂ろうとする妻。確かにこの店のfacebookで紹介されていたリゾットの画像は魅力的だったけれど、自らオーダーするとは恐るべし春野菜シンドローム。

い店だよね、ホントに」スタッフに見送られて店を出ると、妻が嬉しそうに呟いた。渋谷で芝居や映画を観た後に、高揚した気持を保ちながら美味しく食事が出来て、楽しく飲める店が欲しかった。仕事帰りに気軽に立ち寄り、独りでふぅ〜っと飲んでいても淋しくない店が必要だった。この店の佇まいと、ワインと、料理と、スタッフの接客は、その全てを満たしてくれる。こうして、渋谷の街も自分たちも変化していくけれど、オトナになって出会った馴染みのシブヤ(神泉だけど)も良い感じ。これだから人生悪くない♬

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SINCE 1.May 2005