テンション上がるぅ♬「神泉 遠藤利三郎商店」

EndohVinsめて訪れた昨年6月以来、足繁く通っているお気に入りの店がある。渋谷駅から1駅の井の頭線神泉駅を出て、こぢゃれたバルやビストロが軒を連ねる通りを歩き、5分程の距離。大勢の客で賑わう飲食店が途切れたあたりに、一見して心躍る店構えの1軒が現れる。前面には店の天井まで続く大きなガラス窓。仄暗い灯りに浮かび上がる、帆船のロープや舵輪のような、製糸工場の糸車のような、不思議なオブジェ。そして店内に入ると壁一面のワイン棚。1階にある3つの小さなテーブルはワイン樽。この店の設えだけで旨いもの感知アンテナがビビッと反応する。店は「遠藤利三郎商店」という名前のワインバー。これまた好奇心をくすぐるネーミング。お気楽夫婦にどんぴしゃ。

SpoonIkeの日、一緒に訪れたのはシャンパン好きの愛猫家カップル。以前この店にご一緒する予定が、愛猫の急病で約束の日程を変更したため(人気店ということもあり)予約を取り直すことができず、まだ彼らは未訪問という曰く付き。「来たかったのよねぇ」と先に到着していた彼らは、ワイン棚を眺めながら既にテンション高めの様子。スパークリングワインをオーダーした後、まず出てきたのは(この店お約束の)スプーンタワーにセットされたアミューズ。ちょっとオシャレな演出。食器好き、調理器具好きの彼らが嵌るだろうと予想していた通り、「えぇ〜っ、これステキ。良いねぇ。テンション上がるぅ♬」と笑顔。期待通りの反応にお気楽夫婦のテンションも上がる。

SparklingIke2ーダーしたスパークリングワインは、ニュージーランドのモートン・エステートの「マンスフィールド&マルシュ」。ピノ・ノワールとシャルドネがほぼ半々の辛口ワイン。きめ細かな泡が繊細で、価格も手頃な美味しい1本。「うん、これ美味しいね」シャンパン好きの2人も笑顔の太鼓判。選んでくれたスタッフにそう伝えると「ありがとうございます。良かったです」と笑顔が返ってくる。この店のスタッフは皆ソムリエの資格を持ちながら、気取らず、語り過ぎず、明るく、店の雰囲気よりもずっと気さくでフランク。ここもお気楽夫婦がお気に入りのポイント。蘊蓄を肴に呑むワインは嫌い。好みを伝えてフレンドリーにおススメしてもらえる店がフィットする。

VinblancDessert2本目はワシントン/コロンビア・ヴァレーの白ワイン。ダンハム・セラーズの「シャーリー・メイズ」という辛口のシャルドネ。その日ご一緒する予定だったワシントンD.C.帰りのマダムを思って選んだ1本。やはりお手頃な価格ながらエレガントな味わい。ワインバーと言いながら、この店の料理はレベルが高い。ぜひ食べてみて!とおススメして選んだ「利三郎的ニース風サラダ」は、食材をひとひねりして再構成したオリジナリティ溢れる一皿。「うわぁ、ホントだ。ポテトがマッシュで、ここにツナとサーディンか。なるほどぉ〜。テンション上がるぅ。キレーで美味しいねぇ」と笑顔。おススメした2人も思わず笑顔。一緒に食べて呑んで、いつも楽しく美味しい2人だ。

〜もで〜す♪(^^)。と〜っても楽しかったのです。一皿一皿、盛り上がっちゃいました♡」帰宅後、愛猫家の彼女から、そんな嬉しいメッセージが届いた。美味しいだけではなく、楽しいだけではなく、さらっと“ハレ”の気分にしてくれる店。遠藤利三郎商店、またお伺いします!

ご近所の名店、いつまでも「萬来軒」


SuigyozaHachinosuIGAさん、今夜の予定がなくなりました。急ですがご一緒にいかがですか」遠来の友人から、そんな嬉しい連絡があった。2年前、とあるご縁で知り合った彼女は、転職した先の研修で2週間ほど東京に滞在していた。毎回一緒に飲んではいるものの、会うのは3度目(…と数えて、えっ!まだ3度目か!と気付いて驚く)なのに、ずっと前から知り合いだった気がする不思議な友人。さっそく妻と連絡を取り合い、スケジュールを調整し、ご近所の中華料理屋に予約の電話する。「あぁ、IGAさん。今年もよろしくお願いします」聞き慣れた「萬来軒」のオバちゃんの声。何て事のない街の中華料理屋という店構えながら、安心して友人を案内できる四川料理の名店だ。

KakiMabo職おめでとう♬」ビールで乾杯しつつ、30年ほど通い続けているこの店の、注文必須の名物料理「四川水餃子」をいただく。「これは美味しいですねぇ」芝麻醤と辣油の絶妙なバランス。ビールに良く合う。ハチノスの辛味和えを味わいながら、瓶出し紹興酒に進む。この店の紹興酒は、ついつい呑み進んでしまう危険な味。「良い香りですねぇ」“いける口”の友人も笑顔で杯を空ける。「今日はカワイ子ちゃんが一緒なんだね」平日の遅めの時間。接客も一段落して、オバちゃんが声を掛けて来る。彼女には高校生のお嬢さんがいるのだと伝えると「えぇ〜っ!そんなに見えないねぇ」と大きなリアクション。がぜん遠来の友人に興味を持ったらしい。

Eri&ChihiroTantanmen蛎と黄ニラの四川炒めの辛味を愉しみながら、ついつい紹興酒が進む。どれも美味しいと言う遠来の友人の笑顔に、調子に乗って「麻婆豆腐」とご飯、「担々麺」をオーダー。この店の鉄板メニューながら、お気楽夫婦にとっては珍しい“W炭水化物”攻め。その上、辛いモノは大好きながら、カプサイシンに騙されて大汗をかく私は、汗びっしょりのオールバックの髪型になってしまっている。涼しい笑顔の2人が信じられない。そこに一息付いた厨房のおぢちゃんが登場。「IGAさん、今年もよろしくお願いします」と、すっかりリラックスモードでビールを飲み始める。見ればオバちゃんがさっきから呑んでいた湯呑みの中は日本酒らしく、オバちゃんもすっかり酔い加減。

Momomanchihiro女は仙台なんだって。ウチの息子は結婚して山形に行っててさぁ」オバちゃんが楽しそうに語り始める。どうやら遠来の友人を気に入ったらしい。彼女は出会う人に可愛がられるという特技がある模様。「IGAさん、正月だし紹興酒サービスするよ。もう1本呑んでって」おぢちゃんが嬉しそうに杯を干す。中華料理の食材や香辛料の話題になる。「材料に拘ってウチの原価率は高くてさぁ」と零すおぢちゃん。「だからウチは儲からないんだよねぇ」と、オバちゃんが笑顔で胸を張る。「だから安くて美味しいんだよね」と皆で大笑い。2人とも中華料理屋という仕事に矜持を持ち、かつ大好きなんだと実感する。何だかすっかり5人で新年会の模様。楽しい宴だ。良い夜だ。

日はありがとうございました。良いお店ですね」遠来の友人とカフェ808に向かう。…こうして何人の友人と一緒にこの店を訪れただろうか。シャイで愛想が良い訳ではなく、接客に向いているとは言えないオバちゃん。料理の腕は良いけれど、商売が下手なおじちゃん。それでも週末にはいつも常連客で賑わい、予約が取れなかったりすることも多い。万人に受ける店ではないかもしれないけれど、ご近所にあって嬉しい愛すべき店。あと何年続けてもらえるか分らないけれど、それまでずっと通い続けるのだろうなぁ。ご近所の名店、萬来軒よいつまでも♡

贈る才能、贈られる才能「Gift」

GiftIGAさん、おはようございます。お時間があれば、自由が丘のTWGでSweet France Teaというハーブティを買って来ていただくことはできますか?誕生日のプレゼントを買い忘れちゃって。できたら100gと50gを1つづつお願いできませんか」シングルベル♬パーティの朝、酒豪女子からそんなメールが届いた。とても恐縮した文面。けれど、彼女から何かをお願いされる、ということ自体が何だか嬉しい。TWGはオフィスの目の前、ガッテンだぁ!プレゼント用だったら、リボンを付けてもらう?と返信。「わぁ♡ありがとうございます。よろしくお願いします」との返信に、それにしてもなぜ2つ?と訝しく思いながらも、希望通りのパッケージを2つ、子供のお遣いのようにメールの文面を何度も確かめながら購入する。

Partyりがとうございます。じゃあ、これはIGAさんに♬」酒豪女子に依頼品を渡すと、50gの小さなパッケージが手元に戻って来た。へ?誕生日じゃないし。「お遣いお願いしちゃって、申し訳ないなぁって」あらら。これは嬉しい。というか、まんまと嵌められた。ひとつは自分用とは露ほども思わず買って来た私と、遠慮されないように事前に考えた酒豪女子。参った。なんてスマートなギフトの渡し方。1本取られました。ちなみに、その日のクリスマスプレゼント交換も大盛り上がり。それぞれが1000円前後という子供のような設定を愉しみ、誰に渡ったらどんな反応になるかをイメージしながらGiftを選んだはず。そして不思議とぴったりの相手に渡り、その度ごとに歓声が上がる。Giftは贈る側も、受取る側も、上手くいけば(笑)幸福になる。

Gift2年のクリスマスプレゼントは何が良いかと妻に尋ねると、「今年はウチのリノベーションをプレゼントしてもらったから、もう充分かな」と即答。嬉しいぢゃないか。そんなメッセージこそ、私にとって何よりのクリスマスプレゼント。彼女の美徳は、“残るモノ”に関する積極的な物欲がないところ。ラグジュアリーなホテルに泊まるとか、芝居を観に行くとか、美味しいモノを食べるとか、“消えモノ”に対する消費欲求は人一倍強いのに、モノに対する欲望は薄い。バッグや時計が欲しいとか、ジュエリーが欲しいとか、言ったことが(ほぼ)ない。人間、バランス良くできているものだとつくづく思う。これで彼女の物欲も強かったら、わが家は財政破綻してしまうことを自覚しているだけかもしれないけれど。

Cupぇ〜!ありがとう♬」シングルベルの会の後、自宅に戻って妻にプレゼントを渡す。何もいらないと言われたものの、それでは淋しいからとこっそり買って、隠してあったマグカップ。サプライズを演出したのに、相変わらずリアクションが薄い。「なるほど、そこに隠してあったら分らないね」おいおい、そこぢゃないだろ。学生時代におんぼろディンギーで三浦の海を駆っていた私。前夫や仲間たちと一緒にでかいクルーザーに乗り、レースにも出場していた妻。いつか一緒にヨットをやる日が来ると良いなぁと思いつつ、残念ながらそんな機会が訪れる気配は全くない。そこで、せめてもと毎日使っているマグカップにヨットの絵柄を選んでみた。特に説明はしなかったけれど、何となく伝わってはいるだろうか。

ぁ、そうだったんだ」ブログの記事を読みながら、妻が呟いた。…やっぱり通じていなかったらしい。贈るということは、楽しいけれど、難しい。ところで、「Gift」とは、プレゼントという意味の他に、“才能”という意味もある。神が与えたもうたもの。贈る側も、贈られる側も、その才能の有無が問われる?

002315098

SINCE 1.May 2005