金沢を味わう「海の幸と加賀料理」

NodoguroJibuni山〜金沢の出張初日、富山での仕事を終え、夜遅く金沢に到着。さぁて、何を食べようか。金沢は美味の宝庫。寒ブリやズワイガニも旬にぎりぎり間に合う。出張とは言え、金沢の夜を楽しみにしていた。とは言え、一人旅。雨が降り続く寒空を眺め、近場で済まそうとホテルの客室にあったガイドブックを手に取った。有名な回転寿し屋の広告があり、海鮮丼がウリの寿司屋の記事があり、どのページを開いても冬の日本海の幸が扇情的な写真で迫って来る。どれも旨そうだ。困る。迷う。すると、宿泊しているホテルの目の前にあるという居酒屋の広告が目に入った。「ご馳走・四分一(しぶいち)」という、ちょっとこぢゃれた店。これだ。自分の直感を信じ、さっそく店に向かう。

OumichoIchibaCrabされたのは4人用の座敷席。メニューをのんびりと眺める。天狗舞、菊姫、加賀鳶など、地元石川の酒が豊富なのが嬉しい。何種類かある天狗舞のラインナップの内、しぼりたてをチョイス。お通しの小鉢料理を摘みながら、季節限定の生酒をぐびり。フレッシュな香りで飲口の爽やかな酒。旨し。ブリやノドグロなどの地の魚、加賀野菜を使った料理など、東京辺りのメニューとは違い、地元色が強く出ているのが嬉しい。楽しく悩みながら、ノドグロのお造り、鴨の治部煮、加賀野菜の白麹一夜漬けなどを選択。これがまた、どれも旨し。口福で幸福な味。居酒屋価格でノドグロの皮を炙った刺身の甘みと旨味を堪能。治部煮も濃厚でとろりとした汁が味わい深く、うまうま。

NigiriGunkan沢は伝統工芸品や芸能だけではなく、加賀伝統野菜が栽培され広く流通している。その日味わった一夜漬けも、加賀レンコン、源助大根などを使ったもの。旅先で地元ならではの食材を食べられるのは嬉しいものだ。翌日、遅めのランチを取ろうと近江町市場へ向かった。「おみちょ」と呼ばれ親しまれている江戸時代から続く金沢の台所。2009年に再開発が行われ、古くからの市場の雰囲気は残しつつ、「近江町いちば館」というビルを建築し、商店街としての機能を高めた。2階には飲食店が多数入居し、海産物や加賀野菜の料理を味わうことができる。その中の1軒で鮨を食べようという作戦。派手な写真付きのメニューが並ぶ、いかにも観光客向けと思われる1軒に突入。

MakimonoKagaYasai内されたカウンタ席に座ってびっくり。廻らない寿司屋なのに、カウンタにはタッチパネル付き。げげっ!オーダーは全てこのパネルからということらしい。ガス海老やノドグロの炙りなど、きちんとしたネタがあり、きちんと美味しい握りが出て来るのに、実に残念。何貫かお好みで食べていると、「タッチパネルは味気ないんですけど、若い方は注文しやすいようなんですよ」と申し訳なさそうに板さんが話しかけて来る。オヤヂは会話しながらネタを頼みたかったなぁと思いつつ、軍艦セットやら加賀野菜のひとつ金時草とカニの細巻やらを味わう。ん、ネタは良いんだけどなぁ。惜しいなぁ。サクッと食べて店を出る。それでもお勘定はお得な金沢価格。かなり満足ではある。

沢良いなぁ。ガス海老買って来て!」facebookに写真をアップすると、すかさず妻から指令が書き込まれた。残念!ガス海老は地元で食べるだけで、お持帰り禁止らしいよ(笑)とリプライ。それにしても金沢の飲食店のレベルは高い。居酒屋でもきときとの魚やキリッと冷えた地酒を楽しむことができ、観光客向けの寿司屋でもキチンと美味しい。次回はプライベートで(金沢未訪問の妻を連れ)、来春開通の北陸新幹線に乗って訪ねよう♬

加賀百万石のエネルギー「金沢市」

KanazawaStationTsuzumiMon沢駅に降り立った時、その駅舎の斬新なデザインと偉容に驚いた。新幹線沿線各駅の画一的なデザインの駅舎に慣れた目には、実に新鮮だった。東京駅の丸の内(赤レンガ)駅舎、巨大な吹抜けと大階段が印象的な京都駅などを除けば、どの駅に到着したのか分からない程。機能優先なのかもしれないが、残念ながら旅情を誘うものではない。2005年に完成した金沢駅は「おもてなしドーム」と名付けられた巨大なガラス製のドームと、東口に向かって建つ木製の「鼓門」が印象的だ。どんなデザインにも賛否両論はあるだろうが、個人的には好印象。門を挟んで、左右にはバスターミナルとタクシー乗り場のロータリーが配されている。これも実に効率的でデザイン的にも美しい。

BukeYashikiHigashiChayamachi沢市は加賀百万石の城下町。前田家の居城だった金沢城を中心に栄えた北陸地方最大の都市。現在の人口は46万人と意外なほど少ないけれど、江戸時代には、江戸、大阪、京の三都と名古屋に続く大都市だったという。江戸時代、加賀藩102万5000石という石高は大名中最大。その潤沢な財政を活かし、加賀友禅、金沢漆器、金沢箔などの独自の伝統工芸品や、加賀宝生(能楽)などの伝統文化が生まれた。年間760万人が訪れる観光都市でもある金沢の観光資源は、金沢城、金沢城の庭園として造られた兼六園、江戸時代の遊郭に由来する茶屋街、武家屋敷跡など、加賀藩の遺産とも言えるものが多い。その歴史的遺産が第二次世界大戦の空襲を免れたことも幸いしたと言える。

MusiumPool沢の魅力は“古(いにしえ)”だけにある訳ではない。新しい金沢の顔もまた魅力的だ。出張先での仕事を午後に終え、ランチも取らずに向かった場所がある。2004年に開館した「金沢21世紀美術館」だ。兼六園に隣接した芝生に被われた敷地の中央に、総ガラス張りの円い建物。芝生広場には恒久展示物があり、自由に見学できるだけでなく、体験できる。例えば「カラー・アクティヴィティ・ハウス」という作品は、シアン、マゼンダ、イエローのガラスの円い壁の組合せ。3原色の組合せで、角度によって多彩な色彩が生まれ、その迷路のような作品の内部で記念撮影もできる。あるいは12個のチューバ状の管(2個づつ対になって繋がっている)が埋められており、上手く選べば遠く離れた2人で会話できるという、オトナの子供心をくすぐるアートもある。

GuideMapSign沢21世紀美術館で最も有名なのは「スイミング・プール」という作品。地上からはプールの底に人がいるように見え、地下からは地上の人を水中から見上げるような感覚を味わうことができる。私が見たかったのもこの不思議なアート。ところが、展示作品の入替期間のため、無料ゾーンにしか入場できないと言う。仕方なく無料ゾーンの地上から覗くが、階下に人がいなくてはただのプール。残念。気を取り直し、遅いランチを食べるために中心部に向かう。金沢の街のあちこちには現在地が示されたMAPと、主要観光地の案内板がセットで設置されている。デザイン的にも優れており、実に分かり易い。路線バスでも停留所付近の映像付き観光ガイドが流される。これも好印象。

2015年春、北陸新幹線長野-金沢間の路線が開通予定。駅前の再開発も続き、2014年の公示地価の上昇率も商業地として全国4位という報道があった。北陸では金沢が一人勝ちになると隣県では危惧する向きもある。確かに、街が持つエネルギー、土地の力を感じる街だ。江戸時代から綿々と続く加賀百万石の歴史が現在の街並に溶け込み、新旧の優れた建築デザインがしっくり馴染んでいる街だ。久しぶりに訪れ、歴史ある街の文化の分厚さを実感し、その街の香りを味わった。

微笑みバゲット「ブラッスリー・ヴィロン」

VironBoulangerieイン飲めるの?パンだけじゃないんだ」と世田谷マダム。「パンは買ったことありますけど、レストランは初めてです。楽しみです♬」とプロスカッシュプレーヤー。「初めてです♡」と女子大生。そんな3人と向かったのは、渋谷の東急本店の前にある「VIRON(ヴィロン)」という店。正式な店名は「Boulangerie Patisserie Brasserie VIRON」。つまり、1階はパン屋(ブランジェリー)とケーキショップ(パティスリー)であり、2階はカジュアルなレストラン(ブラッスリー)でもある。妻はこの店のバゲットが一番好きだと言い、私は2階でパリ気分を味わいながら飲むワインが大好き。同じくワイン好きの世田谷マダム、パンが大好物のプロ、オトナの食事を楽しみにしている女子大生のベクトルは、お気楽夫婦とぴったり一致。

eccalierpâté de campagneIGAさぁ〜ん!」待ち合わせをした店の前で声を掛けられる。某体育大の先輩後輩でもあるプロスカッシュプレーヤーと女子大生が待っていた。ディナーの開店は7時。既に何人もの客が入口付近で並んでいる。パンを買うんだったら食事の前が良いよとアドバイスすると、女子2名は目を輝かせながらパンを物色。フランスのパン屋の佇まいそのものの店内で、嬉々として何種類かのパンを購入。そしていよいよ開店。予約をしていても開店時間まで待たされ、列を作って2階に向かう。ヴーヴクリコのマグナムボトルが並ぶ階段を上がると、そこはパリ。赤いベンチシート、こぢゃれたインテリア、狭めのテーブル、ちょっと上から目線のサービスマンたち。まさしくパリそのもの(笑)。

Baguetteconfit de canardずは(世田谷マダムと一緒に、ヴィロンの開店を待ちきれずに他の店で生ビールを既に飲んでいたので)白ワインで乾杯。最初に籠に入ったバゲットが登場。パンは食べ放題だよ!と告げると、「えっ!ホントですか!」と、パン好きであるプロの大きな目がさらに見開かれる。「このバゲットの皮と穴の空き具合が良いんだよねぇ♬」バゲット命の妻がしみじみと呟く。カリカリのクラスト(皮)と、もっちりとしたクラム(中身)のバランスが良いのだと言う。ということで、パンがメインで、美味しくパンを食べるというコンセプトで料理をチョイス。フォアグラ入りパテドカンパーニュ、鴨のコンフィ・レンズ豆添え、サラダニソワーズなどをオーダー。この店のポーションは大きいし、女子2人とオバちゃん2人、おやぢ1人には少なめの皿数で充分。

GirlsTeamIGAって初めて食べました。美味しいですねぇ」と女子大生。「このパン、すごい美味しいです。お代わりして良いですか」とプロ。女子2名が無邪気に喜んで食べる姿に思わず微笑んでしまう。可愛いねぇと目を細めるオジオバ3人。その日集まった5人はスカッシュが共通項。とは言え、オジオバはエンジョイプレーヤー。スカッシュのスクールメイトでもある女子大生と、5度目の日本一を目指して頑張っているプロはバリバリの現役。そんな2人をサポートするのはオジオバの役割。けれど、彼女らの試合を応援する他には、“何か美味しいモノ”をご馳走することくらいしかできない。「二子玉川のジャンズにも行ったね」という妻に「あの店を気に入って、あの後何度か行ったんですよ」とプロ。彼女とはスカッシュよりも一緒に食事をした回数の方が多いくらい。

は賞金大会なんです」では、サポートできるもうひとつ、決勝戦の応援に行こう。海外で転戦中の現チャンピオン不在の今、順当に行けば国内に残る最強のライバルとの決戦のはず。「勝ったら次は美味しいお寿司をご馳走するよ♬」と世田谷マダム。良いね。賞金大会に賞品も付いた。「次は寿司かぁ!良いですね」と同じ大会に出場する予定の女子大生もはにかんだ。君も本戦まで勝ち進め!

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