五番街の美女ホテル♡「ザ ペニンシュラ ニューヨーク」

ThePeninsulaテルおたくを公言するお気楽妻。何かしら不都合があっても「仕方ないよ、問題ない!」と大概のことは鷹揚に構えるのに、宿泊するホテルに妥協は許さない。経済的な条件、日程などの前提を基に、考え得る最高のC/Pをホテルの選択に求める。部屋の広さと向き、決してデコラティブではない内装、バスタブと別にシャワーブースがあること、スポーツジムが充実していること、数え上げれば切りがない程の条件がある。それらの条件を全て充たすことはできないから、優先順位を決め、数ある候補の中からホテルを選び、客室のタイプを選ぶ。可能な限り同じ系列のホテルを選択し、ポイントを貯め、アップグレードすることも忘れない。

Bedroom2012年夏、ワシントンD.C.とボストンの宿はハイアット系。貯まっていたポイントでスイートルームにアップグレード。お安く広い部屋に宿泊することができた。満足の滞在。そして、最終目的地のNYC。わずか1泊だけ。ここでホテルおたくの本領が遺憾無く発揮された。今回の追加条件は、新装なったMOMAに歩いて行けること、旅の最終日に体調を整えるために心地良く汗を流せるジムがあること、自分たちのウェアを洗濯する必要がないようにレンタルできること、そしてラグジュアリーな客室であること。ふぅ、やれやれ。それの条件を充たすホテルとして、ペニンシュラが選ばれた。部屋のタイプはグランドラックス。窓から5番街が望める広めの部屋。エレガントな内装。妻も満足のご様子。

Parcニンシュラを選んだ理由のひとつが眺望。特に客室に向うエレベータとは別に、秘密めいた専用エレベータで最上階まで昇った場所にあるサロン・ド・ニンのロケーションは期待通りだった。同名の店が東洋の貴婦人と謳われたペニンシュラ香港にもあるけれど、様子は全く異なる。香港が阿片窟の雰囲気漂う怪しげなサロンなのに対し、五番街を見下ろしセントラルパークを望むNYCのルーフトップバーは健康的で開放的。これぞ、ザ・ニューヨーク!という眺め。暮れ行く夕方の空も、日が落ちて夜景が輝く街も、この場所から飽かず眺めていられる。1日だけの滞在だからこそ、ちょっとゼータクをしてこのホテルを選んだ甲斐があるというものだ。

Gymらに期待以上だったのが、五番街を見下ろすジム。残念ながら改装中のプールは利用できなかったけれど、広く明るいマシンジムは秀逸。最新のマシンにはタオルとヘッドホンがセットされている。クロスウォーカーで汗を流していると、頃合いを見てスタッフがライムの香りのする冷たいオシボリを持って来てくれる。「これでリフレッシュできるよ」とひと言を添えて。ストレッチスペースでバランスディスクを使っていると、君にはこっちの方が向いているよと、どこからか別のディスクを持って来てくれる。「背中を伸ばしたままで!よし、OK!」とアドヴァイスも忘れずに。そんな雰囲気に、翌早朝に起き出して再びジムに向うお気楽夫婦。オバカである。

っぱり良いホテルは心地良いねぇ♡」朝食のエッグベネディクトを食べながら妻が呟く。麗しのホテルにすっかり惚れ込んだようだ。けれど、この美女ホテルの1泊分の料金は、ボストンのホテルの約3泊分。そうそうご一緒できる女性ではない。「良いオンナはお金がかかるのさ」と妻。うぅむ。

■お気に入りホテルカタログ ザ ペニンシュラ ニューヨーク

最後の1冊を味わう夏『春雷』ロバート・B・パーカー

Spenser's Boston年、夏休みに楽しみにしていることがあった。ロバート・B・パーカーのハードボイルド小説、スペンサーシリーズを旅先のホテルで読むことだ。前年に出版された最新作を購入すると、翌年の夏のために読まずに書棚に収める。そして、夏の旅行はどこにしようかと楽しみながら、訪問すべき地に思いを馳せる。それは、どの街で、あるいはどの島で、どのホテルでスペンサーシリーズを読もうかというワクワク感でもあった。2010年にはシンガポールで37作目『プロフェッショナル』を読み、2011年には香港に38作目『盗まれた貴婦人』を持参した。ゲストルームで、プールサイドで、ビールを片手に味わうスペンサーの物語。ささやかな夏の愉しみ。けれど、残念ながらその楽しみも今年が最後となった。

TajiHotel1973年、ボストンを舞台に活躍する私立探偵、スペンサーが『ゴッドウルフの行方』で登場。以来、年に1冊のペースで刊行されてきたシリーズは、2010年1月、著者ロバート・B・パーカーの死で終焉を迎えることになった。2012年夏、遺作となった39作目『春雷』、そして『スペンサーのボストン』を手にボストンに向った。ボストンは2度目の訪問。初めての訪問だった1999年は、前職の際に関わったプロジェクトで賞をいただき、1週間の休暇と旅行券をいただいての旅。研修旅行という名目だったため、帰国後にお気楽な報告レポートが必要な旅でもあった。旅のテーマは、スペンサーの住む街ボストンを訪ねることだった。

RedSox2回の1999年も、シリーズの登場人物たちがボストンを歩き、物語に登場する場所を案内するボストンのガイドブック『スペンサーのボストン』を携えての旅。スペンサーの探偵事務所がある(はずの)場所で記念撮影をし、スペンサー行きつけのリッツのバーでサミュエルアダムスを飲んだ。そして2012年。原作に登場する通りや橋の名前を確かめながら街を歩いた。タージホテルと名前を変えたリッツカールトンを訪ねた。ボストンの街を見下ろす展望台では、シリーズで重要なシーンを思い浮かべ、あの橋で人質を交換したんだったと頷き、あの辺りでスペンサーが殺されそうになったんだと反芻した。フェンウェイパークでは、スペンサーはレッドソックスが大好きだったなぁとにんまり。

Sixkill終作『春雷』の原題は『Sixkill』。最終作で初めて登場する新しいキャラクター、ゼブロン(“Z”)・シックスキル。スペンサーの相棒ホークの若き日もかくやと思える魅力的な造型。黒人であるホークに対し、ネイティブアメリカンであるZ。スペンサーとのやり取りも、Zを鍛え上げ一人前にしようとする過程も、新たな魅力が加わると同時にこれまでの登場人物に輝きをもたらす。自分の死を予期してはいなかっただろうに、最愛の恋人スーザンとの会話も、2人の過去と現在と未来を象徴するワードが散りばめられる。最終作を読み終えるのが惜しく、淋しい。物語を愉しみ、登場人物たちを愛おしむ。最後の1頁をボストンの街を見下ろすホテルの部屋で読み終えた。

語は終わっていない。スペンサーはスーズと共にこの街に暮し、この街を愛し、タージホテルでビールを飲んでいる。著者の死によって新たな物語は紡がれることはなくなったけれど、“最新作”でスペンサーは死なずに終わった。「やっぱりボストンは良い街だったね」同じくシリーズの愛読者の妻が呟く。いつかまた、スペンサーたちの気配を感じながら、この街を訪ねよう。

ボストンを味わう♬「Seafood , See Food」

LegalSeafoodClamChowderューイングランド地方の中心都市、ボストン。イギリスから大西洋を渡ってやって来たピューリタン(清教徒)たちが、新天地に“ニューイングランド”と名付けた。この街でまず食べるべき料理は、クラムチャウダー。それもクリーム系のニューイングランド(又はボストン)風。好みは分かれるだろうが、コンソメトマト味のマンハッタン風よりは、ボストンで食べるならニューイングランドスタイルだ。このスープが実に旨い。料理のまずいイギリス発祥ではなく、海産物が豊富なボストン発祥だからこそ(笑)。店によって味付けやレシピが違うが、おススメはカジュアルなシーフードレストランの老舗「Legal Seafood」。ボストン近郊だけで15店もあり、気軽に食べられる。

SunsetSeafoodーフードなら、ボストンハーバー・ホテルの「ローズワーフ・シーグリル」がNO.1!と(ガイドブックに)勧められ、ボストン初日の夜に訪れた。ホテルは再開発されたウォーターフロントのランドマーク的な存在。ハーバーに向って建物の中央に巨大な穴を穿ち、通りから海の香りが漂う景色が眺められる。振り返れば、ダウンタウン方向に夕陽が沈む絶妙なタイミング。浮き足立ってしまいそうな眺め。店はテラス席がハーバー内のステージに向ってすり鉢上に広がり、ライブステージもあるらしい。わくわくとした雰囲気がステージ周辺の席に漂い始めている。日本人の3人はエアコンの効いた室内へ。生ガキ、生クラム、ロブスターなどを堪能。ビールをぐびり。そしてシーフードに合わせて白ワイン。いずれも旨い。幸せな夜が更けて行く。

LincolnSandwichして、この街で飲むべきビールと言えば、サミュエル・アダムス(Samuel Adams)。アメリカ建国の重要人物で、ボストンの中心街に彼の銅像も立っているが、ビールの方がだんぜん有名。市内のレストランでビールと言えば、サム・アダムス・ボストンラガーが出てくる、全米的にも有名な地ビール。郷に入れば郷に従え、ボストンに入ればサム・アダムスを飲め!という訳で、飲み続けた。ボストン空港到着後、リーガル・シーフードでのランチで1本、ボストン美術館のカフェランチで1本、街のスーパーで買込んでホテルで1本。そんな風にボストンで味わう地元のビール♬

RedSoxHotDogらに、ボストンで味わうべきは、地元ファンに愛され続けて100年、1912年に誕生したフェンウエイパークでのMLB/ボストン・レッドソックスの試合だ。お気楽夫婦とマダムの3人は、ボストン滞在2日目の夜、LAA(LAエンジェルス)との試合を観戦。最寄り駅からフェンウェイパークまでは赤いユニフォームの群れ。スタジアムに入ると、スタンド全ての席がレッドソックスファンで埋まっている。なぜか胸が熱くなる風景。にわかレッドソックスファンとなった3人。試合開始前に立ち上がり、胸に手を当てアメリカ国歌を歌い、サム・アダムスを飲みながら、ホットドッグを頬張る。試合は乱戦。ゲームの途中でホテルに戻り、近くのバーで引き続きTV観戦しながらボストン最後の夜を過ごす。

「『を野球場へ連れてって』歌いたかったねぇ。歌詞も覚えたのにね」メジャーリーグの試合では、7回表が終わると、”7th inning stretch”と言って『TAKE ME OUT TO THE BALLGAME』を観客全員が立ち上がり歌うのだ。閉店間際、ようやく試合が終わった。「楽しかったなぁ。ワシントンもボストンも。ありがとうね♬」マダムがしんみりと呟く。「ほんと、楽しかったね。こちらこそありがとう、マダム♡」妻も笑って応える。3人でずっと一緒に過ごした数日間。得難い貴重な時間、記憶に残る旅だった。「ところで、タイトルのSee Foodって、観戦しながら食べるものって意味?だとするとSeeじゃなくって、Watchだと思うよ」・・・知ってて敢えて韻を踏んだだけ。

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