世田谷の外れに小さなBARがある。酒もつまみも持ち込み可、というか持ち込み歓迎。決まったメニューはない。お客さまと一緒にマスターも酒を飲む。というより、マスターが率先して飲む。だからお客さまが持ち込む酒以外はマスターの嗜好で揃えられている。基本的には毎晩開店しているが、ほとんどは客なしでマスターの独り飲み。そんなBAR808に3週連続で来客があった。1週目の週末は、毎年同じ顔ぶれで集まる3組のカップル。残念ながら1組は直前にキャンセル。上海ガニを食べた後に立ち寄っていただいた。2週目は、出産を直前に控えたカップル。出産後はなかなか一緒に出歩けないからと、やはり四川料理を堪能してからのご来店だった。
3週目の週末。やって来たのは4人の女性たち。いずれのお客さまも何度目かの来店。中でも1人は常連さん。やはり季節の味、上海ガニを食べた後にご来店。一緒に来店予定だった建築家が風邪でキャンセルとなったため、まるで女子会の趣。「上海ガニサイコーだったねぇ♬」「四川水餃子の芝麻醤が利いてて美味しかったぁ」「担々麺も良かったね、あと焼餃子ね」「私はあの炒めた牡蛎だなぁ」そんな感想を言い合いながら飲物の準備が始まる。常連の役員秘書はちいママのように、勝手知ったるBARの店内を動き回り、ママのお気楽妻をサポート。「これみんなで買ってきたの♪」その日もたくさんのお持ち込みの品々がバーカウンタ代わりの大きなテーブルに並んだ。
「さぁ飲もう!飲もう!」「うわぁ〜いっ!泡だ!モエだ♡」四川料理屋に行く前にお預かりし、冷やしてあったモエ・エ・シャンドンを取り出し乾杯。他にも女子会らしく、岐阜の銘菓「恵那寿やの栗きんとん」、鎌倉欧林堂のパトロン(マロングラッセにチョココーティングした一品)など、絶品のスイーツが輝く。負けじとマスターが用意したのは、地元烏山の名店ラ・プティ・ポワソンのチーズケーキ3種。オトナのチーズケーキ、ちょっとオトナのチーズケーキなど、ワインにも合う絶品スイーツ。小さく切り分けてお客さまにお出しする。「えぇ〜!美味しいっ」「確かにシャンパンにも合うね」お褒めのことばにマスターも満足。食べねぇ、飲みねぇ。
「ホントにここは居心地良いんだよねぇ♬」「うんっ!そうなんだよねぇ」お客さまにそう言っていただいた時間には、既に電車は走っていなかった。嬉しいおことばながら、皆さん大丈夫?「ヘーキだよぉ〜♬今日はマスター冷凍庫からズブロッカ出さなかったし」そう答えたのは前回、ボンベイサファイヤとズブロッカをお飲みになり、帰路にタクシーの中でジェームズ・ブラウンの名曲を口ずさんだパン教室の先生。最初のモエの後にはスパークリングワインのロゼ、3本目のソーヴィニヨン・ブランは少し残る程度。節度ある飲み方だった。「どうせタクシーだったら、もう少しのんびりして良い?」はい、お客さまさえよろしければ。コーヒーと紅茶でまったりと酔い覚まし。…こうして夜が更けて行く。
会員制ではないけれど、そのバーを訪れるにはマスターの知り合いである必要がある。営業時間は未定。不定休。チャージなし。駅徒歩2分。眺望良し。BAR808は、今夜もまったり営業中!

お気楽夫婦が開店を心待ちにしていたお店があった。六本木ミッドタウン「SILIN火龍園」で絶品中華料理の魅力を、その絶妙な接客で倍増させていたネモキチこと根本さん。この春に店を辞め、新たに中華料理店の開業を準備していた。店のコンセプトは、気軽に食べ飲める海鮮をウリにした広東料理だという。「焼物とか小皿の前菜で飲んでもらったり、海鮮なんかを手頃な値段で食べてもらえる店、ですかね」と根本さん。ご一緒した「さかなの寄り処 てとら」で熱く語ってくれた。「IGAさんたちにぴったりのお店になると思います」そう言われたら(言われなくても!)もちろん行かネバダ!

店の名前は「広東料理Foo」。聘珍楼などで料理長を務めたというシェフの慎ちゃんこと林慎一さんとタッグを組んで、この11月1日に松陰神社前にオープン。新規開店早々では却ってご迷惑かと敢えて避け、数日後に訪問。予約の電話をすると根本さんの奥さまが「IGAさん、ありがとうございます。まだバタバタでたいへんです」とのコメント。でも声は無事に開業できた嬉しさだろうか、明るく弾んでいた。週末の夜、松陰神社前駅から商店街を抜け、世田谷通りを歩く。店までは数分。店先に開業祝いの花が溢れる。「IGAさん、お待ちしてました♬」笑顔の根本さんが迎えてくれる。
店に入るとすぐに全席が見渡せるコンパクトさ。カウンタ6席、テーブル5つ。カウンタの上、店の奥に大きな黒板。中華料理店というより、ビストロの佇まい。料理メニューは全て黒板に、根本さんの食欲をソソる美味しそうな文字(確かにそんな文字がある♡)で書き出されている。待ち合わせの妻が来るまでということで、前菜をちょっとづつ盛りで。これが、んまい!あっという間にビールを飲み干し、1杯目のグラスワインに。そこに妻が到着。「開店おめでとうございます」と挨拶もそこそこに席に着く。「わぁ〜!これは良いねぇ」前菜小皿を絶賛。自分の皿を食べ終え、妻の前菜を横取りしようと差し出す私の箸を拒む。ちっ!残念。

続いて2人の大好物、白灼蝦(パッチョハー)「天使の海老の湯引き」。これが、実に涙もの。新鮮ぷりぷりの活け海老はたっぷりの味噌が絶品。味噌と一緒に脚の付け根までぱりぱりと食べても邪魔にならない。これは凄い!メインは清蒸鮮魚(チンチェンシンユィ)「キハタの広東風姿蒸し 熱々油かけ」。もう何も言うことなし。上湯(シャンタン)と薄めの味付けだけ。新鮮なキハタの旨さが滲み出る。爆香炒雑菜「季節野菜の香り炒め」と一緒に食す。しゃきしゃき野菜とにんにくの香ばしい香りがお気楽な2人を幸福にする。シャルドネ、ソービニヨンブラン、甲州とグラスワインを飲み進む。やはりこの店は中華ビストロの居心地。
「また行きたい、すぐ行きたい」妻がFacebookに書き込む。感情体温が低い妻としては、かなりのハイテンション。それを知る周囲の友人たちが同行したい!と手を上げる。Facebookの書込みを読んだ友人が、素早く(なんと翌日!)店を訪れ、写真をアップ。皆さま、なかなか反応よし。うしっ!近々、ウチも再訪だ!
■食いしん坊夫婦の御用達 「広東料理Foo」 店舗情報詳細へ
お気楽夫婦宅には、食料のストックがほとんどない。あるのは、週末のサラダなどに利用するツナ、鮭、ホタテ貝柱などの缶詰のみ。この缶詰たちが活躍する場面は多い。ツナ缶は最近進化を遂げ、コーンやビーンズと一緒になっているものが出回っている。これは便利。ドレッシングで和え、葉もの野菜と一緒に盛り付ければ、あっという間にサラダが1品できあがり。鮭缶はダイコンおろしと合わせるも良し、マヨネーズを回しかけ七味を振るも良し。立派な料理となる。ダイコンと水産物缶詰は相性が良く、ホタテ貝柱(またはズワイガニほぐし身)と細く切ったダイコン、マヨネーズ、ブラックペッパーを合わせると、朝のサラダだけに食べるには惜しい、手軽な酒のつまみにもなる。
酒の肴と言えば、最近では缶詰バーなるものが巷にできている。店内で調理はせず、日本各地から集めた缶詰を提供。客は缶詰をおつまみに酒を飲む。徹底している店は、提供する酒は缶ビールに、缶チューハイ、そしてワンカップ。そう聞くと、侘しい気持がする方もいらっしゃるかもしれない。けれど私は缶詰好き。ぜひ行ってみたいと思っていた。ところが妻は同行拒否。であれば、缶詰バーに行くのは躊躇っても、自宅で缶詰バーなら良いだろう。という訳で妻に提案。実は、密かに缶詰をつまみにする「缶つま」なるものが一部で人気。なにしろ、缶詰大手メーカーの国分は「缶つまプレミアム」「缶つま☆レストラン」などというシリーズまで発売しているのだ。

「へぇ〜!面白そうだし、なかなか美味しそうだね♬」国分の商品紹介サイトを見せると、妻も興味を示した。おしっ、缶つまプロジェクトのスタートだ!そしてある日、二子玉川のとあるスーパーで大量に「缶つま」を買込んだ。缶詰界のお約束定番つまみオイルサーディンはハバネロ味の強者を、写真だけでもヨダレモノの厚切りベーコンのハニーマスタード、沖縄の雄ポーク(ランチョンミート)のチーズ入りなど。それ以外にもブリのあら炊き、牛スジこんにゃく、広島宮島産のアナゴの蒲焼きなどをゲット。そしてその日は妻の好物Vironのバゲットに合うようにと、何種類かの料理(?)を準備。
まずは、オイルサーディンはオニオンスライスと一緒に盛付けるだけ。ベーコンは缶ごとオーブントースターで温め、盛付けるだけ。わしたポークはさいの目に切り、かりかりに焼いて生食用ホウレンソウと一緒に盛付けるだけ。…早い話が、ほぼ盛付けるだけの缶たん料理。これが、実に旨かぁ〜っのうま缶料理。ちょっと辛めのハバネロ味のサーディンや、とろとろに煮込まれたベーコンはきりっと冷やした白ワインにぴったり。「かりかりポークは、予想以上にホウレンソウサラダに合うね。美味しいよ♬」ヴィロンのバゲットを齧りながら妻も満足げ。ちょっとひと手間もかけずに、ワインが美味しく、バゲットが美味しく、気軽に楽しめる。
「次は和食系の缶つまだね」まだたっぷり残っている缶つまシリーズ。次回は、ビールと芋焼酎に合う缶たん料理を!