災禍に負けるな!大人食い♬「崎陽軒本店 中国料理 嘉宮」

kiyouken2011年3月12日、お気楽夫婦を含めた3組の夫婦6人と2匹のワンちゃんは、一緒に旅に出る予定だった。行き先は小田原のリゾートホテル。ワンちゃんと一緒に宿泊できるコテージのステイプラン。前年末からスケジュールを調整し、ようやく全員の日程が合った。ペットと一緒に食事ができる海辺のレストランを検索し、テラス席でランチを楽しんだ後にチェックイン…そんな予定だった。「いよいよ明日からだね〜」「すっごい楽しみぃ♡」そんなメールを妻たちがやり取りをしたのが3月11日の朝。そしてその日の午後に大災禍は起きた。横浜に住む友人(夫)は大手町のオフィスで一夜を過ごし、ご近所の友人(夫)は、湾岸エリアにある会社の倉庫を見回ることになった。そして夜遅くにオフィスから歩いて帰って来た妻や友人たちと、何とか繋がった電話やメールで相談し、中止の決定をした。無念。

fukahireshumaiれど、震災による被害の状況が次第に明らかになるにつれ、旅行どころではなかったと実感。ホテル周辺には直接的な被害はなかったが、余震が続く中で旅行をしても明るい話題だけでは過ごせない。楽しみにしていたからこそ、中止の判断は正しかったはず。けれど、ご近所の友人(妻)の長年勤めた会社を退職した慰労会も兼ねた企画。彼女のためのプレゼントも用意してあった。何とか代わりに皆で集まる場を設定したい。私もかんたんには挫けない東北人。友人たちと連絡を取り合い、横浜で中華料理を食べるという企画に変更。なんとか全員のスケジュールが合ったのは2ヶ月近く後の4月末。発案から半年。ようやく企画が実現することになった。

taitainosashimiしぶりだねぇ♡」「元気だったぁ〜♬」お互いにハグし合わんばかりの奥さまたち。実はこの企画、彼女たちが10年程前から毎月5,000円づつ積み立ててきた旅行基金が原資。一緒に旅行に行こう!と3人が貯めてきたもの。けれどなかなか休みが取れず、お台場のホテルに1泊したのが唯一の出費。結果、えっ!と驚く程の残高になっていた。「今日はごちそうになりまぁ〜っす♪」3人の夫たちが声を揃える。「よしっ、好きなモノ食べて良いよ!」「じゃあ、ツバメの巣かな、フカヒレ?」「大人食いだぁっ!」自腹ではなかなか食べることのない食材の名が挙がる。ん?フカヒレと言えば気仙沼。大きな被害があった街のひとつだ。「はい、今は新たな入荷がないんですが、1年程ご提供できる在庫は持っていますので、それまでに復興できると良いんですが…」と店のスタッフ。よしっ!支援の意味でも気仙沼産のフカヒレの姿煮だ!

beijinduckbanzの日伺ったのは、横浜駅前にある崎陽軒本店。店の2階にある中華料理の嘉宮。友人たちとも訪れた名店。本店オリジナルシウマイはもちろん、焼物は外せない。合鴨の香り焼き、自家製叉焼を前菜として会食スタート。NYC駐在経験がある横浜に住む友人夫妻が、カリフォルニアワインのプロモーションに食い付く。ナパバレーを訪れたこともある2人。ワインは任せた!料理を選ぶのはお気楽夫婦。活け真鯛を薦められ、中華風のお刺身でオーダー。さらに北京ダックだぁ!普段ではあり得ない、料理の値段を気にしないセレクト。「フカヒレ美味しいねぇ♡」「今まで食べてたフカヒレは何だったんだ!」「やっぱり一緒に香港行きたいよね」「旅行基金でね」「皆でいろいろ料理を食べられるのは良いよね」会話も、料理も、ワインも楽しく美味しい。小食のお気楽妻は、大勢で食べる中華料理が心から嬉しそう。

れでね、長年お疲れさま!ということで皆から…」ご近所の友人(妻)には内緒だったプレゼントを贈呈。20年以上勤めた業界から“足を洗う”という意味で、フットケアセット♬そして料理自慢の彼女に“ますます腕を磨いてね”と、栗原ひろみの料理本。「えぇ〜っ、そんなぁ。ありがとう♡」彼女は退職後に医療事務の学校に通い、資格取得を目指して勉強中。凹みやすいのに、淀まず流れるようとする前向きな奥さまだ。“大人”になってから知り合った3組の夫婦。3組それぞれの状況は変化しているけれど、会えば変わらず元気になる。笑顔になる。まして一緒に美味しいモノを食べたなら。「私はずっと元気だけどね」…お気楽妻は変わらない。

嬉しいことがあった日には、なかった日にも「DEAN & DELUCA/JEWEL de Choolat」

Roast beefsaladeる日、とても嬉しいことがあった。仕事のことなので詳しくは書けないけれど、かなり画期的で、今後に期待が持てる成果。けれど、内定段階のため、まだ大っぴらにまだ喜べない。けれど、かなり喜ばしい。う〜む、もどかしい。そこで、お気楽な妻と2人で、ちんまりとお祝いしようとメールを送ると、すぐに返信があった。「何だか分からんけど、おめでとう♡」相変わらずの短文ながら、絵文字が入っている。凄いっ。彼女が絵文字入りメールを書くのはかなり珍しい。思わず永久保存したいと思ったほど貴重なメールだ。では、嬉しさをお裾分けして、妻が大好きなDEAN & DELUCA のデリにしよう。「うわぁ〜いっ♬」すぐにまた最上級の喜びを表した返信が届いた。

DELUCAっそく仕事帰りに渋谷東急東横店にある小さな売場に向う。選んだのは妻の好物ローストビーフ。決して肉食系ではない彼女が、唯一積極的に食べたがる肉料理。DEAN & DELUCA のローストビーフは、ゼリー状に固めたソースが美しく、かつ旨い。そして、季節を先取りのいちぢく、旬の空豆とクスクスを合わせたサラダ。NYCっぽい組合せ。その他に、何種類かの豆を和えたサラダ。ローストビーフとの付け合わせには、これまた旬のホワイトアスパラとドライトマトのサラダ。そしてバゲット。ローストビーフを除けばサラダ中心の、お気楽夫婦の鉄板メニューだ。ランチョンマットと皿を選び、丁寧にかつ美しく盛り付ける。そして、スクリューキャップのお気楽ワインを冷やし、バゲットを切り並べ、スタンバイOK!ビールを飲みながら妻の帰りを待つ。「わぁ〜いっ!パンだっ!」彼女はセリフも短い。

Jewel de Chocolatたある日、自由が丘のとある病院でセミナー開催に関する打ち合わせ。駅から遠いその病院からの帰路、久しぶりにチュベ・ド・ショコラに立ち寄った。ネットで割れチョコを販売したところ、余りの人気にわざわざ割って販売しているという本末転倒ながらも美味しいチョコレートショップ。ブラック、ミルク、ホワイト、ストロベリー、抹茶などのチョコにアーモンド、マカダミアナッツ、ライスパフなどを組み合わせるからヴァリエーションも豊富。そんな割れチョコを少量づつパッケージした人気の商品がある。ジュエル・ド・ショコラ(チョコの宝石)と名付けられたギフトBOXだ。その日はたまたま50%割引!すかさず購入。これまた妻の大好物。特に何があった訳ではないけれど、ホンモノのジュエルはなかなか買えないから、ショコラの宝石箱を気軽にプレゼント。

Chocolatchocolat menuそうだねぇ〜っ」16種類のチョコレートが詰まったギフトBOXを大切そうに抱えながら、妻が満面の笑み。冷蔵庫に保管しながら、すこしづつ味わうのが楽しみらしい。良いことがあった日にひとつ。良いことがなかった日にも2つ。嬉しいことがあったからひとつ。面倒なことがあったから2つ。月曜日には、1週間頑張ろう!と言ってはひとつ。金曜日の夜には、やっと週末だ〜っ!と2つ。美味しいモノを食べると、人は元気になる。ささやかな幸福。決してゼータクなモノではなくても、大好きなモノを味わうと、人は笑顔になる。

っ!もうチョコはほとんど残ってないよ!」えっ!味見をしようと冷蔵庫を覗くと、宝石箱の中にあるチョコは僅か。彼女は悩みも、迷いも、葛藤もなく、良いこと悪いことの有無に関係なく、日々お気楽にチョコを齧り、この数日を過ごしたらしい。「チョコを食べるのに、理由なんかある訳ないじゃん!」嬉しいことがあった日も、なかった日にも…。

箱根駅伝ファンでも、でなくても『風が強く吹いている』三浦しをん

MAHOROEKIMAEばらく購入するのを躊躇っていた本があった。三浦しをん『風が強く吹いている』の新潮文庫版。奥付を見たら平成21年7月1日に初版で、結局私が買ったのは平成22年5月30日の12刷。あぁ、やっぱり売れている本なんだと実感した。買おうかどうか、読もうかどうか迷っていたのには訳があった。ひとつには、私は多くの日本人と同様に箱根駅伝の大ファン。新たな年を迎え、1月2日と3日の早朝から深夜までのスケジュールは決まっている。そう、朝からお節料理をつまみに酒を飲むのが…っと、それも当然楽しみつつ、TVの前に陣取る。もちろん箱根駅伝の中継、スポーツニュースなどを可能な限り視るためだ。譲れない正月の愉しみ。TVの前で声援を送る。冷えた辛口の酒をぐびり。おっと、もう飲んじまった。手酌の杯に酒を注ぎながらも、目はTVに釘付け。うわっ、零しちまった。

POLALIS根駅伝には、全てがある。本戦出場に懸ける予選出場各校のドラマがある。先輩が繋いだ伝統の重みがある。このチームで走るのは最後だという4年生メンバーの思いがある。指導者と選手たちの信頼がある。レギュラーと補欠の選手たちの出場できるかどうかという祈りに近い気持がある。レース当日までの葛藤がある。故障に泣く選手とサポートする他のメンバーの友情がある。レースが始まると、新鋭の輝くような走りがある。本命チームに貫禄の走りがある。伝統校に勝負強さがある。襷リレーのはらはらするシーンがある。神様と呼ばれる選手の山登りの脚に驚きがある。選手の苦しい表情に、思わず一緒に唸り、声援を送り、拳を握り、ついでに酒をぐびりと飲み、選手の歓喜と共に涙する。こうして思い出しながら書いていても胸が熱くなる。あ〜、疲れる。

からこそ、三浦しをんの『風が強く吹いている』を買うのに1年以上も時間が必要だった。平積みにされている表紙を見ても、手に取ることすらしなかった。それまで、三浦しをんの作品は何冊か読んでいた。2006年に第135回直木賞を受賞し、今年4月公開されたばかりの映画にもなった『まほろ駅前多田便利軒』は、奇妙なタイトルと装丁に惹かれ迷いなく手に取り、第1刷を買った。気に入った。飄々とした登場人物と、不思議なのにさらっとしたストーリー、読む人に媚びない心地良い文体。『むかしのはなし』の着想も楽しめた。かぐや姫などの誰もが知っている昔話をモチーフにした、けれどもその昔話から予想できる通りには展開しない物語たち。…それでもまだ、決め手にはならなかったのだ。何と言っても箱根駅伝を愛してさえいる私なのだ。そして、『きみはポラリス』を読み終えた翌日、待ちに待った『風が…』を迷わず買った。この短編集を読んで、この作家を信頼した。この人の書く箱根駅伝なら読んでみたい。そう思った。

KAZAEGA論から言おう。信頼し、期待した以上の作品だった。今も主人公である走(“かける”と読む!名前が凄い)が、私の頭の中を気持良さそうに疾走している。竹青荘という寛政大駅伝チームの10人が棲むぼろアパートを訪ねてみたい(何しろ物語上の設定では、お気楽夫婦の住む街から歩いていける距離なのだ!)欲求が、私の中に今でも潜んでいる。陸上を、駅伝を、スポーツを知っている人なら鼻白む設定かもしれない。競技として本格的に長距離を走ったことがある人なら、あり得ない物語だと一笑するかもしれない。けれど、そんなことは気にならない魅力がこの1冊の中にはたっぷりと詰まっている。箱根駅伝以上のドラマや、エピソードが溢れ出す。そして何よりも、スポーツは勝つためだけにやるのではない、という文中のことばが胸に沁みる。人にはそれぞれの目指すべき高みがある。競技は勝たなければならない。けれど、優勝するだけが“てっぺん”ではない。そんなことを改めて教えてもらえる。

から私は、ず〜っとスカッシュやり続けるもんねぇ♡」書きかけの記事を読んだお気楽妻が胸を張る。長く愛することができるスポーツに、そして一緒にラリーを交わせる仲間に出会えたことが、彼女にとっては何よりも貴重な財産。「でも、良い本だからと言って、何も同じ本を2冊買わなくても良いんじゃない?」…ふんっ!やっと買えると思った胸の高鳴りを抑えられず(ただ、忘れたと他人は言うかもしてないが)2冊買ってしまったんだよ!

*2冊買ってしまった『風が…』はBookOffに嫁ぎました(笑)

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