出張ヴァカンス?「ANA vs JAL」

ANA HOTELNight view(まつりごと)」とは、国の主権者がその領土・人民を統治すること、である。ことば通りに言えば、現在のこの国には政は存在しないのだろう。ここ数日、TVのニュース番組は観ないようにしている。不愉快なのだ。新聞やネットで得る情報は強制的に視覚や聴覚に入ってこないため、情報の取捨選択ができる。けれど、TVで強制的に流される情報は神経を逆撫でする。彼の国の対抗措置に危惧しつつ、釈放の際には異を唱える都合の良いマスコミ各社や、識者と言われる老人たちの発言が嫌だ。芯がない。一貫性がない。戦略がない。対処療法だけではこの国の病は治らない。淀んだ空気を刷新すべき新たな政権党の、新たな顔ぶれに、斬新な発言に、期待していたのに…。

Pool &CITY VIEW日、関西に出張に出かけた。前段の文章とは何の関係もない。(このブログに相応しくない書き出しを削除したいぐらいだけれど、たまには零したい)姫路での早い時間の打合せのため、神戸に前泊。独りで食べる夕食は駅弁で済ませ、汗を流し美味しいビールを飲むことを優先してホテルを選択。新神戸駅に直結するANA CROWNE PLAZA HOTEL 神戸を予約。スポーツクラブの開いている時間までになんとかチェックイン。「一休」で予約したお手頃プランは、部屋の窓から神戸の街が見渡せるヴュー。北野が間近に、元町のポートタワーまでが一望。ジムはこぢんまりとしてはいるものの、夜景を観ながらのランニングは心地良い。天井がガラス張りのプール&ジャグージも爽快。

JAL HOTELLobbyムとプールで汗を流した後はビールが旨い。神戸の夜景を眺めながら駅弁とポテチで独り宴会。ご機嫌。そして、翌日。仕事が終わり姫路駅へ。新幹線へ乗車しようとホームに上がったところでアナウンスが。「ただいま台風の影響で、小田原、新横浜間が運転見合わせとなりました。再開のメドは立っておりません…」ざわつく乗客。大阪方面に向う在来線に乗ろうと払い戻しを求める客たちで窓口には大行列。うむむ。決断の時間は限られる。運転再開となっても帰り着くのは深夜になるに違いない。そうだ、その日に食べたランチがなかなか美味しかった駅前のHOTEL NIKKO 姫路に宿泊して、翌日の新幹線で帰ろう!確か、ジムもあったはず。お気楽モノの決断は素早い。

JAL HOTEL LUNCHEKIBEN ANAGOMESHI西方面に台風の影響があったのは早朝から昼頃まで。姫路の空は快晴。いわゆる台風一家(笑)。台風が一家揃って変わったルートを旅し、首都圏に大雨をもたらしたことをTVで知る。ふぅん。まるで他人事。新幹線の車内で食べようと買っていた駅弁を抱え、JAL HOTELへ。ロビーから妻に連絡をして、ホテルの格安プランを予約してもらう。そして、チェックイン後にジムへ。本格的なトレーニング施設は、前夜のANAとは違い地元住民が通う老舗の風情。大勢のメンバーが汗を流している。ロッカールームには無料ドリンクコーナーとリクライニングチェア付きの休憩室まで完備。アウトドアジャグジーまであるスパ施設も充実。あれ?出張じゃなかったっけ、とのご指摘には耳を塞ぎ、ゆったりとした時間を過ごす。

話もらった時は会議中だったから、焦ったよ。なのに、これ?」妻は少々ご立腹モード。ごもっともである。けれど、私の行動には、お気楽という一貫性がある。ピンチをチャンスに変える戦略がある。どこかの政府にも見習って欲しいと願うばかりだ。

美味再開、再会「割烹 弁いち」浜松

benichi-amuseugonotsukiの故郷、浜松の地で、親子三代に渡って美味を提供してきた老舗割烹 弁いち。お気楽夫婦はその店の再開を楽しみにしていた。2008年末に伺った際に、発展的に店をスリムにして、仕事の内容を充実させる…そんな話をご主人に伺った。そして、この春、2ヶ月以上店をお休みし、大規模な改装に踏み切った。2008年の春に妻の両親を伴い初めて伺って以来、大ファンになったお気楽夫婦。歯科医だった義母の父親が通ったというこの店。年に数回しかお邪魔する機会がないとは言え、義母そして妻と、こちらも親子三代お世話になっている店になった。その少ない機会のひとつが、GWの浜松まつりの頃。今年はちょうど改装中。悔しい思いをした。

Benichi-wanmonoisojiman6月に新装開店と知り、そのためだけに伺おうかとも思った。けれど、「なぁにゼータク言ってるの!」と、妻に嗜められ断念。そして、秋。待望の訪問となった。日程が合わず、昨年末にも伺えなかったから、ほぼ1年振り。毎回使っていた4人用カウンタ席は2階に変わったものの、健在。以前よりややこぢんまりとして、けれど厨房に繋がるライブ感は以前のまま。ご主人の声が暖簾がかかる扉の向こうから聞こえてくる。新装、おめでとうございます。「ありがとうございます。前の店も、決して古かった訳ではないんですが」相変わらず、ご主人のはにかんだような言い回しに再会。ふふふ。美味との再会も楽しみだ。

sashimikosyu食の4人、いつものお手頃なお任せコース。まずは先付けで、美しい器と美味の競演。素材の良さが際立つ、そして相変わらず上品な味付けの料理たち。さぁて、お酒は…。「何やら楽しそうに準備しておりましたよ」サービス担当の女性スタッフが裏話を暴露。それは嬉しい。毎回ご主人にお任せの酒。新たな美酒との出会い、料理との組合せも訪問の楽しみ。その日の1杯目は雨後の月 純米大吟醸 愛山。まろやかな飲口、料理との相性もぴったり。お互いを邪魔せず、立て合い、まるで夫婦のあるべき姿。丁寧な仕事の椀ものが出てくる頃には幸福の2杯目、磯自慢 大吟醸 秘造寒造りが供される。ん〜文句なし。ご主人が薦める地元静岡の名酒。

yakimonooyakodonしてその日の掉尾を飾るのは、梅の宿 古酒。琥珀色に輝く、シングルモルトか紹興酒のような味わいの逸品。「古酒はご存知ですか」とご主人。ええ。品川に有名な古酒バーがありますよね。以前勤めた会社の仕事関係で訪れたことがあって…。「そうでしたかぁ。私も一度伺いたいと思っているんですけれど」古酒談義に花が咲く。どうやら、ご主人の投げたボールを上手く受け止められたようだ。料理はと言えば、いつものように安心、納得の味。口数の少ない親娘は、こぢんまりとした空間の中でリラックスして箸を進めている。「うぅ〜ん、美味しかったぁ♬」そして、満足の笑みが零れる。

主人に送られて店を出る。「あと何回この店に両親と一緒に来られるか分からないから、浜松に帰って来る度に伺いたいよね」こっそりと、珍しく殊勝なことばを吐く妻。確かに、年に数回のゼータクと、妻の両親もこの店に来るのが毎回楽しみな様子。仕事を極め、進化していこうとする弁いちのご主人の供する美味。可能な限り4人で味わおう。

■食いしん坊夫婦の御用達 「割烹 弁いち

過去の未来、未来の過去『一九八四年』『1Q84 Book3』

19842001年」と聞いたら、映画好きの人なら「宇宙の旅」と続けるだろう。アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックによるSF映画『2001年宇宙の旅』、続編は『2010年』。なんと、今年だ。ちなみに、『鉄腕アトム』の誕生日は2003年4月7日。『2001年宇宙の旅』の全米公開は1968年4月6日、国産アニメの第1号としてスタートしたTVアニメ『鉄腕アトム』の放映開始は1963年。過去にとっての未来は、2010年を生きている我々の“今”が追い越してしまった。日本人宇宙飛行士も宇宙ステーションで長期滞在するなど、宇宙旅行が現実味を帯び、ここ数年ロボット開発技術も格段に進んだ。けれど、過去が夢見た未来はどれぐらい実現できたのだろう。

ョージ・オーウェル著『一九八四年』という小説作品がある。著者のオーウェルは1903年生まれ。『一九八四年』は、彼が亡くなる前年1949年に出版された、13番めで最後の作品。1949年といえば、2度目の世界大戦が終結して4年。中国共産党が国民党に勝利し、中華人民共和国が誕生した年。暗く沈んだトーンで描かれたオーウェルの作品の中では、起きて欲しくない“未来”が描かれている。絶えず国家の監視下に置かれる市民、国家や党が絶対的な存在で、日常的な洗脳が行われている。言論統制、裏切り、密告、拘束、失脚、高級官僚と市民の格差。過去が怖れた悪夢。(あれ?どこかの国では起きてしまっている“未来”だ)

1Q84−Book31Q84』は、2010年という未来から俯瞰した、あったであろう過去と、ありうべからざる過去の話だ。決して起らなかったことが分かっているから、月が夜空にひとつしかない未来人たる2010年に生きる読者は安心していられる。けれど、1949年当時の『一九八四年』の読者にとっては、その陰鬱な未来に不安であったであろう。この夏、村上春樹の『1Q84 Book3』をシンガポールで読んだ。Book1とBook2を読んだのは2009年の夏、香港だった。いずれも、未来と過去が交錯する街。数年前のことでさえ、遠い過去にしてしまうエネルギッシュな街。香港の中国への返還は1997年、わずか13年前。そして、シンガポールの独立は1965年。まだ誕生して45年目の都市国家。観光客向けの顔と、独裁国家の下にある(決して観光客になど見せない)内向きの顔。それに比べ、占領下にあったという自覚さえない東京。関東大震災、東京大空襲、東京オリンピックなどを契機とした変貌を続けながらも、多くの日本人と同様に平板的な表情の街だ。

上春樹の『1Q84』は、『一九八四年』へのオマージュとして描かれた作品だという。本屋でそんなPOPを見て、『一九八四年』を買った。けれど、それは本屋の陰謀だ。村上春樹がどのように言っているのか知らないけれど、オマージュなんかではない、と思う。過去にとっての未来、未来にとっての過去。未来への憧れ、不安、焦燥。過去への羨望、不信、ジレンマ。…ん?いずれにしても、『1Q84』は、高円寺、環七、三軒茶屋など、極狭い東京の西側で起きている不思議な物語。これが日本全国で、世界各地で爆発的に売れていることが不思議な物語。ははぁ。広がりそうで広がらず、ダイナミックな展開になるのかと思えばちんまりと、平板な表情の東京で、こっそりとホントに起きている物語なのかもしれない。

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SINCE 1.May 2005