1980年、ハイアット グループとして日本初のホテル「センチュリーハイアット(当時)」が開業。1983年にそのホテルを舞台にした『誰かが私を愛している』というTBSのドラマがあった。主演は多岐川裕美、野口五郎。最上階にはガラス張りの天窓があるプール。仕事を終えた主人公がなぜか夜のプールで泳ぐシーンが、あった…ような記憶が。いずれにせよ当時としては最上階にあるプールは珍しく、とても印象的だった。
ある週末、お気楽夫婦はそのプールにいた。今は「ハイアット リージェンシー東京」と名称を変えたそのホテルに宿泊し、無料アップグレードしてもらい、さらには無料ラウンジアクセス権を使うための滞在だ。「ワールドオブハイアット 」という会員制の「エクスプローリスト」という資格を得た2人は、2度と達成できないその上級クラスの特典を最大活用しようと(セコく)計画を立て、敢えて術中にハマったのだった。
「ハイアット リージェンシー東京」に是非とも宿泊したい訳ではなく、せっかくの特典を使いたいだけ。何せ通常は年間に30泊しないと得られない資格。さすがのハイアット好きのお気楽夫婦でも30泊は不可能。2018年にヴーヴ飲み放題というゼータクなパーティを「パークハイアット東京」で開催し、さらにはその際の豪華なスイートルーム連泊で得た、おそらく生涯で最初で最後の権利なのだ。…またパーティやりたい!
お気楽夫婦が大好きなホテル「パークハイアット東京」は、ハイアット リージェンシー東京のジムからも、2人が宿泊した客室からも、その特徴的な外観を眺めることができた。「リージェンシーのプールも、ジムも悪くないし、ラウンジも思ったより良かったけど、やっぱりパークかな」と妻。改装され広くなったラウンジは、料理もお酒も種類が豊富だったけれど、スタッフは旧来からの硬めのサービス。…やっぱりパークだね。
という訳で、リージェンシーをチェックアウトしたその足で(と言ってもタクシーだけど)パークに向かったお気楽な2人。ハイアットからハイアットへ、まるでホテルホッピング♬目指すは「ピークラウンジ」の大人気のアフフタヌーンティ。もちろん単なる思い付きではなく、事前に予約し、友人を誘っての参戦だ。ベルに荷物を預け、相変わらずワクワク度を上げるラグジュアリー感満載のエレベーターで41階へ向かう。
エレベーターを降りるとそこが目指す「ピークラウンジ」。目の前にはこんもりとした植栽、高いガラスの天井や三方の窓から射す自然光で溢れ、ビルの内部とは思えない開放的な空間だ。人気のアフタヌーンティは三段のトレーに乗ったスイーツやサンドウィッチ、スコーン以外に、無限(∞)トレーサービスが付いてくる。これが凄い。何種類ものデザートやフィンガーフードが、スタッフの笑顔と共に何度でもやって来るのだ。
さらに、ちょうどヴァレンタインの時期限定で、ハート型のスコーンなどのスペシャルスイーツが付いて、お値段変わらずドリンク込み、おかわり自由で、何と、5,000円でのご提供です!とTVショッピングもビックリの設定なのだ。これには同行した友人、スイーツ番長の役員秘書も「えぇ〜っ!そうなの?凄いね、ホントにそんな料金で良いの?だからこんな人気なんだね」と感激。確かに採算は合うの?というサービスだ。
そして、最大の魅力はこのホテルのスタッフ。なぜ同じハイアット グループの中でもこんなに違うんだろうという、柔らかでフレンドリーな接客。このラウンジのスタッフもまさしく典型的なパークハイアットのスマートでカジュアルで絶妙な距離感。写真を撮っても良いかと尋ねても、「えぇ、もちろんです♬」と笑顔で応えてくれる。妻にも撮るよ!と言うと、最近お気に入りのミヤさんポーズでハート型のスコーンをかざす。
のんびりとシャンパンを飲みながら、やっぱりパークハイアットがホームだなぁと独りごつ休日の午後だった。
お気楽夫婦のホテル選びにはジンクスがあった。開業まもないホテルには宿泊してはいけない、というのがそれだ。今やお気楽夫婦のお気に入り度No.1の「パークハイアット東京」でさえ、開業当時のバタバタは(すっかり2人の間では笑い話になっているが)凄かった。そのジンクスを破ってまでそのホテルに宿泊しようとしたのは、「IHGリワーズクラブ」というホテルグループの特典を使いたかったからだった。
「IHG」とは、インターコンチネンタルホテルズグループの略。旗艦ホテルのインターコンチネンタルホテル(以下インタコ)、リージェント、そしてホリデー・インやクラウンプラザ等4,500軒以上のホテルを有する世界的なホテルチェーンだ。つまり、スモール&ラグジュアリーなホテルを好むホテルジャンキーな妻にとっては選択の対象外。これまでも横浜や竹芝のインタコには宿泊したものの、会員になる程ではなかった。
ところが、唯一のお気に入りだった香港のリージェント(今はまだインタコ)が名称を戻し復活すると聞き、2019年の夏に宿泊する計画を立て、リワーズクラブに入会したのだった。結果的にはデモの影響で行先を変更してしまい、宿泊はできなかったのだが、その際に利用しようとした特典が、年に1回だけ1泊の料金で2泊できる、つまり半額で宿泊できるというもの。そこで香港で使えなかった特典を国内で使う作戦に変更した。
宿泊したのは、「インターコンチネンタル横浜Pier8」という2019年10月にOPENしたばかりのホテルだ。みなとみらいのお隣にできた「横浜ハンマーヘッド」という客船ターミナルを核とした複合施設という立地。三方を海に囲まれた埠頭の敷地一杯に建っているから、部屋から海がやたらと近い。航海はしないけれど、豪華客船に乗船した気分。*窓際のグローブ・トロッターのスーツケースの内部はミニバー!航海気分だ♬
窓の外にはみなとみらいの豪華な景色が広がる。姉妹ホテル「ヨコハマ グランドインターコンチネンタル ホテル」や、「横浜ランドマークタワー」などが一望でき、巨大な観覧車「コスモクロック21」が夜景に彩りを添える。「ずっと眺めても飽きないねぇ」黄昏時の僅かな時間でも、空と街の灯りとそれを映す海の色が変わっていく。水上バスが桟橋に着くと、海に映る街の灯りが揺れる。時間がゆったり流れていく。
お気楽夫婦が宿泊した客室のタイプはクラブダブル シティビュー。もちろんお目当てのクラブラウンジのアクセス付きだ。夕刻のカクテルタイムにラウンジを訪ねると、すでに料理やドリンクがセッティングされ、2人を手招きしていた。コールドミールのコーナーは豪華で艶やかで、プレゼンテーションが実に巧み。美しい料理たちを眺めているだけで満足感が溢れ、笑みが溢れる。もちろん食べたけれど。
特筆すべきは、モエ・エ・シャンドンも含めたワインやアルコール類のフリーフロー。実に酒の種類が豊富。ずっとモエを飲み続ける私には余り関係ないけれど。そして、オーダー式のホットミール(4種)セットが供されること。「これは凄いね。インタコちょっと舐めてたね」と実はこのホテルは余り期待していなかったという(ハイアット 好きの)妻も素直に認める。これは香港のグランドハイアット級のラウンジサービスだ。
ラウンジの広さ、インテリアや家具調度のセンス、料理やアルコールの質と量、どれも高得点。「あとはスコットのようなサービスマンがいるかどうかだね」と、香港のグランドハイアットの名物サービスマンの名をあげる妻。確かに、サービスは硬めで慇懃。「モアシャンパン?」とスコットのように注ぎに来る気配はない(笑)。わんこシャンパンも客がスタッフに催促して飲むのでは、その魅力も半減してしまう。惜しい。
ラウンジでいただく朝食のメニューにも驚かされた。ビュフェ形式のメニューも充分豊富で、サラダ野菜のシャキシャキ度(妻は野菜の鮮度に厳しい)も、デニッシュのカリカリ感も合格。ダメ押しがオーダーメニューでステーキが選べること。それも実に美味しいのだ。朝ステーキ初体験。これを午前中のジム三昧で消費せねば。ちなみにジムはコンパクトながら空いていて、使い勝手が良い。2人でほぼ独占状態。合格。
アフタヌーンティーも素晴らしい。本格的なセットが無料。甘いものを余り食べない2人が、結局初日と最終日の2回、完食してしまった(汗)。それができるのも会員特典の16時までのレイトチェックアウト!これも凄い。そして満足の2泊3日を過ごし、来年もまた来なきゃね、と言っていたチェックアウト時にその悲劇は起きた。チェックアウトの時間が異常にかかり、理由も告げられず待たされること20分以上!残念!
…果たして、次回の滞在はありか、なしか?
春節に香港に行こう!そう言って実際に香港に行ってしまったのは3年前のことだった。春節とは、その休暇中に中国人たちが大挙して故郷に帰ったり、世界中に旅することですっかり有名になった旧正月のこと。今年はさらに新型なんちゃらウィルスで話題になってしまったけれど。日本は沖縄以外では特にお祝いしないけれど、ベトナム、マレーシア、シンガポール等の各国でもチャイニーズ・ニューイヤーとして、休日になる。
沖縄(糸満などの海人の街でお祝いをする)以外の日本国内で春節を祝うのは、三大中華街がある長崎、神戸、そして横浜だ。長崎はランタンフェスティバル、神戸は春節祭という名前でイベントが行われる。そこで、香港には行けないまでも、横浜中華街に行こう!」と、今年の春節は横浜へ。横浜に新しくOPENしたホテル(後日詳細)にチェックインし、さっそく夜更の中華街、妖しく美しくライトアップされた横濱媽祖廟へ。
すると偶然にも新年の正式参拝(?)の人々が!廟に旗袍に襷姿の華僑の皆さんが大勢集まり、正に爆竹が鳴らされようと準備しているところだった。元々中華街は華僑が作った街。地元に根付いた新年の儀式に立ち会えたことに興奮する2人。華僑の間で受け継がれているのであろう伝統行事は、150年の歴史を持つ横浜中華街ならでは。そして、2006年に開廟したこの媽祖廟や、10基の中華門など街が整備されたからこそ。
そしてお隣の山下町公園では、女子高生くらいの女性が2人で獅子舞の練習中。連日この公園で行われる「春節娯楽表演」と銘打った中国伝統芸能を披露するイベントの練習だろう。お囃子の音に合わせてリズミカルに踊る若い2人は、獅子頭を被っていないから、演じている際の真剣な表情や、演じ終わった後に笑顔が見られたり、とても親近感が湧き、本番も頑張れ!と応援したくなる。*2人とも可愛かったしね♬
翌日、獅子舞観たさに改めて中華街を再訪。中華街大通り、市場通り、関帝廟通りと街を散策。今の中華街は食べ放題や食べ歩きのファーストフードの店が多くなってしまい、すっかりテーマパークのよう。街が生き残るために変わり続けることは必要だが、以前の(勝手な言い分であり、昔は良かった…という老人のようであり、以前とは“いつ”を指すのかは微妙な言い方だが)異国情緒溢れる落ち着いた街並みが好きだった。
それでもやっぱり、龍踊を模した提灯や通りに連なる提灯が夕闇に輝き、街のあちこちから爆竹の音やらお囃子の音色が聞こえてくると、心が躍る。太鼓とシンバルの音とリズムに導かれ、音のする方に音のする方にと路地を急ぐお気楽夫婦。するとある店の前に急に人混みが現れ、真っ赤なスタジアムコートやトレーナー姿の人々が目立つようになる。「獅子舞だ!」妻がまるで小さな子供のように顔を綻ばせる。
赤いトレーナーの背には「YOKOHAMA YAMATE CHINESE SCHOOL」の文字。横浜山手中華学校の生徒たちだ。周囲のグリーンのスタッフジャンバーの背には「横浜中華学校校友会国術団」とある。中華街にもう1つある「横浜中華学院」と合わせ、生徒たちとOBたちが演じるのが横浜中華街の獅子舞だ。日本の獅子舞と違い、派手でポップな出で立ち。中には前足、後ろ足の2人。そして大きな違いがその獅子の動きだ。
日本の獅子舞は歌舞伎の見栄のような所作でポーズを決め、元気に育つようにと幼い子供の頭をカプっと噛む(地域によって違いあり)が、中華獅子舞は雑技団のようなアクロバティックな動きが特徴。踊りながら店の中を巡り、最後に店の前で立ち上がる。後ろから見ていると、ホントに獅子が立ち上がっているように見えるが、中で前足の男の子が後ろ足の子の上に肩車、そしてさらに肩の上に立ち上がるのだ。ちょっと凄い技。
「5色全制覇したね!」妻が興奮気味に目を輝かせる。街のあちこちを巡り、黄、赤、青などの獅子舞を追い掛けた成果だ。「来年は龍舞とか、練習してた女の子たちがやるような獅子舞とか、ステージも観に来たいね♬」と、すっかり春節の雰囲気に魅了された様子。元々の中華料理好き、香港好きの妻の嗜好の延長線上にあるイベントなのだろう。香港に行こう!と言われるよりお手軽。では来年の春節も、横浜で。