食材+調理+サービス+α=絶品中華「SILIN 火龍園」六本木

SILIN火龍園くるみ節毎に通いたい店がある。季節毎の食材を味わえる店であり、ちょっとゼータクかもしれないけれど、年に数回は行っておきたい店。お気楽夫婦にとって、「用賀 本城」であり、「SILIN火龍園」であり、「銀座天一」の揚げ場であり、浜松「弁いち」のカウンタ席。「SILINにも、そろそろ行かなきゃね」妻がそう言ったのはサクラの花の頃。予約の電話を入れたところ、あいにく満席。残念。そしてその後は忙しさに追われる怒濤の日々が続いた。ようやく妻の仕事が一段落。「さすがにSILIN行っておかなきゃね」と妻。ある日の夜、スカッシュ仲間の秘書嬢を誘い、久しぶりのSILIN訪問。

ミズイカのスパイス炒め白身のサクサク揚げ年のクリスマス以来だねぇ。こんなに間を空けちゃいけないね」店に向かいながら妻が呟く。珍しくテンションが高い。それだけこの店が好きなのだ。店に入るとスタッフが笑顔で迎えてくれる、が…「お連れ様からお電話がありまして、15分ほど遅れるので先に始めて欲しいとのことです。それに携帯電話を忘れてしまったとか…」そんなに丁寧に伝言を伝える店も珍しいけれど、そんな伝言を残すのは実に秘書嬢らしい。2人だけでビールと普耳(プーアール)茶で乾杯。シュガーコーティングのクルミのをつまみながら、のんびりメニューを眺めていると「ごめんねぇ」と、秘書嬢が登場。「ケータイの番号って、覚えてないから店にしか掛けられなかったの」なるほど。相互に適切な伝言。

白貝炒め野菜の海老みそ炒めンバーが揃ったところで海鮮をチョイス。ミズイカのスパイス炒め、白身魚のサクサク揚げ、白貝はブラックビーンズ炒めで。「うわっ、美味しっ♡この店はほんっとに美味しいよねぇ♫」新鮮な食材を活かしたあっさり系の味付けに秘書嬢もご満悦。食材本来の味を最大限に引き出す調理が見事だ。この店自慢のXO醤も相変わらず絶品だし、料理を出すタイミングも絶妙で、サービスも適切で心地良い。ところで支配人の根本さんの姿が見えない。所在を尋ねるとその日はお休みとのこと。残念。自ら美味しいモノが大好きで、香港が大好きな彼との会話を楽しみながら食す絶品中華を味わいたかった。

食後のアイス本さんから薦められると安心して食べられるし、プラスαの美味しさがあるよね」妻も同様の思いらしい。とは言え、「野菜の海老みそ炒め」もデザートの杏仁豆腐やジュレも、十二分に美味しい。根本さんがいなくとも充分柔らかな接客は得られる。この店には、新鮮な食材、食材を活かす調理、そして心地良く過不足のないサービスがある。充分に美味しい料理の方程式が整っている。そして、そこに根本さんとの会話のキャッチボールが加わると、食事の楽しさが増す。料理や食材のちょっとした情報が美味しさに深みを作る。美味しい料理は、調理人だけではなく、店全体が作るということを実感。「今日はちょっと残念だったけど、根本さんがいる時にまた来なくちゃね♫」妻のことばがポジティブに響く。次は盛夏の頃、水花火の時期に。

■食いしん坊夫婦の御用達 SILIN 火龍園

弟の冬支度「最後の仕事」

GUINNESS方公務員だった弟は、生まれた街で両親と暮らしてきた。地域でのネットワークを広げた彼は、その輪の中から伴侶を見つけ、3人の子供を授かった。病床の祖母を看取り、60歳で倒れて以来障害を持った母を、父と妻と共に懸命に介護した。そして、母が逝き、長女が巣立った後に冬支度を始めた。人生の終いに向かい、最後までポジティブに活きようと選んだ仕事は、スポーツバーの経営だった。この春、早期退職に応募し、割増でもらった退職金で開業するという。住宅ローンを完済し、子供の教育資金を妻に預け、その残額が開業資金になるという。彼の選択に驚き、それ以上に喜んだ。彼の選択そのものにというよりは、彼の選択を実現可能にした伴侶の存在に。

んなある日、都内で開催される同窓会に参加するために上京すると、弟から連絡。開業の参考になるバーを案内して欲しいとのこと。任せておきたまいっ!きっと、こんな時のために、君の兄は今まで飲んだくれていたのさ。頭の中の店舗リストを整理する。効率的に、一晩でいかに多くの店に行くか。綿密な構想と、その日のノリで変更可能な柔軟な計画を立てた。

Bar Livreが到着する金曜日の昼下がり。自由が丘の南口の緑道では「マリ・クレール・フェス」開催中。快晴。本部テントには、ワインを片手に既にご機嫌状態の商店街の重鎮たち。「IGAさん、仕事はまだ終わらないの?一緒に飲もうよ」はい、ありがとうございます。でも、まだ明るいし…ん?これだっ!事前に伝えていた待ち合わせ場所と時間を変更して、自由が丘で弟を迎える。弟のセカンド・プランはコミュニティFMの開局。そんな彼に街を愛する地域の商店主たちの姿を見てもらう。街を元気にする“ダンナ衆”を紹介。まずはビールで退職祝いの乾杯。「良いイベントだし、良い街だねぇ」自由が丘の街を案内しつつ、スポーツバー1軒め訪問。商店街の新理事長に紹介してもらった「SPACE JOY」。2階のスポーツバーは、日中はキッズスペースとして親子向けの営業。地下はゴルフレンジ。「ふぅ〜ん、このアイディアも良いね」

いて恵比寿へ。都内のスポーツバーの先駆け「The FooTNiK恵比寿」へ。弟はギネス、私は白ワインで2度目の乾杯。ひとつの店で1杯。それがその日の約束。酔わずに多くの店を見て廻る。それがその日のミッション。大型ディスプレーを眺め、キャッシュ・オン・デリバリのオペレーションをチェック。「52インチぐらいのモニターを入れようと思っているんだけど」話をする程に彼の計画が明らかになる。3軒目は「ティオ・デ・ダンジョウ・バル」で立ち飲みバルの雰囲気を味わってもらう。そして食事はこの店でと決めていた。「この店の料理はどれもオシャレで美味しいね」つい2杯目を飲んでしまう2人。

して4軒目は「OU」。オーセンティックなバーであり、内装の参考にはならないだろうけど、会社員を辞め独りバーを始めたオーナーの話を聞かせたかった。開店間もない店内でじっくりと話を伺う。「人の繋がりで、こんな素人の私も何とか10年やってこられましたけどね」「休日に他の店に行くとほっとするんです。あぁ、プロの店だなぁって」「今がいちばん楽しみで、たいへんな時期でしょう。体重は落ちましたね、私は…」私も普段は聞けない話を聞くことができた。「開店されたら連絡ください。機会があったら伺います」名刺をいただき店を出る。「良い店だね」弟に笑みが零れる。

5軒目は明大前にあるスポーツバー「Cafe Bar LIVRE」。弟の構想に最も近い店だ。バーカウンタの他にいくつかのテーブル席。普段はカウンタ中心の営業、サッカーの試合がある時には立ち見も出るらしい。飲み物をオーダーした後、他に客がいないのを幸いにオーナーに話しかける。「スポーツバーは、なかなか厳しいっすよ。週末のこの時間にこんな感じです」とは言え、近未来の同業のよしみか業界の細部まで情報を教えてくれる。「うん、かなり参考になった」常連客でカウンタが埋まった頃合いを見て店を出る。

6軒目は地元烏山のベルギービールが飲めるダイニングバー「soundteria」。この店でお気楽妻と合流。「どうでした?あれ、2人とも意外に酔っぱらってないね」「3時過ぎからず〜っと飲んでたんだけどね」満足そうな笑みの弟。「市役所を辞めてから、同僚たちが毎晩のようにあちこちの店で俺を探してくれてたらしくてね。街のバーに修行に出てるんじゃないかって」そう言って笑う彼は、不安と期待を纏いながらも心から嬉しそう。酒の文化を教えてもらったバーのママさんのマインドを、自分なりに次の世代に伝えたいのだという。バーのマスターとして、オーナーとして、街を元気にしたいのだという。

いはなさそうだ。彼の覚悟も伝わった。こんな夜の酒はいちだんと旨い。「だからって飲み過ぎだよ」妻のことばも普段より柔らかい。

やっぱりパンが好き♡「Kepo bagles」上北沢

Kepo bagles店先Kepobagles看板勤途中の車窓に気になる店があった。京王線の上北沢駅。お気楽夫婦が利用する急行や通勤快速では通過してしまう、小さな駅。その駅の近く、線路際に小さな小さな店はあった。店の名前は「Kepo bagles」。名前の通り、ベーグルの(ほぼ)専門店。ベーグル生地を使ったパンもあるけれど、小さな店に並ぶのはいろんな顔つきのベーグルたち。パン好きの妻が、こんな店を放っておく訳がない。ある日の朝、「ベーグル買いに行こう!」と元気に宣言したのだった。

ベーグルやさんベーグルたちを降りて店に向かう。白いタイル、白い大きな看板、白く塗った木枠の窓。清潔感溢れる外観。好感度良し。大きなガラス窓から店内を覗くと先客あり。店の前でしばし待つ。数人入ったらもう身動きが取れないぐらいの店内。「うぅ〜、旨そうだぁ♡」妻の目が♡になる。妻が好きなパンを大別すれば、(カテゴリ分けがアバウトではあるが)フランスパン>ベーグル>イギリスパンなどの食パン>…ヴィエノワズリー(クロワッサンなどの菓子パン)となる。すなわち、バターなどの脂分が少ないパンが好物ということ。

ぶどうのベーグル黒ごまのベーグルターを使わない、独特の食感のベーグルはニューヨーク名物。そして妻の好物。元々、東欧系ユダヤ人がアメリカに持ち込んだという由来。この店のベーグルは、北米産小麦とイーストを使ったアメリカ系ベーグルと、国産小麦と天然酵母を使った和ベーグルの2系列がある。皮がぱりっ、中身がしっとりがニューヨークベーグル。皮むっちり、中身もっちりが和ベーグルだという。どれどれ。見比べている内に、いつの間にか妻は大量にベーグルをトレーに入れている。「ベーグルは冷凍できるからね」と言い訳をしながら。

カボチャとアーモンドのベーグル白ごまのベーグルが選んだのは、和ベーグル陣営からは、いちぢくくるみ、ごまさつ(黒ごまとさつまいも)。チーム・ニューヨークベーグルからは、プレーン、セサミ(白ごま)など、合計6ヶ!「嬉しいよぉ」涙ぐまんばかり。家に戻ってさっそくランチで試食。「やっぱりニューヨークベーグルが好きかなぁ♫」♡の目のままで妻が感想を零す。んん〜、正直に言えば私はフランスパンの方が好き。かりかりのクラストで口の中が切れるぐらいのサンドィッチを齧りながら、白ワインなんぞを飲むのが好み。「まぁ、確かに酒には余り合わないかもね」アル中の夫を持つ妻は鷹揚。

ゃあ、私が全部食べちゃおうかなぁ♫」どうぞ、どうぞ。妻はやっぱりパンが好き。

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SINCE 1.May 2005