横濱名物シウマイ(シューマイではなく、シウマイ)とシウマイ弁当と言えば、崎陽軒。一度味わうと癖になるその美味しさでファンが多く、全国各地で販売されている。都内ならデパートやスーパーなどの大型店の食品売場。けれど、お膝元の神奈川県になると主要駅の売店でも簡単に手に入る。いわゆる駅弁としてだけではなく、ごく当たり前に、お土産やお弁当として。なにしろ、地下鉄や私鉄駅の売店でも売っており、横浜駅近辺だけでも15カ所も売店がある。横浜駅西口と東口を結ぶ巨大なコンコース、京浜急行や京浜東北線などのホーム、横浜そごうや髙島屋などの大型店などなど。横浜の街を歩けば崎陽軒の看板に当たると言っても良い程。なのに、横浜駅東口駅前にある崎陽軒本店には、中国料理の「嘉宮」をはじめ、トラットリア「イルサッジオ」、ビアレストラン「アリババ」など複数のレストランがあることは(シウマイほどには)知られていない。
崎陽軒と言えば、ひょうちゃん。漫画家の横山隆一さんがシウマイの醤油入れに目鼻を付けたのがはじまりらしい。崎陽軒本店の売店には大量の「ひょうちゃんコレクション」が飾られている。横濱名物のシウマイには欠かせない。…ところで、バースデー企画で横浜を訪れたお気楽夫婦、2日めの夕食は横浜に住むNYC帰りの友人夫妻と食事をするという計画。揃って訪れたのは崎陽軒 嘉宮。食事を終えたら友人夫妻宅にお邪魔して「ブリッジ(正確にはコントラクト ブリッジ)」というゲームを楽しむ予定のため、中華街よりも交通の便の良い店を選んだ結果。それに、横浜出身の友人(妻)、横浜の某国立大学を卒業した友人(夫)は、崎陽軒本店も良く知っており、シウマイ弁当も好物。「冷たいままのシウマイが旨いんですよね」「あのタケノコがまた美味しいのよねぇ」シウマイ弁当談義に花が咲き、冷たいシウマイが苦手な妻だけが取り残される。

「シウマイも良いけど、崎陽軒本店オリジナル蒸し焼売セットっていうメニューもあるよ♬」温かなシューマイなら好物の妻が攻勢に転じる。「良いですねぇ」「前にブログで紹介してた合鴨の釜焼きローストも!」嘉宮は広東料理をベースにした本格中華料理の店。広東式北京ダック(皮と一緒に肉も食べる)などの焼物が名物。香港の名店と比べても遜色がないばかりか、日本では珍しい甘酸っぱい梅醤ソース付き。これが嬉しい。「シウマイも美味しいけど、このシューマイもすっごい美味しいね」「合鴨の皮がカリカリして旨ぁい。で、このソースが良いね」地元横浜の友人夫妻も絶賛。「落ち着いていて良い店ですね」接待慣れしている友人(夫)の眼鏡にも適ったようだ。

「中華街も良いけど、この店もウチから近くて良いね」「レタスチャーハンもパラパラで美味しいし、ボリュームも充分だよね」横浜在住の友人夫妻はご飯好き。“ご飯の日”と称するご飯中心の食事の際には1食に3合は食べるという2人。気に入ってもらって良かった良かった。「そう言えば中華街はちょっと変わったね」妻が2人に報告。「豚まんのチェーン店と占いの店が増えてたし、甘栗の呼び込みが凄かったぁ。甘栗の押し売りに注意なんて、笑っちゃう立て看板もあったしね」繊細なデザートを食べながら中華街談義。街の品格が失われる顔つきの店が増えると、街の風景は壊れる。その点、崎陽軒本店の品のある佇まい、店作りは好感が持てる。トイレのドアのデザインもちょっと嬉しくなる意匠。
「楽しかったし、美味しかったね♬」夕食後、友人夫妻のお宅にお邪魔し、ブリッジ三昧。深夜に帰宅したお気楽夫婦。妻はずっとご機嫌。けれど、確かこの企画は私の誕生日のお祝いだったはず。「気にしない、気にしない。楽しかったでしょ♪」誰がためにホテルは…。
♫よこはま
たそがれ ホテルの小部屋ぁ〜♬ ♪街の灯りがとてもきれいねヨコハマ ブルーライト ヨコハマァ〜♫ 古めの曲を口ずさむ。作詞作曲が山口洋子&平尾昌晃、橋本淳&筒美京平という、いずれも昭和の名曲であり、横浜のご当地ソングの定番。2つの楽曲から広がるイメージは、港、酒、男と女、イルミネーション。昭和の横浜は、横浜ではなく「よこはま」であり「ヨコハマ」。そして平成に入り、みなとみらいの再開発を経て、横浜はYOKOHAMAになった。日本一の高さを誇るランドマークタワー、帆船日本丸を取り込んだ日本丸メモリアルパーク、赤煉瓦倉庫の再生による赤レンガパーク、みなとみらい線など、現在も継続する巨大な街づくりである横浜MM21プロジェクトは、伝統と未来を融合する港町横浜のイメージを決定付けた。
2月のある週末、お気楽夫婦はYOKOHAMAに向かった。毎年恒例のMyバースデー企画、都内近郊ホテル宿泊だ。都内の主要ホテルも一巡し、今年はお気に入りホテルであるパンパシフィック横浜をチョイス。2007年以来3度目の宿泊。今回の企画はひたすら部屋でのんびりするために、ビューバスの付いた「ラグジュアリーオーシャンツイン ベイブリッジビュー」というやたら長い名前の部屋を選んだ。コスモクロック(観覧車)や赤煉瓦倉庫、横浜港、ベイブリッジ、インタコを臨む絶好のロケーション。みなとみらい駅から直結のこのホテルの魅力は、何よりもその立地条件にある。レストラン、ショップなどの街の施設がホテルと融合しており、ホテルの付属施設の如く利用できる。例えば今回は、成城石井でシャンパンとおつまみを買込み、インルームダイニング用にポンパドールでパンを購入。朝食は朝マック、ランチはスタバのラップサンド。ラグジュアリーとカジュアルが融合するホテルライフ。

夕暮れの景色をゆったりと楽しみながらバスタブに浸かり、バルコニーで湯上がりの身体を冷ます。ルームサービスで、オードブル盛り合せ、シーザーサラダ、ホタテのフライなどという健康的なメニューの食事を取り、持ち込んだシャンパンとジンジャーエールで乾杯。やはり持ち込んだポンパドールのバラの花を象ったフランスパンが絶妙に美味しい。お腹がふくれたらソファで寛ぎながら本を読む。そしてまた街の灯りを眺めながらお風呂に入り、残ったシャンパンを飲み干す。ホテルの機能と、街の機能(ただの持ち込みですけれど)をバランス良く活用する。ひたすらのんびりと過ごすには、55㎡という部屋はコンパクトながらも充分な広さ。

翌朝、妻を起こさないように、独りこっそりとバスルームに忍び込む。冬の青い空が大きな窓に広がる。これは朝風呂を楽しまない手はない。眩しく爽やかな休日の朝の日射しを浴びながら、半身浴の体勢でひたすら汗を流し、前日に読み残した三崎亜記の『失われた町』を読む。目の前にはコスモクロックの巨大な姿。遠くにはベイブリッジ。左手にはヨットの帆を模した独特のフォルムのインターコンチの白い壁が青空に映える。町が消えてしまうというSF的な物語でありながら、現実と地続きであるような、不思議な三崎ワールドを楽しむにはぴったりの場所。「良い天気だねぇ♬気持良いね♪」妻もようやく起きてきた。
予定を変更して、夕方までここでお風呂に浸かってようか。その日はホテルの窓の下に見える日帰り温泉「万葉倶楽部」に行くつもりだったお気楽夫婦。「良いねぇ♬そうしようか」ホテル好きの妻にとっては願ってもない私の提案。否定することはないだろうという私の読みは当たった。「それに、ここだったらビール飲みながらお風呂に入れるしね」むむっ!行動パターンを読まれているのは私だった。
■「お気に入りホテルへ」パン パシフィック 横浜ベイホテル東急