餃子天国♪餃子地獄?「スカッシュチームカップ2010」

健太ギョーザ子が好き。それも焼餃子。もう、無条件に好き。餃子だけ3人前!みたいな食べ方も大歓迎。きりっと冷えたビールと焼餃子さえあれば満足。私にとって餃子は中華料理ではなく、独立したひとつの料理ジャンル。それに中国には日本のような焼餃子がないから、厳密には中華料理ではないという言い方もできる。日本のような焼餃子は「日式餃子」と呼ばれて中国に逆輸入されている。中国の東北地方の餃子は水餃子。それも皮が厚くもっちりとした、主食のように食べるもの。点心で食べられる餃子は蒸し餃子がほとんど。それぞれ美味しいけれど、いずれも私にとっては別の料理。思えば、日本は海外の料理を独自に進化させた例が多い。明太子や納豆のパスタなどはその典型。かつてスパゲティと言えばナポリタンという時代があったのも日本独自。考えてみたらアンパンもそうだし、カレーライスも、カツ丼も、すき焼きも…。

揚げギョーザころで餃子と言えば、宇都宮だ。餃子専門店が多く、餃子だけを堂々と食べることができる。市内には餃子を食べられる店はが80軒もあるという。餃子好きにとっては嬉しい街だ。「宇都宮でまた団体戦があるんですけど、また皆で一緒に出ませんか」お気楽夫婦のスカッシュコーチ、山ちゃんからお誘いがあった。試合に出ることはともかく、皆で食べる餃子が魅惑的。出場しよう。土曜日に日帰り。1日スカッシュ三昧。試合が終わったら餃子を食べて、帰りの電車でまた宴会だ!ところが、日程の都合で土日連続で出場となってしまった。うぅ〜む。それなら土曜日にもたっぷり餃子が食べられるではないか。望むところだ。何をしに行くのやらの本末転倒のスカッシュチームカップの初日。監督兼プレーヤーの私の采配が冴え、出場チーム18チームでの予選リーグは1位通過。あれれ?決勝トーナメントは4位という好成績。あれれれれ?ウチのチームって微妙に強いの?

健太看板4位健闘に乾杯!」微妙な順位でもビールは旨い。餃子も旨い。初日だけで帰ってしまうチームメイトの秘書嬢を囲み、宇都宮餃子館が経営する「ぎょうざの健太」で祝杯を上げるお気楽夫婦チーム。ぎょうざの健太は、餃子の種類が豊富なばかりか、餃子以外のメニューも充実。餃子専門店と違い、長居ができる店。翌日曜だけ出場するメンバーの到着を待ちながら餃子をじっくりと味わう。焼き餃子は看板メニューの健太餃子以外に、スタミナ健太餃子、シソ餃子、どんこ椎茸餃子、エビ餃子などバラエティ豊か。「美味しいぃ♪」「シソの香りが良いね」「スタミナ餃子が旨いっすね」「揚げ餃子のチーズ味も良いですね」1日走り回った身体に、ビールが吸い込まれ、餃子が飲み込まれて行く。幸せだぁ。まさしく餃子天国♪たっぷり食べた後に、後発組が到着。餃子をさらに追加。「やっぱり旨いっすねぇ」満腹のお腹に餃子が追加される。うぐっ。餃子地獄?

はようございまぁす♪あれ?IGAさん、顔赤いっすよ」翌日、チームメイトたちに指摘されるまでもなく、立派な、堂々たる2日酔い。前夜、宿に帰った後シャワーを浴び、独り酒盛り。しっかりと残る酒とギョーザ。うげげ。大会2日目、出場21チームと前日より増え、レベルも高い。とは言うものの、前日に続きチームは予選リーグを2位で通過し、なんとか上位トーナメント進出。しかし、最後はふらふらになりながらも全敗。結果は上位11チーム中最下位。まぁ、順当な結果。同じクラブのチームはそれぞれ上位トーナメント優勝、下位トーナメント優勝!素晴らしい!そして、表彰式の後、シャワーや着替えもそこそこに駅に走る用賀チーム、総勢10人。目的は恒例の湘南新宿ラインのグリーン車宴会。慌ただしくつまみとビールを買込んで列車に飛び乗る。2チームの優勝と前日の4位に乾杯!おうっ!時間がなかったのに、餃子をテイクアウトしてきた猛者が。社内に餃子の香りが充満する。最後まで餃子を味わいつつ餃子天国、宇都宮を後にする。「また来年、出場しましょう!」もちろんだ!また懲りずに美味しい餃子を食べるために。

香る文章、美味しい小説『食堂かたつむり』小川糸

食堂かたつむりった小説に出会ってしまった。タイトルではどんな内容か分からない。なにしろ「食堂かたつむり」だ。とぼけたタイトルだ。エスカルゴが自慢の店なのか。オーダーしてから料理が運ばれてくるまで延々と時間が掛るのか(それはかなり困るけれど)。そもそも食堂が舞台の小説なのか。好奇心がそそられる。 味わいのあるヘタウマ系の表紙の絵。柔らかな3つの色の真ん中に赤いセーターを着た女性。色のバランスが良い。好印象。小川糸という作者の柔らかな名前。読んだことがない作者。本名なのか。外れてしまうリスクもある。それでも、その本の佇まいに惹かれ手に取ってみた。1ページ目をさっと読む。よし。発見してから購入を決意するまでの時間は約90秒。私の本選びは直感を優先する。そして私の直感は当たった。けれど、何より読み始めると、もっと困ったことになった。とてもとても、お腹が空いてくるのだ。

えばこんな文章。主人公、食堂かたつむりのオーナー、倫子ちゃんが子羊のローストを作る場面だ。「…背中の肉を使い、マスタードをたっぷり塗った肉の上からパン粉で包んでアーモンドオイルでローストする。パン粉には、細かく刻んだニンニクとルッコラが混ざっている。羊は脂の融点が低いので後味がさっぱりし、いくら口に入れて噛んでも、飲み下した数秒後にはふぅっとそよ風にさらわれるように姿を消してしまう。おなかがきつくなっていても、すんなりと入ってしまうのだ」ほぉら、美味しそうでしょう。それは、食べる側ではなく、作る側の表現。素材を慈しみ、食べてもらう人に心を込め、食べる側の気持になって料理を作り、サーブする人のことば。…食べに行きたい。今すぐにでも、食堂かたつむりに。

ん、確かにこの料理は旨そうだね♫」子羊のローストが大好きな妻が呟く。「それに、地産地消なんだね」そうなのだ。思わず地産地消のレストランのはしり、山形県鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」が思い浮かぶ。ちなみに作者の小川糸は、山形県出身。そして主人公の倫子ちゃんは、インド人の恋人に突然(一切の家財道具と共に)去られてしまい、2人で住んでいた東京から北に向かって長距離バスで郷里に帰る。恋と共に、声も失ってしまう。そして、母に借りた物置を改造して作った食堂で、地元の食材を使い、1日1組だけのお客さまに心を込めて料理を作る。そこには美味しそうな料理、美味しいものを食べる人たちの幸せそうな姿が、実にいきいきと描写され、何とも言えない料理の良い香りが漂う。食堂かたつむりの居心地の良さそうな雰囲気が目の前に現れる。料理の描写が文章の中に香ってくる。実に幸せそうな、美味しそうな物語だ。

の物語が、映画になるという。柴咲コウが主人公の倫子ちゃんを演じるという。ほぉ。この記事を書くまで知らなかったのだけれど、50万部を超えるベストセラーなのだそうだ。なるほど。作者の小川糸は、アミューズに所属するアーティスト、作詞家の春嵐でもあるらしい。ほっほう。「でも、映画はB級っぽいね」と妻。はいはい、分かりました。私独りで観に行きますよ。「良いよ、分かったよ。一緒に行こうね♪」妻が好きになれそうもない、誰1人として殺されない、それどころか料理で人が幸せになり、願いが叶ってしまう、美味しい料理たちの物語。映画は2月6日公開、もちろん未評価。とりあえず、原作はおススメです。

どこから読んでも幸福気分『ミーナの行進』小川洋子

ミーナの行進ログの記事を書き始めて5年弱。ある人は「ホテルの紹介が楽しみ♪」と言い、ある人は「美味しそうな店が多いですよね♫」と告げ、ある人は「あの本、良かったですよね」と言ってくれる。嬉しい限り。そんな中に、私の本の紹介を楽しみにしてくれている(らしい)親子がいる。妻の友人“ひーちゃん”と、一度だけコメントを寄せてくれた“ひーちゃんの息子”さん。私が本を読み、ブログで紹介しようと思うとき、頭の隅にはその2人のことが浮かんでいる。素人の書く拙い紹介。どれだけその作品の素晴らしさが伝わるか不安に思いながら、それでも楽しみにしながら、お気楽に書き綴る。小川洋子の『ミーナの行進』を読み終え、やはり読書好きの親子のことを思い浮かべた。2人にぜひ読んで欲しい。そして、自分たちに子供がいたらこの本を読んで欲しい、そして大人になって読み返して欲しい、そう思いながら。

人公の1人、小学6年生のミーナは身体が弱く、外で元気に遊べないこともあり、読書が大好き。ミュンヘンオリンピックの年、事情があり同居することになったもう1人の主人公、ひとつ年上の朋子。朋子に頼み、街の図書館に本を借りに行ってもらう。そこで出会う“とっくりさん”と朋子が密かに名付けたちょっと素敵な男性司書。そこで借りた数々の本に対するミーナの読書感想が、短いことばで、的確に、鮮やかに、朋子の口を借りて司書に伝わる。これが実に素晴らしい。実は、読書好きの親子に読んで欲しいのは、そんな作品の紹介文でもある。例えば川端康成の『眠れる美女』は、「確かにちょっと奇妙な本・・・でも分かりました。老人は死ぬ練習をしているんです。・・・死ぬことになじもうとしているんです。いざその時になって怖くて逃げ出したりしないために・・・」などという感想なのだ。小学生の感想(作者の小川洋子のだけれど)と比べ、なんと私の紹介文の情けない文章であることかと恥じ入ってしまう。

ポチコの作品は、家族の物語でもある。家の物語でもある。ミーナが住み朋子が居候する芦屋の豪邸でのエピソードが、実に快活に語られる。例えば作品のタイトルでもある「行進」のエピソードは、喘息持ちで発作が起きてしまうミーナが、家族の一員であるコビトカバのポチ子にまたがっての通学風景。ミーナの父、飲料メーカーの社長でもある朋子の伯父が、半ば公然とお妾さんを大阪のマンションに住まわせており、ひょんなことから朋子がその住まいを訪ねてしまうエピソードでさえ。この作品は、大人になった朋子の回想という形式を取っている。だからこそ、その煌めくようなエピソードが微笑ましいから、ドイツ人の祖母の血を引く美少女ミーナの儚げなさが描写されるから、暗い最終章を迎えてしまうのではないかと心配しながら読み進むことになる。甘く健全なだけのストーリーではないだけに、却って心配な後半部。

も、大丈夫。通奏低音のような、読みながらずっと感じてしまっていた不幸の予感は見事に外れることになる。最後は逞しく大人になったミーナの姿が語られ、ほっとし、にんまりもしてしまう。今回はずいぶんとネタバレの文章が多いが、それも大丈夫。ストーリーが、結末が分かっていても大丈夫。この作品は、どこを読んでも、どこを読み返しても、どこから読んでも、幸せな気分になれる。何度でも楽しめる。大人でも、子供でも、きっと楽しめる。誰か殺される訳ではないけれど、誰も殺されない作品はつまらないと言うサスペンス小説好きの妻でも。「ふぅ〜ん、分かった。じゃあ読んでみるよ」と妻。きっと、気に入るに違いない。ありがちな、鼻持ちならない美少女ではないミーナのことを。そして何よりポチ子のチャーミングな後ろ姿に悪意を持てるヤツはいないはずだから。・・・と書きながら、ちょっと不安が過る。

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