春節に香港に行こう!そう言って実際に香港に行ってしまったのは3年前のことだった。春節とは、その休暇中に中国人たちが大挙して故郷に帰ったり、世界中に旅することですっかり有名になった旧正月のこと。今年はさらに新型なんちゃらウィルスで話題になってしまったけれど。日本は沖縄以外では特にお祝いしないけれど、ベトナム、マレーシア、シンガポール等の各国でもチャイニーズ・ニューイヤーとして、休日になる。
沖縄(糸満などの海人の街でお祝いをする)以外の日本国内で春節を祝うのは、三大中華街がある長崎、神戸、そして横浜だ。長崎はランタンフェスティバル、神戸は春節祭という名前でイベントが行われる。そこで、香港には行けないまでも、横浜中華街に行こう!」と、今年の春節は横浜へ。横浜に新しくOPENしたホテル(後日詳細)にチェックインし、さっそく夜更の中華街、妖しく美しくライトアップされた横濱媽祖廟へ。
すると偶然にも新年の正式参拝(?)の人々が!廟に旗袍に襷姿の華僑の皆さんが大勢集まり、正に爆竹が鳴らされようと準備しているところだった。元々中華街は華僑が作った街。地元に根付いた新年の儀式に立ち会えたことに興奮する2人。華僑の間で受け継がれているのであろう伝統行事は、150年の歴史を持つ横浜中華街ならでは。そして、2006年に開廟したこの媽祖廟や、10基の中華門など街が整備されたからこそ。
そしてお隣の山下町公園では、女子高生くらいの女性が2人で獅子舞の練習中。連日この公園で行われる「春節娯楽表演」と銘打った中国伝統芸能を披露するイベントの練習だろう。お囃子の音に合わせてリズミカルに踊る若い2人は、獅子頭を被っていないから、演じている際の真剣な表情や、演じ終わった後に笑顔が見られたり、とても親近感が湧き、本番も頑張れ!と応援したくなる。*2人とも可愛かったしね♬
翌日、獅子舞観たさに改めて中華街を再訪。中華街大通り、市場通り、関帝廟通りと街を散策。今の中華街は食べ放題や食べ歩きのファーストフードの店が多くなってしまい、すっかりテーマパークのよう。街が生き残るために変わり続けることは必要だが、以前の(勝手な言い分であり、昔は良かった…という老人のようであり、以前とは“いつ”を指すのかは微妙な言い方だが)異国情緒溢れる落ち着いた街並みが好きだった。
それでもやっぱり、龍踊を模した提灯や通りに連なる提灯が夕闇に輝き、街のあちこちから爆竹の音やらお囃子の音色が聞こえてくると、心が躍る。太鼓とシンバルの音とリズムに導かれ、音のする方に音のする方にと路地を急ぐお気楽夫婦。するとある店の前に急に人混みが現れ、真っ赤なスタジアムコートやトレーナー姿の人々が目立つようになる。「獅子舞だ!」妻がまるで小さな子供のように顔を綻ばせる。
赤いトレーナーの背には「YOKOHAMA YAMATE CHINESE SCHOOL」の文字。横浜山手中華学校の生徒たちだ。周囲のグリーンのスタッフジャンバーの背には「横浜中華学校校友会国術団」とある。中華街にもう1つある「横浜中華学院」と合わせ、生徒たちとOBたちが演じるのが横浜中華街の獅子舞だ。日本の獅子舞と違い、派手でポップな出で立ち。中には前足、後ろ足の2人。そして大きな違いがその獅子の動きだ。
日本の獅子舞は歌舞伎の見栄のような所作でポーズを決め、元気に育つようにと幼い子供の頭をカプっと噛む(地域によって違いあり)が、中華獅子舞は雑技団のようなアクロバティックな動きが特徴。踊りながら店の中を巡り、最後に店の前で立ち上がる。後ろから見ていると、ホントに獅子が立ち上がっているように見えるが、中で前足の男の子が後ろ足の子の上に肩車、そしてさらに肩の上に立ち上がるのだ。ちょっと凄い技。
「5色全制覇したね!」妻が興奮気味に目を輝かせる。街のあちこちを巡り、黄、赤、青などの獅子舞を追い掛けた成果だ。「来年は龍舞とか、練習してた女の子たちがやるような獅子舞とか、ステージも観に来たいね♬」と、すっかり春節の雰囲気に魅了された様子。元々の中華料理好き、香港好きの妻の嗜好の延長線上にあるイベントなのだろう。香港に行こう!と言われるよりお手軽。では来年の春節も、横浜で。
Beatlesが「When I’m Sixty-Four」と歌った時、何て遥か先のことを!と思って聴いていた。もしかしたら自分には64歳なんて永遠に来ないのではとも思っていた。この曲をリリースした時のポール(当時24歳)も、おそらくそう思っていたかもしれない。それが僅か2年後にはやって来る。“あの”64歳が自分にやって来るとは!ポールの歌詞の冒頭に“歳を取って髪の毛がなくなった時”とあるように、64歳は老人の年齢、だった。
「When I get older losing my hair/Many years from now/Will you still be sending me a valentine/Birthday greeting, bottle of wine? 僕が歳を取って髪の毛がなくなった時、かなり先のことだけど、君は僕にバレンタインのプレゼントをくれるかな?誕生日にワインで祝ってくれるかな?」うん、これも予想だにしていなかったけれど(汗)、髪は薄くなった。ただ幸いなことにバレンタインや誕生日を祝ってくれる妻はいる。
学生の頃に思い描いていた60代の自分と現在の私が大きく違うのは、まだ現役で働いていること。定年がまだ55歳の時代、新卒で入社した流通系の人気企業で社会人の基礎を学んだ。20代の終わりにエンタメ系の企業に転職した。店舗運営、店舗開発、コールセンター、会員事業、経営企画、CI・戦略部門など幅広い業務を担当させてもらい仕事の楽しさを味わった。40代は図に乗っていた。もちろんその反動もあった。
マンションの繰上げ返済が趣味だと言っていた40代前半の頃には、早期セミリタイアしたいと思っていた。ローンの返済が終わった40代の終盤に、街づくりに関わりつつ緩やかに仕事をする選択をしようと思った。大手通信系企業に転職し、現在の会社にコンサルとして関わった。“会社”とも呼べないような“チーム”だった。仕組を変え、システムを変え、制度を変え、ようやく“会社”になってきたのはここ数年のことだ。
その後はそのまま経営者の役割で会社に関わる事になった。コンサルの無責任な(笑)立場ではなく、事業に責任を持って取組むことになり、仕事が一段と楽しくなってしまった(笑)。その結果、早期に(セミ)リタイアするという思いはすっかり霧散した。そして10年が経ち、創業10周年のお祝いの会を開催した辺りから潮目が変わった。後継に指名した女性が育ち、周囲の信頼も得た。出向者が相次いで転籍を申し出てくれた。
新たな事業も軌道に乗り始め、気が付けば還暦を超えて尚、当然のように仕事を続けていた。そしてオリンピックイヤーを迎えようという2019年の暮れに、更なるステップアップのきっかけが訪れた。2カ所に分かれていた手狭なオフィス(自由が丘はオフィス物件が少ない)を1カ所にまとめることができる物件が出てきたのだ。広くて眺め良し。下見をして即決!年末年始の慌ただしいスケジュールで移転ということになった。
クリスマス直前に引越し、新オフィスお披露目の会、その後の自社オフィス内での忘年会と、慌ただしさの中にもスタッフ全員に期待が溢れていた。個人的には妻の生まれ故郷でいつものように年末年始を過ごし、新年初日に新オフィスでは「年越した蕎麦の会=出前のお蕎麦を一緒に食べて熊野神社(地元の神社)へ初詣をする会」という、いっぱしの企業のようなイベントを開催。嬉しいことにスタッフ全員が参加してくれた。
小さな会社でも(小さな会社だからこそ)事業を継続し、後進を育成し、経営を承継することは難しく、だからこそやり甲斐もあり楽しいとも言える。人生100年の時代だとしたら、僅か6割を超えたばかり。しばらくこのままやれる所までで歩み続けよう。「ワタクシはお先にセミリタイアで♫」妻はそう言うものの、決して仕事が嫌いな訳ではない。「体力的にキツイだけかな」と、しばらく仕事を続けそうな気配。それも良し。
…今年もこうしては2人はお気楽に歩き始めます。
お気楽夫婦の香港滞在は、ほぼ香港島に限られる。常宿のホテルも、行きつけのレストランも香港島にあり、島側でウロチョロするのが常だ。島の移動の基本はタクシー、徒歩、そしてお気に入りのトラムだ。トラムとは一部を除き冷房設備のない2階建ての路面電車。トラム同士がギリギリですれ違い、ガタゴトとのんびり走る佇まいは、まさしく香港。2階の最後尾に座り、周囲の景色を眺めながら目的地の老舗飲茶に向かう。
「蓮香茶室(Lin Heung Tea House)」は、香港でも少なくなったワゴン式の飲茶レストラン。2019年春に閉店したとの情報に淋しく思っていたが、再開発計画が延期され、以前の「蓮香楼」から「蓮香茶室」と改称し再スタート。とは言え3年契約延長とのことだから、行ける内に言っておこう!と友人たちをご案内。地元の常連客、観光客で賑わう店内。空いている席を探していると、案内係のおばちゃんが奥の方を指差す。
英語は一切通じない。「そっちじゃないよ!(想像)」と怒られているようなおばちゃんの声に些かビビりながら、相席の丸テーブルに腰を下ろす。やって来たワゴンの蒸籠の中を覗き、頷けば伝票にチェックされて目当ての料理が置かれ、執拗なおばちゃんの勧めに首を振って要らない料理を断る。攻めまくるおばちゃんたちとの戦い、ここは戦場である。そして、美味しく、お手頃で、ハマれば楽しいエンタテインメントだ。
飲茶の後は、「外にあるエスカレーターに行ってみたい!」という友人のリクエストに応え、OTC(オールド・タウン・セントラル)の街を歩く。この辺りは香港政府観光局が肝煎で整備している観光スポットが点在している。急な坂道の奥に聳える高層アパート群、道路脇の店の壁にはウォールアート、そんなインスタ映えする風景が続く。友人ご要望のミッドレベル・エスカレーターの麓にも香取慎吾のストリートアートが佇む。
人気のスポットのひとつに「大館(Tai Kwun)」がある。元は警察署、裁判所、そして何と刑務所のあった場所。そんな敷地の元の古い建物を活かしてリノベーションした、アートと歴史の拠点になっている。中庭の大きな壁にはエッシャーの無限回廊のような作品があり、思わず作中の人物を真似てポーズを取ってしまいたくなる。他にも元留置場の中にブラックなアートがあったり、アートがちょっと身近でオシャレなのだ。
建物そのものも、スッキリとして絵になる。今風に言えば(笑)、実に“映える”。中庭に立って周囲を見渡せば、街のど真ん中に突然現れた、新旧の香港が混在したテーマパークのような雰囲気。他にもOTCには、ギャラリーとショップが集まるPMQ(警察署員の宿舎だった)をはじめとしたスポットだけではなく、オシャレな店が点在するハリウッドロードなど、通りを歩くだけで楽しい街並みが続く。妻のお気に入りのエリアだ。
妻のもうひとつのお気に入りは、市場巡りだ。毎回訪れる湾仔(Wan Chai)の市場は、ワイルドなディスプレーが刺激的な肉屋や魚屋などが軒を連ねる、最も好きな市場だ。それに今回の滞在では銅鐸湾(Causeway Bay)の時代廣場(Times Square)近くでも市場を発見。「こんな場所にも市場があるんだねぇ」と嬉々とする妻。香港の裏通りをただブラブラと歩くだけで、ワクワクしてしまうお気楽夫婦だった。
香港の愉しみはお気に入りのレストランの味巡りにもある。香港のゼータク美味=龍景軒とまで思っているお気楽夫婦。今回の滞在もランチとディナーと1度づつ予約し、昼は点心、夜は焼物や海鮮を味わった。今回は特に友人たちが香港到着前に出かけたディナーが絶品。いつものオードブル 3点盛りはバランスが良く、ガチョウのローストが感涙もの。そしてお約束の茹で海老は、相変わらず指まで舐めてしまう美味しさだ。
そしてその日の食事の掉尾を飾ったのは、サービスだと出していただいた梨のデザート♫これが見目麗しいだけではなく、見た目通りに美味しいのだ。人もモノも料理も見た目は大事。洋梨型のケーキの皮を破ると、アールグレーの香りも芳しいムース!が現れれ、ひと口舌に運ぶと優しく上品な味が溶けていく。満腹だったのにスルリと食べ進んでしまう絶品デザート。広東料理のデザートとしては斬新な逸品だった。満足満腹。
夫婦一緒では18回目(出張を入れると私は20回目)の香港滞在は、こうしてあっという間に過ぎていった。前年に「来年も香港に来るよ!」と宣言した友人とも有言実行で渡香できた。夜景を眺めながら「もちろん来年も来るよ!」と今度は妻が宣う。まだまだデモは沈静化の気配がないけれど、お気楽夫婦が大好きな香港が香港であり続けていることを確かめるために、香港に通い続けよう。加油香港!