花嫁は飲み仲間♬/軽井沢Wedding

Kyoko1嫁と最初に知り合ったのは、スカッシュ仲間だった。フラワーアレンジメントの先生をしている彼女は社交的で、彼女の近くには人が集まり、彼女は周囲を明るく照らす。まるで真っ赤なバラのよう。そんな彼女がスカッシュのホームコートがある街のワインバーで、友人と飲んでいた花嫁を見かけ、一緒に飲もうよと声を掛けた(ナンパした?)らしい。「だって可愛かったんだも〜ん」と屈託がない。そして、輪が広がった。

Kyoko2嫁もフラワーアレンジメントの教室に通うようになり、一緒に通うスカッシュ仲間たちとの親交も深まった。なぜか(花はやらず)ただの飲み友達として、お気楽夫婦も輪の中に紛れ込んだ。婚約をしたという報告を受け、新郎の紹介を兼ねて「ビストロ808」に揃ってご来店いただいた。やや緊張していた花婿にも楽しんでいただけた模様で、花嫁はその前にも後にも何度かご来店いただき、すっかり常連の1人となった。

32_largeしてこの春、軽井沢での結婚式にご招待いただいた。ホテルジャンキーのお気楽妻は軽井沢のホテルの調査を開始、擬似アル中の私は披露宴の前夜祭の会場を物色した。結果、お気楽夫婦は前夜から客室に温泉付きのホテルに宿泊することになり、花卉市場でブーケ用の花材を調達し新郎新婦が宿泊する客室で当日の準備をするフラワーアレンジメントチームとは別行動を取り、旧軽の「川上庵」で合流することになった。

IMG_4893くなりました、ごめんなさ〜い(^^;;)」と、お花の先生と生徒仲間がやって来たのは、予約時間の1時間近く後。遅れたのは、時間ギリギリまで翌日の新郎新婦のブーケを作っていたため。花嫁や教室仲間だけでなく、花婿まで制作に参加し、昼食を取ることも忘れ、没頭していたと言う。お疲れ様!と乾杯すると、ホントに疲れたぁと項垂れる。そこまで集中して作ったのか。これはいよいよ本番の出来が楽しみだ。

Kyoko5IMG_5094婚式当日は、快晴。「結婚式ですか、おめでとうございます。軽井沢は年間2/3は雨か霧だから、今日みたいに晴れる方が珍しいんですよ」と会場に向かうタクシーの運転手さん。それは意外。けれど、だとしたら、この晴天は新郎新婦へのプレゼント。何という幸運。高原の新緑の中で、花嫁の純白のドレスが映える。そして、ブーケはアバランシェという白いバラ。清楚でふんわりとした、花嫁にぴったりのラウンドブーケだ。

Kyoko6IMG_5093露宴会場は、緑溢れる広い敷地のホテル。室内に席は用意してあるけれど、中庭にドリンクバー、ホットミールスタンドなどが点在し、自由に飲んだり食べたりできるガーデンウェディング。シャンパンイベントやファーストバイトなど、ほとんどが外で行われる。そして花嫁が手にするのは、2つ合わせるとハート型になる、紫や青い花の鮮やかで華やかなブーケ。白のブーケとの違いが際立つ。さすがプロの演出。実に見事だ。

IMG_5048IMG_5092嫁のドレスは結婚式とパーティでの着こなしが違う。結婚式は清楚ながらキリッとした印象、パーティでは胸元にレースボレロを纏った姿が柔らかで愛らしい。それぞれのドレスとブーケの一体感があり、可憐な花嫁と合わせて一つの作品のようだ。「良いパーティだね」と、妻が呟いた。そこに花嫁の父上がカメラを片手に挨拶にいらした。「上司の方で…」と尋ねられ、えぇ〜、新婦の飲み友達と言うか…などと口籠る。

IMG_5025も終盤、暗くなった庭に出て出席者全員でランタンを飛ばすイベントの後は、新郎の「花嫁を幸福にします」の宣言に続き、父上のご挨拶。自由に会場を歩き回り、好きなドリンクや料理を適量いただく実にリラックスしたパーティだったけれど、この締めのご挨拶は全員が席に着き、耳を傾ける。前の席に座ったフラワーアレンジメントチームは感極まり、ただ涙。花嫁から拡がった輪が、花の輪になり、結実した時間だった。

*ブーケDATA:白いラウンドブーケ(アバランシェ)、ハートのブーケ(白いかすみ草、青のデルフィニウム、紫・ピンク・白のバラ、紫のトルコキキョウ、他)

山菜は浜松に限る?「割烹 弁いち」

Benichi1年GWに妻の生まれ故郷である浜松に向かうのを楽しみにしている。その楽しみのひとつが、この店を訪れること。創業90余年の老舗「割烹 弁いち」だ。この店主の鈴木さんは、食材にかなりの拘りを持つ。遠州灘、浜名湖、三方原と、魚介類や野菜の名産地が近くにあるけれど、地産地消を掲げている訳ではない。季節によって、全国各地の生産者から、納得できる食材を入手する。例えばこの季節なら山菜だ。

Benichi2舎育ちの私にとって山菜は採ったりもらったりするもので、店で買うという食材ではなかった。一方、浜松育ちの妻は山菜そのものを食べる習慣がほとんどなかった。そんな2人の前に最初に供された一皿は、コシアブラと山ウドの天ぷらと、鱒の寿司。感涙の味。これらは天竜川の上流にある佐久間町の生産者から入手した逸品たちだと言う。店主の手によって魅力を引き出された、洗練された野生を味わう。上品な香りだ。

Benichi6くお碗には、大ぶりのハマグリと共にウルイとワラビが添えられる。クキュクキュとした歯ごたえのウルイはチコリにも似た繊細で上品な味。そう言えば子供の頃に食べたっけなぁと、遠い記憶が蘇る。「あっさりとして美味しいよね」と、妻にとっては新鮮な味。絶妙な味付けのソースを纏った甘鯛にはゼンマイが寄り添う。この店のこの季節の皿には、さり気なく脇役としても山菜が配される。これがまたいいアクセント。

Benichi8っつりといただくジューシーで柔らかなラム肉には、サクサクのタケノコとクレソン。食材とソースの味と色合いと歯ざわりの組合せが嬉しくなる美味しさ。お気楽夫婦は基本的にこの店では料理も酒も全てお任せにしている。皿の選択、料理と日本酒とのペアリング、その酒の選択、更には酒とグラスの組合せ、複雑な方程式のようなコースを軽やかに演出するのが、この方、店主の鈴木さんだ。

Benichi9年前、店の規模を発展的にスリムにし、ご自分だけで料理ができるように改装された。店を大きくせず、多店舗展開もせず、料理のクォリティを高める方向を選択した。仕事の仕舞い方を考えられた結果だったと言う。当時、自分の仕事をどのように熟させていくかと考えていた時期だったこともあり、とても参考になった。私が熟成してきたかはともかく、鈴木さんの料理が熟成していく過程を年に数回とは言え味わえる幸福。

Benichi10菜って、この店で初めて意識して食べたかなぁ」と妻がしみじみと呟く。苦味だったり、渋みだったり、大人になり、オトナの舌になってこそ味わえる口福。滋味深い食材や、酒や器を選ぶ目。料理の技。それらを組みわせた総合芸術のような「食」を楽しめる喜び。山菜が洗練された技によって食材本来の力を持つ。田舎料理で味わうのもいいけれど、お気楽夫婦にとっては、この店で食べてこその山菜だ。

Benichi12は秋かな、正月のお節かな」タケノコご飯を頬張りながら、また口福を味わえる日のことを思う。そんな店。「次は、○○さんを連れてきたいね。△△さんも喜ぶかもね」親しい友人たちと、この味や空間を共有したいと言う思いが妻の中から溢れ出る。大切な人と一緒に味わいたいと思い、味わってほしいと思ってしまう。そんな店。「秋は天然のキノコが美味しいんだよなぁ」次は、××さん、ぜひご一緒に。

平成最後は駐妻ナイト♬「ビストロ808-春」

Bistro808-1ダムに会いたい♬」ご主人の海外赴任に伴いLAに渡航する予定の友人に、出発前に「ビストロ808」で一緒に飲みたい相手は誰かと尋ねたら、思いがけない答えが返って来た。2人の接点は、お互いに私のブログやSNSで知っていたものの、ナマで会ったのは私の還暦パーティの時だけ。なのになぜ?「とても楽しい方だったから、いつかまた会いたいなぁって」ふむ。そこでビストロ808のオーナー兼シェフは閃いた。

Bistro808-2女も世界各地に駐在経験があるし、もうひとりNYCの駐在経験のあるスカッシュ仲間をお招きしよう!名付けて“駐妻ナイト”だ。2人に予定を確認すると調整可能。偶然にも平成最後の夜に、NYC駐妻、イランやスイス、D.C.などに駐在経験のあるマダム、そしてLAの前にはオランダに長く駐在した主役のスカッシュ仲間が集うことになった。「私も毎年香港に駐在してる!」とお気楽妻も擬似駐妻を主張。はいはい。

Bistro808-3日のメニューは、全員USA駐在だしアメリカ料理を作る?と主賓に尋ねると、NO!と反応。定番のビストロメニューを所望された。そしてNYC、D.C.、LAと皆さん凄いね、と問うと「LAって言うのは見栄で、ずっと田舎の方。宇都宮に住んでて東京に住んでます!って感じです」いやいや、宇都宮は海外から来たらTOKYOだよ。餃子も美味しいし、などと言うおバカなやり取りをして当日を迎えた。*宇都宮の皆さん、ごめんなさい。

Bistro808-4パークリングワインで乾杯の後、オードブルの盛合せからスタート。リクエストされたパテドカンパーニュ、キャロットラペ、紫キャベツのマリネの他、新作のアンチョビ・フキノトウが大好評。「えぇ〜っ!これ美味しい。良い香り!何なに?」「チコリと合うね、これ良いね」ふふふ、この後にさらなるアレンジが出るのだよ。バゲットを軽く焼き、クリームチーズと和えたアンチョビ・フキノトウを乗せたカナッペだ。

Bistro808-5レー!皿も素敵!んで、美味しい♬」そんな最大級の、普段はお気楽妻からは発せられない褒め言葉をいただいてしまうと、嬉しいけれどテレるぜ。続いて「新玉ねぎのグリル ハニーマスタードソース」にはエディブルフラワーを添えて。料理は味はもちろん、見た目が大切。盛付けや料理そのものが見目麗しい、言い換えればインスタ映えする料理は目で美味しい。美味しそうに見えない盛付けや料理は損だと思うのだ。

Bistro808-6えば、その日のメニュー「サヤエンドウとラディッシュのサラダ」も、「パプリカとアンチョビのパイ」にしても、写真で美味しそうと思ってもらえるはず。味は所詮素人の域を出ることはなくても、視覚で味が何割り増しかになるのだ。と言う間に、ん?電話?誰だ?と思っていると、LAにいるはずの、と言うかいる、スカッシュ仲間(夫)の声が聞こえる。まさか。現地時間の朝5時前。アメリカは平日で、今日も仕事のはず。

Bistro808-7の日の主賓が、ダンナがLAで独り寂しいだろうと慮ったのか、独り残され淋しかったのか、単に酔っ払っていたのか…。*多分これ。それでも健気な夫は、交代でLINE電話に出るその日のメンバーにきちんと挨拶し、半ば寝ぼけながらも会話する。なんと言う神対応。その後、駐妻それぞれの駐在時の秘話を明かしたけれど、ダンナの偉さを賞賛する声は止まず、その株は高止まり。主役は声だけで参加した駐在ダンナとなった。

Bistro808-8の翌日、夜中に洗い物を済ませたお気楽妻は、朝から出勤。残った夫(ワタクシ)は、家事に励み、前夜の残り物で独りランチ。アンチョビ・フキノトウは温かいご飯の上で実にいい仕事をする。今頃サダコに変身した昨夜の主役は何をしているのだろうかと思いを馳せながら、LAのダンナは間違いなく仕事だよなぁと独りごつ。やれやれ。駐在は夫も妻も大変だし、その2人のバランスが大切なのだとしみじみ思う令和初日だ。

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