姉妹店訪問♬「ビストロ178(独断で命名!)」

Ina1Ina2都心にほど近い、複数の大学が近接する住宅街に、新しいビストロが開店した。店の名前は「ビストロ178」(勝手に命名)という、名前から分かる通り「ビストロ808」の姉妹店だ。店主はワイン好きのご夫妻。加えて、ビストロ808来店最多記録を現在も更新中のお2人でもある。建物が完成したのは昨年秋だったが、開店準備に時間がかかったらしく、ようやく待望の初訪問となった。同じ敷地内に親姉弟の3世帯が住まう、羨ましい環境の中、ビストロ178は公道に面した立地。隣家の弟邸の前にはビストロ専用のハーブガーデン。店のエントランスホールにはワインの木箱が大量に積まれ、2階にある店の気配を感じさせる。ワイン好きではなくても、ワクワクさせる演出だ。

Ina3Ina4先にやってます」「いらっしゃ〜い♬」先日ビストロ808を訪ねていただいたご夫婦が先着。ご機嫌にグラスを傾けていた。「いい店だねぇ〜」お気楽妻が感嘆の声をあげる。吹き抜けの高い天井、テラスに続く大きな窓、階下との境には大きなガラス扉、アイランド型の大きなオープンキッチン、明るくぴかぴかに清潔な店内は清々しい。そして書棚にはワイン関連本、飾られているのはヴィンテージ(?)のエチケットコレクション。どこまでワイン好きな店主なんだ。さっそくお店の開店を祝って、冷え冷えの白ワインで乾杯。さっそく供されたのは見目麗しいタパス。「へへ、これ見ながら作ったんだ」とシェフの奥様が美しい写真満載のネタ元の料理本を差し出す。かわいい。

Ina5Ina6祭スパークリングって呑んだことありますか」ワイン好きの店主には珍しいメニュー。自家製のピクルスと一緒に美味しくいただく。続いて、トリュフ塩を味わうグリーンアスパラ。絶妙な茹で加減。んまい!褒めると店主が満足そうに頷く。カラフルな野菜サラダには、開店祝いにお気楽夫婦が持参した山形産のスパークリングワイン。さらには満面笑顔のシェフが、アクアパッツアになる宿命の大きなホウボウを持ってやって来る。「オオゼキで680円だったのぉ〜♬」食材調達の店と価格まで開示する良心的な店なのだ。自慢の新鮮なハーブを散らしたアクアパッツアは、絶品。ホクホクとほぐれる身をアサリの出汁が利いたスープに浸していただく。実に旨い。ワインがススム。

Ina7Ina8IGAさん、泡盛も飲むって言うから持ってきたわよ。飲み残したら持って帰ってね」沖縄旅行から帰ってきたばかりというご夫妻(妻)が勧めてくれたのは、「花酒 与那国」。なんと60度の泡盛。ん〜っ、んまい、けれど危険な香り。とろーりと甘い液体をぐびり。ん、うんまい。…気が付けば、半ば夢の中。眠りに落ちたり目覚めたり、夢と現実の狭間を漂い、うっかり船を漕ぎ、慌てて目覚める。「さあっ、帰るよ!」妻に起こされ帰り支度。愉しく美味しい時間だった。明るい時間から飲み始め、すっかり閉店の時間まで居座った。細部まで店主のこだわりを感じる店の設え。マンションの一室であるビストロ808とは違い、ゆったりとした時間と空間が流れる居心地の良い店だ。

日はご来店いただきありがとうございます。ホストなのにまた酔っ払い(そうか、彼女もウトウトと寝ていたのだった)、失礼いたしました。これからも酒のつまみの作り方、勉強しますので、またいらしてくださいね♡」翌日、シェフから嬉しいメッセージが届いた。もちろん、お伺いさせていただきます。温かく、楽しく、美味しさと笑いに溢れた「ビストロ178」も不定期で営業中。

フレンチな夜、イタリアンな夜「トロワ&プルチーノ」

F:I1F:i2盛期のホワイトアスパラがあるとの情報に釣られ、馴染みの「ビストロトロワキャール」を訪問。パーソナルトレーニングの後、乾いた喉を潤すためにまずはヒューガルデンをぐびりと飲む。キリッと冷えたビールでも、ヒューガルデン専用の厚手のグラスには水滴が付かない。グラスを凍らせてビショビショにしてしまうような居酒屋の生ビールとは比べるまでもなく、丁寧に注がれたクリーミーな泡まで美味しい。ほんのりスパイシーで、爽やかな飲み口。この飲む程に幸福になる琥珀の液体を飲むために、たっぷりとトレーニングで汗を流したのだと自覚する。

F:I3F:I4目当てのホワイトアスパラは、冷たい皿と温かい一皿をゼータクに食べ比べ。旬のホタルイカやトマトと和えた冷たい一皿は、シャキッとしたホワイトアスパラの歯応えが心地良い。オランデーズソースを纏った温かい皿は、文句無しに美味しいお約束の味。やや堅めに茹でたアスパラが濃厚なソースと抜群の相性。冷えた白ワインをぐびり。これも幸福な組み合わせ。最後はメイン。小食のお気楽夫婦に合わせ、乳飲み仔羊のいくつかの部位を少しづつ焼いていただいた。これまたゼータクな食べ比べ。それぞれの味わいが異なり、いずれも絶品。至福の時間。満足の夜。

F:i5F:I6カッシュレッスンの後、足裏マッサージでリフレッシュすると、寿司が食べたかったのに、馴染みの寿司屋は満席。すると、なぜか気分は急速にイタリアン方向に向かう。ご近所のカジュアルなイタリア料理屋「プルチーノ」へ。この店の生ビールはハートランド。バブル全盛期の1986年に六本木六丁目、今の六本木ヒルズの敷地に「ハートランド」というビアホールができ、その店でしか飲めなかった希少なビールだった。そんな懐かしの軽めで爽やかな飲み口の一杯をぐびり。イチジクと鴨のロースト、タコとセロリのサラダをいただきつつ、冷えた白ワインをぐびり。

F:I7F:I8ナスと豚肉のサラダを味わいつつ、炭水化物の摂取を検討するお気楽夫婦。普段は夜の食事では炭水化物は摂らない2人。たっぷりの野菜とアルコールを優先する。けれどもその日は、イタリアンでパスタもピッツァも食べないのはいかがなものか!という結論に達し、クレソンとカラスミのペペロンチーノをオーダー。スカッシュでたっぷりと汗を流したから良しとしようと自らを納得させ、好物のクレソンとカラスミという組合せを楽しむ。旨し。その日はいただかなかったが、窯焼きピッツア自慢の店。ご近所のイタメシ(呼称がバブルの香り)で、充分満足できるレベル。ゼータクなことである。

れにしても、日本(東京)の外食の水準の何と高いことか。ご近所に気軽に通えるフレンチビストロがあり、お手頃なイタリアンレストランがあり、本格的にきちんと美味しい。実に幸福なことだ。何を食べても大抵不味いロンドンはもちろん、パリやNYCなどの他の大都市でも望めないことだ。ご近所で味わうフレンチな夜、イタリアンな夕べ。他にも、寿司屋だって、焼き鳥屋だって、四川料理屋、焼肉屋、いくつも自慢の店がある。私たちはきっと、世界有数の幸福な街に住んでいる。

この店で、この酒を、この一皿を♬「割烹 弁いち」浜松

Ben1Ben2生最後の一杯を、どこで、何を、誰と飲むかと先週のブログに書いた。自分が酒に通じている訳ではないから、自分で何を選ぶというよりはプロに身を委ねるとも。すると、この店で人生最後の一杯を選んでいただくという選択肢もある。浜松にある「割烹 弁いち」は、三代続いた料理自慢の店ではあるが、それ以上に店主鈴木さんの酒の目利きに魅力がある。日本各地の旬の食材を選ぶ店主鈴木さんの作る料理と、日本各地の酒蔵と酒卸店に太いパイプを持つ彼の選ぶ酒は、所謂“マリアージュ”と呼ばれる相性の良い組み合わせになり、料理と酒が互いを引き立てるのだ。

Ben3Ben4烹 弁いち」は、浜松市肴町という古くからの繁華街にある。数年前に店の規模を縮小し、仕事の内容を充実させる方向に舵を切った。1階にあった調理場もカウンタ席の個室も2階に移し、他は数室の座敷とした。お気楽夫婦が改装前から伺っているのは、そのカウンタ席。造作に拘った壁、カウンタ、椅子、この小部屋は店主の美意識を象徴する佇まい。調理場に隣接し、扉1枚向こうの調理場の物音や声が漏れ聞こえるライブ感溢れる空間。店主の鈴木さんが選んだ酒を手に顔を出してくれるというゼータクな席であり、プライベートダイニングのような趣。お気楽夫婦にとってのベストシートだ。

Ben5Ben6の日の前菜は、ホタルイカ、笹竹、こしあぶら…春を盛り付けたひと皿。合わせていただいたのは「鳳凰美田純米大吟醸」という瑞々しくクリアな1杯。料理で春の味と香りを楽しみ、吟醸生酒の香りを味わう。ほんのひと口舐めた妻も「ん、おいしい♬」と笑顔になる、幸福な時間の始まりだ。皮目を炙った白甘鯛とウルイの椀に合わせるのは「東一(あづまいち)純米大吟醸 選抜26BY」という、純米大吟醸の斗瓶の中から選び抜かれた証「選抜」の酒の香り高き一杯。貴重な白甘鯛のほんのりとした脂の旨さと繊細さと、貴重な酒の何とも上品で艶やかな組み合わせ。すっかり店主の術中に嵌る。

Ben7Ben8造りの皿と一緒に登場したのは「伯楽星(はくらくせい)純米大吟醸」と店主の鈴木さん。「若い杜氏さんたちが頑張っている蔵ですね」鈴木さんに伺う蔵や杜氏の物語や情報は、その場で頷き楽しく聞かせてもらうものの、基本的にはBGMのように聞き流す。私にとって重要なのは、酒や蔵の情報ではなく、鈴木さんがこのひと皿に、この酒を選んでくれたということ。口当たりが滑らかで、キレがある食中酒としてぴったりな一杯に深く頷く。店主との会話は、食材や酒の話題に留まらず、音楽だったり、旅だったりと広がっていく。それもまた食事というライブ中のMCのように、楽しく味わい深い。

Ben9Ben10の筍を使ったら、他所のものは使えなくなります」京都乙訓の白子筍を香ばしく焼き、自家製のアンチョビソースをたっぷり掛けたひと皿は、感涙もの。心地よい歯応えを残しながら、絶妙な柔らかさと、エグミのなさ。The KING of タケノコ。タケノコの最高峰。それに合わせるのは、「新政NO6 クリスマスヴァージョン」というワインのようなエチケット(日本酒は単にラベルか)が楽しい1杯。クリスマスは季節はずれだけれど、美味しいタケノコをいただき、アゲアゲ気分で春を寿ぐにはぴったりの酒。塩味が効いたアンチョビソースだけでも酒が何杯かいけそうな組み合わせ。至福の味。

Ben11Ben12味しい〜っ!」妻が気絶しそうな声をあげる。それまでは料理と酒の組合せの妙を堪能し、締めは料理のみをじっくり味わう。シラスご飯と赤だしに続いて、デザートはブランマンジェとアズキ…かと思えば黒砂糖で煮たというレンズ豆。「甘いレンズ豆って初めて!」妻が組合せの斬新さに目を輝かせる。煮崩れないレンズ豆の歯触りが楽しい。料理と酒のマリアージュだけではなく、食材の幸福な出会いもあるのだ。食材の味を最大限に引き出す料理の多い「弁いち」の面目躍如。最後の一杯、最後の晩餐は、この店の、このカウンタ席で?「ん、それも良いかもね」妻が満足そうに頷いた。

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SINCE 1.May 2005