笑顔の鮎尽くし「用賀 本城」

Ayu1Ayu2将が頑張って用意してるので、ご自分の分だけしっかり召し上がってください」6人で予約したのに、急病で1人減ってしまったことを詫び、1人分の鮎を皆に回してもらえればと伝えると、女将さんが柔らかな関西弁でそう言ってくれた。その日の「用賀 本城」には鮎尽くし料理をお願いしてあった。一昨年、本城さんと何気なく交わした会話から始まった鮎尽くし企画も3回目。無念の欠席の建築家の友人を除き、昨年に続き同じメンバーでやってきた。「今日はデザートまでいかれますか」と初めてのテーブル席に本城さんが顔を見せてくれる。はい!と元気良く答え、まずはビールで乾杯。鮎料理最初の一品、一夜干しの鮎とウルカを食べながら、和食にも合うという丹波ワインをいただく。さっそくの美味に友人たちの笑みが零れる。幸福な時間のはじまりだ。

Ayu3Ayu4料理の合間にも季節の食材をふんだんに使った料理(ウニと子持ち昆布と生海苔の和え物とか、初物松茸の土瓶蒸しとか)が供され、いずれも絶品ではあるけれど、その日の主役は鮎。何やら調理場でざわざわしていると思っていると、本城さんが大きなボウルを抱えてやってきた。中には元気に泳ぐ活きた鮎。凄い!「航空便で送ってもらったんですけど、心配して何度も様子を見てましたわ」と、嬉しくて仕方のない幼い子供のような満面の笑み。初めて見る本城さんのはしゃぎっぷり。ふふ。何だかテンションが上がってきたぞ。しばらくすると、さっきまで泳いでいた鮎たちが姿造り(背ごし)で登場。「うわっ!いい香り。全く臭みがないねぇ♡」“香魚”と呼ばれる鮎の、その香りを食べ、味と歯ごたえを堪能するゼータクな1品。

Ayu5Ayu6いて子持ち鮎の塩焼き。香ばしく焼けた皮、絶妙に破けた皮からのぞいた卵、ほんのり苦く独特の香りのはらわた、飾り塩が美しく、頭や骨まで食べられるやや小ぶりの姿、ん〜っ、なんとも食欲をそそる。鮎料理の王道の美味しさ。日本人なら、年に一度は必ず味わうべき美味しさ。あ、もちろん日本人でなくても。そして子持ち鮎の梅煮。この何とも言えない柔らかな酸味と、ぱんぱんに膨らんだ福々しい子持ち鮎のハーモニーは何だ!塩焼きとはまた違った優しい美味しさ。あぁ、日本人で良かったなぁと思う味。もちろん、日本人以外にも通じると思うけど。ところで、ここまで何尾の鮎をいただいたのだろう。縄張り意識が強く、友釣りで釣れて(引っ掛って)しまう鮎。ひとつひとつの料理に釣られ、友だちを誘ってしまう味。ん?私は何を言ってんだ?

Ayu7Ayu8め押しに鮎の炊き込み御飯。嬉しそうに炊きあがった羽釜を見せてくれる女将さん。炙った鮎、針生姜をこれまた嬉しそうに混ぜてくれる本城さん。小ぶりの茶碗に上品に盛られ、三つ葉を添えた香り高き1杯。これは美味しいに決まってる。赤だし、京漬け物、もはや何も言うことはない美味しさ。あぁ、オトナになって良かったなぁとしみじみ。こうして幸福の味を共有できる友人たちがいてくれるのは、つくづく有難いことだなぁと、さらにしみじみ。秋の気配を感じながら、夏の小鮎と(琵琶湖の鮎は小さなままで秋を迎え、琵琶湖の鮎を別の川に放流すると大きく育つとのこと:本城さんに教わった薀蓄)、秋の落ち鮎、子持ち鮎を食すゼータク。実に幸福な時間だ。

気になったぁ!」仕事が忙しく、食べ始める前は体調が思わしくなかった役員秘書も笑顔。見送ってくれる大将も、女将さんも。満足と満腹を抱えて一緒に並んで帰る友人たちも。美味しい鮎料理は誰をも笑顔にする。また来年も(来年は建築家の友人も)、この仲間たちと、この店に。

今日も元気に営業中!「BISTRO&BAR808」

INABABEER2組のカップルが万全の準備で「ビストロ808」にご来店。ビストロ808のルールはただ一つ。会費は無料だけど、自分が飲みたい、飲める分だけの酒を持参すること。後は、マスターのお任せ料理を味わうだけ。すると、酒豪ぞろいのカップルたち、というか全員飲んべの4人、酒屋で買い込んだ大量のビールやワインを、なんとスーツケースに入れて持って来た(笑)。「泡は冷やしてもらって良いですかぁ」と、写真のワイン以外にもスパークリングが何本か。お土産ではなく、本気で飲もうとしているのだから怖ろしい。「だって、シェフの料理美味しいんですもの」とくすぐられつつ、料理の仕上げに掛かる。その日は一緒にスカッシュをした後の飲み。たっぷり汗を流した後に飲むビールも、ワインも、美味しいに決まってる。さぁ、ビストロ808、開店だ。

MENUPARTYニューはいつも通りのビストロ料理。看板を掛け替えて「居酒屋八十八」の新規開店という方向性もあったが、5度の来訪記録を持つ友人夫妻が強くビストロを推し、「キャロットラペとパテドカンパーニュが食べたい!」と言ってくれたため、ビストロとして開店。シェフとしては嬉しい限り。「わぁ〜、やっぱりパテもラペも美味しい」「真似して作ってみたら“和”になっちゃったんですよぉ」との声。ふふふ。師匠(カウンタ席に座りレシピやコツを聞き出すだけの柔な弟子だが)である「ビストロトロワキャール」のシェフ、聡ちゃんにお礼せねば。今回は、師匠にパテの固さが足りないのはどうしたら良いかと尋ねると、粗めのひき肉を使うべしというアドバイスを忠実に守り、パテも上手くできた。キャロットラペも妻の弁当用に何十回も作った成果か。

BEEFDISHES登場メニューを含むその日のメニューは「クレデュテ(キャロットラペと紫キャベツのマリネ)、パテドカンパーニュ、生ハムメロン&シャインマスカット、タイのカルパッチョ、イチジクと牛肉のタリアータ、たっぷりベーコンのシーザーサラダ、3種のチーズのサラダ、サーモンのレモンバター蒸し。シェフとスーシェフ渾身の(笑)料理たち。「どれもオシャレで美味しい♬」「イチヂクと牛肉って合うんですね」初訪問の初々しい?カップルの反応も嬉しい。なんだか可愛いぞ。いつの間にかスパークリングワインが空き、何本かの白ワインが空く。これはどう?と香港のホテルでウェルカムワインとして部屋にあった1本を差し出すと「うわぁ、これ良いワインですよ」とワイン好きのご夫婦が歓喜。分かる人に飲んでもらえれば何より。その赤もあっという間に空に。

SLEEPYBAR808も老けて、いつの間にか2人の姫はお眠♡の模様。スカッシュで走り回って、ガンガン飲んだ結果。じゃあ、こっちで飲もうか!と飲み足りない男ども用に、キッチンの横のカウンタに「立ち飲みBAR808」を急遽開店。小鉢にちょっとしたおつまみを供し、カウンタに並べる。2人が並ぶとちょうど良い感じ。とっておきのジンライムを作ると、「うわぁっ!IGAさん、これ美味しい!初めてジンを美味いと思ったぁ」と一段とテンションが上がる2人。いつの間にやら肩を抱きだしたぞ。どうやらご機嫌に酔っ払っている模様。姫たちが目覚め、飲み直し。復活して飲む酒もまた美味しい。すると、代わりに酔ってソファに沈み込んだダンナを弄る嫁。この夫婦のテンションは、実に良くバランスが取れている。今日のゲストも良い感じだ。なんだか楽しい夜だなぁ。

理もお酒も期待以上に美味しく、大満足でした。でも、飲みきれず、不甲斐ない結果になってしまい、すいません!また今度リベンジさせてください!」翌日、そこかいっ!という突込みどころ満載のメールが飲んべ女子から届いた。そんなリベンジならいつでもおいで♡来店回数TOPのご夫婦は少し離れた街に引っ越してしまうけど、またのご来店を!ビストロ808、そしてBAR808、不定期な開店ながら、元気に営業中!

ここは中国?ポルトガル?「澳門、Macao、マカオ」

Tarochonfun港島のフェリーターミナルから1時間。15分おきに出航するカタマラン(双胴)の高速船は、居眠りする間もなくマカオに到着する。10度以上香港を訪れたお気楽夫婦なのに、なぜかマカオは初訪問。1997年にイギリスから返還された香港に続き、1999年にポルトガルから中国の特別行政区となったマカオ。だから香港-マカオ間の移動もパスポートが要る。因みに、そのフェリーターミナルを比較するだけで2都市の違いが分かる。圧倒的にマカオが清潔で、香港は猥雑。2006年にカジノの売上でラスベガスを抜き、世界一のギャンブル都市となったこと、1人あたりのGDPが世界屈指の水準であることが要因なのだろう。1970年代前半に、沢木耕太郎が『深夜特急』の旅の中で、香港滞在中に訪れ、「大小」というギャンブルで大負けをしてしまった街でもある。

senado squareMercadores宿泊先は「マンダリン オリエンタル マカオ」。マカオでは珍しく、カジノを運営していないラグジュアリーホテル。雨模様ということもあり、チェックインしてすぐにホテル内の「ヴィダリカ」でランチ。ポルトガル料理と中華料理のメニューがあるメインダイニング。これが正解。アヒルを模したタロイモ揚げ、焼豚の腸粉、フカヒレのスープ餃子など、どれも優しく上品な味付けで、実に美味しい。「これは当りだね」妻もご機嫌。アヒルを頭から齧りながら、その日の行動計画を話し合う。基本的には2人とも観光にはほぼ興味がないながら、セナド広場と聖パウロ天主堂ぐらいは行こうか、ぐらいのノリ。タクシーに乗って街の中心部に向かう。ところがチャイナパワーを甘く見ていた。週末ということもあり、街は竹下通り並みの激混み。観光中止!撤収!

casinoMGMパウロ天主堂は諦め、人混みを避けながら街を彷徨う。ポルトガルを感じさせる「大堂(カテドラル)」や、香港と変わらぬ野性的な水産物市場などに出くわし、アズレージョというポルトガルの装飾タイルを使った住居表示(ポルトガル語と中国語表記)を眺め、タイル敷きの美しい歩道に感心する。タクシーを拾おうと乗場の列に並び観察すると、割り込む人もいない。もはや中国人の国なのに、まだ中国ではなく、ポルトガルの香りも残る。ホテルに戻り、スパの予約。これがお気楽夫婦流。外出は終了。とは言え、予約した時間までお隣の「MGM」のカジノでも見学しようと出かける。これがすごい。施設の中に巨大な吹き抜け、謎のオブジェ、魚が泳ぐ巨大な水槽。カジノにフリーパスで潜入。賑わう施設にびっくり。ここでもチャイナパワーに圧倒される。

goosesweetsぅ」。カジノの中で写真を撮っているところを係員に見つかり、中国語で(たぶんプライバシー保護の観点で写真は撮ってはいけない)注意され、大丈夫!大丈夫!(と、理由になっていない日本語で堂々と)答え、這々の体でホテルに逃げ帰る。カジノもショッピングモールもない我がホテルは安息の場所だ。スパでリラックスし、平静を取り戻し、いざ夕食へ。チャイナパワーに辟易としたためホテル内の「ヴィダリカ」再訪。ランチは中華料理だったから、ポルトガル料理でも、と思いつつ中華メニューを選んでしまう2人。大陸人は好きになれなくても、中華料理は嫌いになれない。大好物のローストダックの梅ソース、芥蘭(カイラン)のオイスターソース炒めなどを堪能。旨し。

LouisVittonPonte食の後、ホテルの外に出て夜景鑑賞。MGMのショッピングモールのルイヴィトンの青に目が眩み、遠景の「グランドリスボア」の異形に慄く。沢木耕太郎がカジノで大敗した「リスボアホテル」の新館であり、マカオタワーと並ぶ街のランドマーク。街のどこから見ても目立ち、かつ周囲とは調和しない独特の存在感があるフォルム。このセンスは上海の摩天楼群にも似て、金ぴかな現代中華文化の香りが漂う。観るだけで落ち着かず、妙な圧迫感を感じてしまう。ホテルに戻り、バスタブにお湯を張る。ふぅ〜。全面窓のビューバスに身体を浸し、外を眺める。タイパと結ぶ3本の橋を行き交う車、マカオタワーが闇に輝く。穏やかな眺めにホッとする。それに、香港と同様にfacebookも制限なく使えるし、香港にも似ているが、マカオはマカオだなぁとしみじみ。

の街は、中国であり、ポルトガルであり、何よりもマカオ。そう言えば、香港に向かうANAの機内で「私は香港人です。まだ日本語上手ではないので…」とCAが言っていた。彼女はホンコニーズであり、チャイニーズではないのだ。たぶんマカオも同様。中国から分離され、独自の文化を育み、本土とは違う人が生まれた。返還後も50年間は現状保全を認められたが、じわじわと制限範囲が広がっているらしい。一国二制度が香港にもマカオにも適応されているが、果たしていつまで続くのか。あるいは不健全な本土の一党独裁がいつまで続くのか。「香港やマカオが中国になったら、私はもう来ないかなぁ」妻の言い分は一貫している。Agree!

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SINCE 1.May 2005