しばらくは女性の作家だと思っていなかった。恩田陸の作品には穏やかで柔らかい視線があるかと思えば、突き刺さるような視点もあり、同時に作品の幅も広い。『ネクロポリス』のような、幻想的で神話の香りのするような雄大な物語があるかと思えば、『中庭の出来事』のような、ミステリと演劇(脚本)を融合させた複雑な筋立ての物語もある。*他に、『蒲公英(たんぽぽ)物語』『蛇行する川のほとり』『ライオン・ハート』『ネバーランド』『まひるの月を追いかけて』『図書室の海』『ドミノ』など。
そして、第2回本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』は、瑞々しくも残酷な“生の”高校生たちが主人公の物語。彼女の出身高校が実際に行っているイベントがモチーフになっているということだけれど、経験していない読者さえも巻き込んで“夜のピクニック”を楽しんでしまえる。この作品のイメージのままで他の恩田作品を読んでしまうと、見事に(良い意味で)裏切られることになるのだけれど、恩田作品の最初の1冊として是非おススメしたい。
【快楽主義宣言へ】
■「2冊の白い文庫本」2008年9月7日 『ネバーランド』
■「青春とオヤジの関係」2006年11月11日 『夜のピクニック』