2冊の白い文庫本『かもめ食堂』『ネバーランド』

P1000820画を観るのが先か、原作を読むのが先か。そう問われたら、間違いなく原作を読むのが先!と答える。私は文庫本の解説を先に読むやつ(妻もそう!)が信じられない。何の先入観もなく作品を読み、作者の創造した世界を自分の中で再構築するのが読書の愉しみだと思っている。でも、この作品については知らなかったのだ。原作があることなんて。文庫本が本屋の店頭に並んだ時も、映画のノベライズか?と思ったほどに。それぐらい映画作品としての「かもめ食堂」は独自のほわんとした世界を描き、完結していた。涼しげな空気が流れるこぢんまりとした世界。それに対し、群ようこの作品はほとんど読んだことがなかった。かつて椎名誠の事務所で働いていて、「無印良女」の作者で、それを「むじるしりょうひん」と読ませるセンスが好きじゃないなぁ・・・ぐらいの印象。(失礼)

から、驚いた。面白かった。映画と同じくらい、あるいはそれ以上に。映画の世界観そのままに(考えたら、原作だから、まぁ当たり前なのだけれど)淡々と、軽やかに時間が流れ、現実のような、現実のちょっと外にあるような不思議な物語が綴られていく。映画では説明していなかった背景も丁寧に書かれ(これも当然か)あぁ、そうだったんだと腑に落ちる。映画と小説という表現の違いや、どちらが先かということは気にならず、どちらも独立した作品として、えこ贔屓や偏見なく、「好き」と言える。私にとってはとても珍しい現象。どちらかに肩入れすることなく、両者のメディアの特性をそれぞれ評価して、補い合ってプラスになる受け止め方ができる。ただし、仕方ないのだけれど、登場人物の顔や姿が映画のキャスティング通りになってしまう。本を読んで広がるはずのイメージが限定される。だから私は原作が先!なのだけれど、今回の場合はそれもまた楽しかった。観て欲しい、そして読んで欲しい、お薦めの組み合せだ。

P1000821田陸は、当たり外れが激しい。誤解のないように言っておけば、私にとって。食事(料理)や読書(小説)は嗜好性の高いものだから、評価はあくまでも個人的なもの。当たり外れは、作者や作品に対しての評価ではなく、自分自身に対して向けられることば。言い換えれば、恩田陸には大好きな作品と、途中で投げ出してしまう作品があるということ。だから「夜のピクニック」以来、久しぶりに、とても嬉しかった。途中までどきどきしながら、ストーリーにだけではなく、途中で投げ出さないかと自分自身に対して、読んでいた。スポーツジムのトレッド・ミル(ランニング・マシンのことです)で走っていても感じるのだけれど、走り始めてしばらくはペースを掴むのが大変だけど、一度その日のリズムに乗ったらどこまでも走れそうな日がある。「ネバーランド」は、そんな絶好調の体調のまま、どこまでも読んでいたい気持ちにさせる。“大あたり”の1冊だ。

じ高校生を主人公にした物語でも、主人公たちの背景にある物語は「夜ピク」に比べて重く、辛く、痛々しく、信じがたく、ちょっと「お話」っぽい。しかし、「ネバーランド」に登場する高校生たち4人は、それぞれぎゅっと抱きしめたくなるほど魅力的だ。そして、なんとも絶妙の組み合せだ。その4人のバランスの中に、自分を登場させたい、彼らと会話がしてみたい、こんな仲間が欲しかった、・・・こんなことばを書き綴ると照れてしまうのだけれど、眩しく、妬ましく、読んでいて嬉しくなる4人の男の子。こんな高校生いねぇよっ!こんな学校なんてねぇよっ!などと言わず、読んでみて欲しい。どこまでも、どこまでも、読み続けられる気がしていたのに、もうすぐ終わってしまうと気づく最後の数ページに、切なくすらなってしまう。ずっと高校生のままの彼らを読み続けていたい、ネバーランドの生活を共有したい・・・そんなことを思わせる作品だ。

すっきりと白い装丁の文庫本、初秋のお薦めの2冊。

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