まちの記憶「商店街の時間」
2006年 10 月01日(日)
街の記憶を集めて絵本をつくる…「商店街の時間」と題された僅か5ページの、大判の絵本が手に入った。昭和30年から現在に至るまで、世田谷の“どこかにありそうな街”の変遷が描かれた可愛いイラスト。世田谷区の都市計画課が企画し、区内の商店街の皆さんに協力を依頼し、多くの参加者による数度に渡るワークショップを開催し、武蔵野美術大学の学生が制作した力作だ。(関係者の皆さん、紹介させていただいてよろしいでしょうか?って、もうUPしてるけど)
昭和30年のイラストには映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に繋がる郷愁が、昭和40年には「そうだったんだぁ」という好奇心が、昭和50年には、「そうそう、そうだったねぇ」という思い出が、現在のイラストには「こんなに変わったんだなぁ」という感慨が投影される。
イラストには、昭和30年〔春〕入学式の朝、昭和40年〔梅雨〕雨上がり、昭和50年〔夏〕祭の準備、昭和60年〔秋〕夕暮れ近く、平成17年〔冬〕クリスマスとタイトルが付いている。そう、時代の変化だけでなく、季節が春から冬へ、時間が朝から夜に移っている風景。
付属の「ガイドブック」には、ワークショップに参加した人の“記憶”が、<絵の読み解き>として解説されている。例えば、昭和30年には「高い建物がなく、富士山は勿論、遠くの山々が見えました」とか、「電柱は木製で、街灯は裸電球にカサ付きのものでした」とか。
行政が制作したものらしく、各年代の時代背景(日本、世田谷区、商店街では…)とか、データ(自転車保有台数の推移、舗装率の推移…)はもちろん、ワークショップに参加した住民の“生の声”としてエピソードが紹介されている。これが、なかなか楽しい♪
そして、エピソードが<絵本>の中ではイラストで表現される。昭和40年に「スバル360はこの頃に流行りました」とあれば、のんびり走っている車が、「水溜りができると子供達が入って遊んでました」というイラストが街のどこかに描かれる。(絵の中を探してみて♪)
どこで手に入るか、問い合わせいただいても、お答えできないのが残念。販売はしていないらしい。「ぜったい欲しい人いるよねぇ」地図好きの妻も断言する。送別会の二次会でカラオケに行った後に帰ってきた深夜、リビングのテーブルに置きっぱなしになっていたこの絵本を、時間を忘れて読み耽ったらしい。確かに、巻末の<この絵本のいろいろな使い方を工夫してください>というメッセージにあるように、まちを考える何かのきっかけになりそうな、なかなか“良い仕事”。増刷して、販売してみたらどうでしょう?関係者の皆さん!