ブーム到来「角田光代の作品群」

Photo お気に入り作家の新作(正確には文庫化された新作)が出ない日々が続くと、新たなお気に入り作家を探すことになる。お気に入り候補作家は何人かストックしてある。新聞広告や書評で気になっている作家名と作品名リスト。そのリストを頭に入れ、本屋の店頭で候補作を手に取り、装丁を眺め、著者紹介を熟読し、書き出しの数行を読む。(本屋での扱われ方も気なるが、手書きPOPは気にしない)そして最終的には自分の“勘”が頼り。最初の作品と肌が合わないとしばらくその作家はリストの下位に位置してしまうことになる。

そうなってしまったら、互いに(作家と読者として)不幸な関係。だから最初1冊の選択はとても重要。角田光代の初めての作品が『空中庭園』だったことは、実に幸福なこと。角田光代は、その名前や受賞暦だけではなく、映画化された作品(小泉今日子が主役だった)を観てはいないけれど知っており、ちょっと気になる作家だった。作品の舞台は郊外のダンチ。そこに住む5人の家族。家庭の方針は「何事もつつみかくさず」なのに、5人の家族(+1人)の6人の登場人物の視線で語られる6つの章は、包み隠さないはずの生活の裏にある生々しい個の物語。時間や空間は重なり合うのに、決して重なり合うことのない気持。章が進むほど、すっとぼけた家族の会話の中に、それぞれの裏が見えてくる怖さ。なんてことはない日常が舞台だからこそ怖さが増幅する。

Photo_2 ・・・ということで、嵌ってしまった。角田光代、お気に入りリストに見事昇格!おめでとう!文庫化されている作品を買い漁る。立て続けに読みまくる。直木賞受賞作『対岸の彼女』も一気に読み終えた。短編集『だれかのいとしいひと』も悪くない。どれも会話が生きている。リアリティがある設定。今どきの若いカップルの、倦怠し始めた夫婦の、話しかけられなくなり始めた親娘の、出産後に仕事に戻ろうとする母親と義理の母の。男性の視点でも、もちろん女性の気持も、若い娘のストレスも、ばあさんの悩みも、器用に書き分ける。適度な毒もある。

やはり新作不足に困っている妻にも薦めた。速読の妻はあっという間に何冊かを読んでしまったようだ。どうだったと尋ねると、「悪くないね」との答え。へぇ、何から読んだのかと聞くとやはり『空中庭園』から。ふんふん。それは良かった。二人で読むとコストパフォーマンスが良い感じ。「でも、人が死なないのはちょっとね」海外作家のサスペンスものが大好きな妻はちょっと不満気。でも、日本の作家の作品で人がたくさん死んでいったらリアリティなくなぃ?「あぁ、確かにそうだねぇ」妻のお気に入りリストに載る作家たちはジョナサン・ケラーマン、ロビン・クック、グレッグ・アイルズ、パトリシア・コーンウェルなど。「読んでみたら?面白いよ」うん、そうだね。ジェフリー・アーチャーも気に入ったし。でも、お気楽夫婦の嗜好が重なる作家は半分ぐらい。残りの半分は老後のお愉しみ。

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