浜松移住計画(1)「浜松の食① 八百徳の鰻茶漬け」
2008年 1 月19日(土)
浜松のご両親と、将来一緒に住もうか♪…そんな私のことばに驚いただけではなく、めったに感情を顔に出さない妻の眼が輝いた。妻は一人娘。ご両親は数年前に駅からちょっと遠い一軒家を売却し、駅近マンションに移り住んだ。老後に備えた正しい選択。バリアフリーであるだけではなく、セキュリティも万全。南に大きく開いた明るいリビングは冬でも暖かい。自宅の庭で丹精した花や木々は、(数こそ少なくなったけれど)小さな鉢植えになってベランダを彩っている。口数の少ないご両親は、暖かい陽射しを浴びて、ベランダの花々や遠く望む中心市街地の高層ビル群を2人でぼ~っと眺めて暮らしている。
そんな穏やかな性格のご両親も、妻が帰省すると聞くと(電話の向こうで)声を弾ませる。新幹線の改札の前で待っている2人の姿を見ると、いつも私の中で何かがちくっと胸に刺さる。ちょっと照れながら、それでも喜びを隠せず笑顔になる2人。そしてご両親同様に口数の少ない妻も、故郷の空気を吸った瞬間から2人の子供になり、見る見るうちに身体の力が抜けていく。交わすことばは少ないけれど、互いが側にいることで生まれる暖かな空気。そんな3人と一緒に浜松で暮らすには…。まずは、食べものが美味しいこと。おいっ、そっちかい!という声が聞こえるが気にしない。
鰻と言えば浜松、というぐらい有名な浜松の鰻。けれど、名古屋で知られた「櫃まぶし」と同様に「鰻茶漬け」の美味しい店があることは余り知られていない。駅近くに2軒の店を構える「八百徳」。お櫃にたっぷりと盛り込まれた鰻とご飯を4等分にして、最初の1/4をお茶碗によそってそのまま食べる。想像通りに旨い。次の1/4は、その上に薬味を乗せて食す。これまた葱や山葵と良く合う。旨い。そして次に薬味と熱々のお茶を(この店はこぶ茶)掛けてもう一杯。1/2まで食べ進んだ鰻の脂が口の周りから消え去り、さらさらと入っていく。すっげぇ旨い。そして最後の1/4は、それまでで一番気に入った食べ方で♪
毎日これが食べられるなんて(食べないだろうけど)これは住むしかないでしょう!という美味しさ。数年前に一緒に訪れたご近所の友人夫妻も大ファン。「あの鰻茶、また食べたぁい!えっ?浜松に住むかもしれないの?じゃあ鰻茶食べに行くよ!」友人(妻)も嬉しいような淋しいようなコメント。どうせ住むんだったら、ポジティブに。楽しみは多い方が良い。人生をいくつかの季節で分けたらご両親は晩秋。やって来る冬の寒さに凍えないように、長い夜に淋しくならないように、一緒に住めると良いだろうね。「でも浜松は冬もあまり寒くないし、彼ら夜は早く寝ちゃうよ」と妻。…喩えだから、これはあくまでも。