処暑も過ぎれば暑さ忘れる?「日本の夏、田舎の夏」

Photo然、夏が終わってしまった。淋しい。猛暑日や熱帯夜が続けば続いたで、なんとかしてくれ!この暑さ、東京は熱帯地方か?これは夕立ではなく、スコールか!とか突っ込んでいた。しかし、夏が夏らしい方が嬉しいことが身に染みて分かる。朝夕が涼しくて過ごしやすいとか言いながら、秋の気配を気がつかない振りをする。夏は終わってないと思い込む。つい数週間前には、こんな画像を涼しげに眺めていたのに、今見ると寒々しい。人間なんて勝手なもんである。ところで、この清流に流されてしまいそうな子供は、甥っ子。遭難してしまう寸前の最期の姿ではなく、単なる川遊び。母親の1周忌に帰省した際の一コマ。その後、彼はもちろん自力で岸にたどり着いた。

Photo_2闘病生活その死は、家族に大きな変化をもたらした。少なくとも、私にとっての「故郷」は大きく変わった。何年に一度しか訪れることのない遠い場所から、変な言い方だけれども、頻繁に旅をする身近な場所に変わった。帰るのではなく、訪れる場所。母を見舞う度に、訪ねたことのない場所や、味わったことのない味を再発見した。大人になって改めて発見した故郷。子供の頃に過ごした街を、旅行者として訪ねたり、味わったりすることで、見つけた故郷の姿。考えたら、もっともなことなのだ。18歳まで過ごしただけの街で、子供だった私が、この店の肴が旨いとか、この旅館のサービスは良いだとか、言えるはずもなく。JR東日本が吉永小百合を起用して作ったCMやポスターで知った、こんな風景も同様。故郷にこんな風景があったことを東京で知り、弟や姪と一緒に訪ねた「山居倉庫」だ。

Photo_3Photo_4郷の街の近くにある美術館を訪ねた。好きな場所だけに、ここ数年で3度目の訪問。正式には「酒田市写真展示館」、通称「土門拳記念館」。地元出身の写真家、土門拳が作品の全てを市に委ね建設されたという、日本では初めての写真だけの美術館。開館してから25年も経つとは思えない、斬新で、新鮮で、とても気持ちの良い空間。土門の友人だったグラフィック・デザイナーの亀倉雄策(東京オリンピックのポスターで有名)の銘版や、イサム・ノグチの彫刻やベンチなど見所も多く、それ以外にも建物そのものもが美しく、周囲の景観に見事に溶け込んでいる。展示作品ももちろんのこと、実に良い建築だ。前回訪問の際には、まだ小学生だった甥っ子(前出)が見知らぬ同世代の美少女に鯉の餌をねだり、傍から見たら「おいっ!そりゃあナンパだろう!」という風景も印象に残る建物。(きっとずっと忘れないよ♪)

Photo_5弟同士の距離感も変わり、より近い存在になった。お互いに年齢を重ね、譲り合ったり、認め合ったり、ゆとりが持てるようになっただけかもしれない。しかし、確実に、母の存在がその関係を変えてくれた気がする。ありがたいことだ。故郷が、兄弟が、母の存在と死によって再構築された。それに加えて、忘れてしまっていた遠い日の故郷の夏、もしかしたらもはや貴重な古き良き日本の夏を、今年は過ごせたのかもしれない。帰路、妻が飛び立つ飛行機の座席から(デジタル機器の使用は禁止というアナウンスに違反して)鳥海山と日本海を撮影した。涙が出るほど美しい風景だった。食べ物が美味しいし、良いとこですよ、この街は。故郷で過ごした年月の倍近くの年月を東京で過ごし、自然体でそんな風に言える故郷になった。母に感謝。「あれ?またオチがないの?」・・・そんな妻にも。

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