街を愛する人たちと「街づくり会社」

烏山気楽夫婦が住む世田谷の外れの街は京王線が東西に走っている。最寄りの駅付近は未だ踏切が残り、朝夕の通勤通学のピーク時には長時間開くことがない。いわゆる“開かずの踏切”だ。それはお気楽夫婦の住む街に限らず、周辺の駅も含めた共通の課題だ。これを解消しようと、東京都建設局が京王線連続立体交差事業を進めている。それに伴い駅周辺の街づくりを改めて考えようという団体が各駅周辺の街で設立された。お気楽夫婦の住む街でも「烏山駅周辺地区街づくり協議会」として活動を行っている。一昨年、協議会が立ち上げられた時から副会長として関わっている私は、この秋、もう一歩足を踏み出そうとしている。連続立体交差事業の計画が正式に決定すれば、5年以内に工事着工となる。ハード(立体化や駅前広場などの施設)を作ってお終いでは、本来の街づくりとは違うものになってしまうリスクがある。街のソフト(運用)面でも街づくりができないだろうか。

プティポワソンこで検討をし始めたのが、街の運用面のコアになる組織を立ち上げよう、街を愛する人たちと一緒に、街づくりのための会社を設立しようというものだ。放置自転車問題、バリアフリー解消:街のユニバーサル・デザインなど、直面する課題は多い。けれどこの街には“街の資産”もある。お買物ポイント(スタンプ)発祥の街として賑わう商店街、若いパティシエが頑張っているスイーツの店、烏山寺町や芦花恒春園の緑など。いずれも街のために、街に暮らす人のために活用できる(磨きさえすれば)魅力的で大切な資産だ。それらの資産を活かし、課題を解消する方向は、排除するのではなく、共存するというもの。例えば、放置自転車をただ撤去するのではなく、自転車を利用する人の用途に合わせた施設を整備し、同時に自転車に乗る人のマナー向上も図る。人に優しく、自転車に優しい街、誰にも心地良い街を目指そうというものだ。

寺町営利型株式会社という形態がある。事業活動によって生じた剰余金を株主に配当せず、社会目的等のために再投資することを定款に定めている株式会社だ。広義のNPOとして、NPC(Non Profit Company)と呼ばれる企業の形態のひとつだ。そんな形で“街づくり会社”を設立しよう!今私はそんな動きの中心にいる。行政の出先機関ではなく、補助金だけを当てにするだけではなく、自立して継続できる事業モデルを創造し、事業活動で得た利益は地域に還元しようという会社。そこでは生計を立てられるだけの報酬は期待できない。期待しない。立ち上げからしばらくは無給と覚悟している。自分の住む、自分の好きな街が良くなることが報酬だ。そんな会社の設立に関わるために働く形を変える。企業に雇用されるという働き方から緩やかに離れ、半ば個人事業主的な働き方に変える。自由が丘での仕事で収入を得つつ、自由が丘と烏山という街のために働く。企業のためだけではなく、地域のために働く。報酬のためだけではなく、やりたいことのために働く。

手作りマーマレードはいろいろなレイヤーに属している。企業に、家族に、仲間たちの集まりに、国に、地域に、それぞれに属する自分がいる。けれど、自分の暮らしている街に、町会という組織があったり、ボランティアや社会活動を行っている団体が数多くあることを知ったり、意識する“会社員”は少ない。それを知るのは定年を迎え、地域デビューをする年代になる人が多く、現にボランティア活動の多くはそんな方たちに支えられている。ふとしたきっかけで、そんな年代になる前に、そんな「場」に出会えた私は幸せなのだと思う。そんな働き方を選択できることを、経済的なハードルがないことを、妻の理解があることを喜ぶべきなのだと思う。「新しい会社に私も出資するよ♫」興味なさそうに記事を読んでいた妻が言う。「でも、ブログの記事はもっとお気楽な方が楽しいね」はい。お気楽、ときどき真面目に、これからも記事を書いて行こうと思う。

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