読むべし!『阪急電車』有川浩

hankyudensya気楽ブログには珍しくストレートなタイトルだ。けれど、ぜひそう言いたい。読んで欲しい。秋の風が吹き始め、読書にはぴったりの季節。おススメだ。何しろ、関西出張の際にせっかく関西にいるのだからとシャレ半分で購入し、姫路のホテルであっと言う間に読み終えた。そして翌日、東京に向う新幹線の車内でもう一度読み直した。飛んでいく車窓の風景に作品の中に登場する街を探しながら。ちなみに、後で調べてみると、作品の舞台となる阪急今津線は、上りの新幹線が新神戸の駅を出るとすぐに潜る、六甲山トンネルの出口からすぐ。一瞬で通り過ぎてしまうから、新幹線からの視認は困難。地図を眺めながら、いつかその街を訪ねてみたいという思いが胸を過る。そんな気持にさせる物語。

急電車』は、一部の書店でベストセラーの上位にいるけれど、まだ知らない人も多いかもしれない。作者は有川浩(ありかわ ひろ)、高知県出身。2004年デビューのまだ若い作家だ。けれど、最初のページを開いた時から読者をぐっと惹きつける力量はなかなかのもの。宝塚駅から西宮北口駅までの8つの駅毎に小さな物語を綴り、西宮北口駅から宝塚駅までの折り返しの路線で、折り返しの物語を繋ぐ。実に巧みな構成。そして、ひとつひとつのエピソードの粒立ちが、実に良い。物語全体を包むほのぼの感、女子高校生からお婆ちゃんまで、ぴりっと魅力的な登場人物たち。片道わずか15分程のローカル線沿いの風景と相まって、柔らかい、けれど甘いだけではないストーリー。そして、登場人物それぞれの物語が絶妙に重なり合い、電車と共に進行していく。

theater川駅で新幹線を降り、大井町で乗り換えて自由が丘へ向う。大井町駅始発、溝ノ口行きの大井町線。発車間際の停車中の電車に乗り込む。最後部の車両にはベビーカーに子供を乗せた3組の親子が。あぁ騒がしそうだと隣の車両に移動する…のが、いつもの私だった。けれど、その日は親子連れのベビーカーの前に座り、3人の母親の会話に耳を峙てた。見た目は、子供を連れていなければ母親とは思えない若い3人の女の子。子供をあやしながら、フツーのOLでも交わしているような話題に、笑い合い、突っ込み合い、子供の様子や周囲の乗客の様子を伺う。騒がしくなってはいないか、子供が泣き出して乗客の視線を集めはしないか。けれど、尽きない話題。束の間、子育てを忘れ“女の子”に戻る。そんな様子が微笑ましく、そんな見方をしてしまう自分が照れくさい。

中駅で降りていってしまった3組の親子連れ。ちょっと残念。再び、手元の『阪急電車』をぱらぱらとめくってみる。お互いにかかわり合わずに、見てみぬ振り。ある意味、それが電車内でのエチケット。けれど、関わってしまった偶然と、小さな物語が転換する度に人称が変わる有川浩の絶妙な筆致は、「そんなことある訳ないじゃん!」といういくつかの偶然を、実に自然に必然と思わせる。複数の主人公たちが出会い、関わり、見られていたり、聞かれていたり。物語にあざとさがなく、設定に破綻がない。続いて読み始めた『シアター!』という小劇場を舞台にした作品もすぐに読了。これまた、上手い。物語は続いているという余韻を残し、続編を期待させてしまうところなどは、『阪急電車』と同様。

川浩、あるだけ全部買ってきたよ!」妻が嬉しそうに何冊もの文庫本を抱えている。余りにも強く薦める私を胡散臭そうに眺めながらも、2冊をすぐに読み終え、あっという間にファンになったらしい。有川浩、お気楽夫婦にとって新刊が楽しみになる作家が1人増えた。

*巧いなぁ♡ さらっと読めて素直に楽しめる1冊です♬

2つのコメントがあります。

  1. zooey


    読みましたよ!
    面白かった。
    私は特に、醒めた感じの時枝おばあちゃんが好きです。
    ご紹介ありがとうございました。

  2. IGA


    zooeyさんのコメント、素直に嬉しい!
    良いですよね、時枝さん。

    討ち入り帰りの祥子さんとのやり取りや、
    孫の亜美ちゃんがおばちゃんたちに“アヤ”を付けた際の
    やり取りが、素敵です。あんなばあちゃんに…
    (私はじいちゃんだった)なりたいと思った私でした。

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