最後の晩餐「用賀 本城」

IMG_12122010年が終わろうとしている。2010年の漢字一文字は「暑」。確かに暑い1年だった。秋は永遠にやって来ないんじゃないかという思うほど続いた残暑の後は、一気に冬だった。エコポイント効果もあり夏のエアコンは売れ続け、冬のヒートテックの売上も好調だった。長い長い夏の後は冬。これでは困る。日本の四季の良さは、寒い冬が終わった後の春の穏やかさにあり、夏の暑さを乗り切った秋の清々しさにある。春や秋があってこその夏であり、冬。四季の輪郭がくっきりしてこそ、それぞれの季節の空気や景色を味わえる。また、季節の味を楽しむことが日本料理の真髄でもあり、繊細さでもある。日本料理に限らなくとも、「季節限定」のメニューがあると思わずオーダーしてしまう日本人。季節の移ろいを愛する日本人らしさの顕れ。

IMG_1214気楽夫婦の年末恒例“お礼参り”。2010年の掉尾を飾るのは京料理の名店「用賀 本城」。オーナーシェフの本城さんがたん熊北店 二子玉川店の店長だった頃から、味わい続ける幸せの味。そして、季節ごとの美味を堪能できる店でもある。用賀に移り住んだ友人の引越しのお祝いに何が良いかと考え、広くはないであろう独り暮らしの部屋にモノを増やすよりも、彼女も大好きな本城さんの食事を贈るのがお気楽夫婦らしいだろうと思い付き、友人への転居祝いと本城さんへの年末のご挨拶を兼ねた訪問を計画。友人に打診すると、「良いねぇ。ご近所になったし、行きたい!」との返事。彼女は、開店早々に一緒に伺って、蘭の鉢をいただいて以来の訪問とのこと。

IMG_1219れど、予約が出来たのは年末、それも御用納め直前。「申し訳ありません、IGAさん。今日は電話が繋がりませんでしたでしょう」と、ようやく繋がった電話の先で奥さま。確かにずっと何度かけても通話中の音だった。聞けば、ランチは本格京料理が気軽な価格で味わえるとあって、余りの人気に翌月の予約を前月の最初の営業日に行っているからとのこと。訪問当日、早めに伺い独りカウンタでビールをぐびり。既に満席の店内。忙しそうに立ち働く本城さんの様子を眺めながら声を掛ける。凄い人気なんですねぇ。「お陰様で。ずいぶん先にならんと予約できない状況が続いてしまったものですから、そんな風に変えたんですわ」本城さんが申し訳なさそうに答えてくれる。気取らず、奢らず、柔らかな物腰の本城さんの人柄も人気の理由。

IMG_1222くなっちゃってごめんなさい」年末の慌しさから抜け出してきた友人。席に座るや「今日はもうっ、楽しみで楽しみで♪」戦闘モードが解かれ、リラックスモードの笑みが零れる。今年もお世話になりました。乾杯の後は、ノンストップトークが炸裂。「ところで今年も年末は浜松に行くの?」と友人の問い。うん、お節料理を頼んでいる弁いちさんという料理屋の手作りカラスミが美味しくってねぇ・・・。「では、立派なとこ切りましょうか」会話を聞いていた本城さんが、やはり手作りのカラスミを盛り付けてくれる。んんっ、んまい。甲乙付け難い美味。素晴らしい。人生最後の晩餐は、きりっと冷えた日本酒にかりっと焼き上げた穴子の白焼きと決めていたが、カラスミと辛口の酒の組合せも捨て難い。今年最後の晩餐は本城のカラスミ。そして新年最初の晩餐は(たぶん)弁いちのカラスミ。んふふっ、こんな人生も悪くない。

ぁにゼータクなこと言ってるの。悪い訳がないでしょっ!」本城さんの料理を幸福そのものだと言い切る妻が突っ込む。それはそぉだね。最後の一皿まで美味しくいただき年末のご挨拶。良い年をお迎えください。「えっ!何?ご馳走してもらえるの?えっ!」友人のリアクションがやけに大きい。あれ?そう言わなかったっけ?「感激ぃ!嬉しいぃ」そこまで喜んでいただくとお招きした甲斐があるというもの。来年もぜひご一緒に。季節の美味を、気の置けない友人と一緒に味わう楽しみ。お気楽夫婦が最も幸福と感じる時間。こんな相変わらずの2人を、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

■食いしん坊夫婦の御用達へ 「用賀 本城」お店のご紹介

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