午餐の誤算「PLATINO自由が丘テラス」
2011年 2 月26日(土)
自由が丘ランチでおススメの店はいくつもある。例えば、大きな窓ガラスの向こうを通る大井町線の電車を眺めながら、明るい店内でまったりと過ごすならLOBROS。自由が丘マダムたちのおしゃべりの喧噪の中で美味しい上海料理を召し上がるなら状元樓。今日は和食でという気分の日は、混雑する時間をずらして仁松庵。そして、お子様連れの奥さま同士で盛り上がるならプラチノ自由が丘テラス。ある“平日”の昼下がり、プラチノのベストシートである窓際のコーナー席で、学生時代からの友人とのんびりランチ。桜の蕾はまだ硬いけれど、桜並木を見下ろす窓際の席には日射しが注ぎ、とても暖かい。彼女は長く勤めている外資系航空会社を休職中。30年近く働き続けた澱が溜まり、ぶくぶくと冷たい水の中に澱と一緒に沈んでしまっている。
まずはきりっと冷えた白ワインで乾杯。「今日はありがとう。たまにこうやって出かける予定があると、少し元気になるんだ」そんな殊勝なことばを吐くのは普段の彼女らしくもない。「うん、美味しい♫昼から飲むお酒は一段と美味しいね」こんな時、自分の仕事に感謝する。自由時間出勤制と顧問契約先との契約書に明記しており、出勤時間、退出時間、お休みは基本的に自分の裁量次第。契約先の期待に応え、結果を出しさえすればOK。メリハリのある時間設定で勤務。その日もランチを終えた後は自宅に戻り仕事をする予定。少々のワインで顔が赤くなっても大丈夫。オードブルをつまみ、ワインをぐびり。こりゃ〜確かに旨い。暖かい窓際の席で冷えたワイン。喉にも美味しいゼータク気分。
「う〜ん、どれも美味しいね」トマトのパスタ、チーズとバジルのリゾットをシェアしていただく。飲み、食べ進み、溜まった澱を吐き出すにつれ、ようやく元気になってきたらしい。2人は、思い出すと恥ずかしいぐらい青く若かった頃からの付き合い。仕事の話からようやく離れ、昔話で笑い合う。「そうそう、今の家を改築してお茶室を作るのが夢なんだぁ」そんな前向きな話に耳を傾ける。良い感じだ。「でも、茶室をせっかく作っても、自分がすぐにいなくなっちゃったら、ダンナにも子供たちにも申し訳ないかなぁ、って」せっかくのポジティブ傾向が一気にネガティブに向う。なかなか病巣は深いところにあるようだ。30年もの間、客室乗務員や成田空港での地上勤務を経て、現在の担当を長く勤め、2人の子供を育ててきた彼女。茶室ぐらい自分にプレゼントしても罰は当たらない。
「そうだねぇ。お茶室にいると、なんだか落着いて体調も良くなるんだよねぇ」そうだ、いっそ全室をお茶室にしたら?リビングも、ベッドルームも、ぜ〜んぶの部屋に「にじり口」を作って…。2人笑いながら改築話で盛り上がる。「ねぇ、もう1杯飲んで良いかな?」ん、ワインで元気になるんだったらお安いもんだ。けれど、これで仕事を再開する時間は遅くなったなと諦める。「デザートも食べる?ショーケース見てきて良い?」プラチノ自慢のアンジュとモンブランが気になるらしい。良かったら両方どうぞ。「うん、嬉しい!カプチーノも飲みたい」…食欲があるのは良いことだ。スイーツで元気になるんだったら、それも良し。
「うん、すっかり元気になった。今日はホントにありがとう♡」時間は3時を回り、自宅に戻って仕事をする予定の時間を過ぎてしまった。ある“平日”の、のんびり午餐の誤算だった。