エンタテインメントはステキだ♡『図書館戦争シリーズ』有川浩
2011年 7 月18日(月)
読むのを楽しみにしていた作品があった。有川浩の『図書館戦争』シリーズ。作者の有川浩は最近公開された映画『阪急電車』の原作者。映画の評判は今ひとつだったけれど、それによって原作の魅力が削がれるものでもない。小説作品としての『阪急電車』は、登場人物たちの魅力が短いエピソードの中で輝く、実に良い作品だった。その1冊を読んだ後、お気楽夫婦はあっという間にファンになり、文庫化された全ての作品を読んでいた。その有川浩がブレイクしたきっかけになったのが『図書館戦争』シリーズだと聞いていた。それにしても、図書館と戦争という異質なことばがなぜ結びついているのか?図書館を舞台にしている戦争なのか?図書館同士の争いの物語なのか?物語の内容に予備知識を持たずに読み始めた。…そして、はまった。
5ヶ月連続で角川文庫から刊行され、6月までに本編4冊が既に発刊された。そして全てがベストセラーランキングの上位。7月、8月にサイドストーリーを描いた別冊が刊行され、シリーズが終了する予定だ。その角川書店の策略に、見事に絡めとられた。まずは、4月に刊行されたシリーズ1作目『図書館戦争』で、その設定の奇抜さと大胆さ、そして物語の緻密な構成と、何よりも登場人物たちに魅了されてしまった。2作目『図書館内乱』で、脇役にスポットライトが当てられたエピソードによって、物語にさらなる深みと広がりが生まれ、物語の世界にずぶずぶと浸った。物語の展開に感情移入しまくり。この頃になるとご贔屓のキャラクターが生まれ、その登場人物の視点でストーリーをハラハラしながら見守った。
3作め『図書館危機』を読み始めた頃には広がる物語の裾野の大きさに驚きながら、涙するエピソードに心を震わせる。差別用語の取扱を巡るエピソードに背筋がひやっとする。表現の自由を脅かす公的組織の検閲から、図書館という組織により表現の自由を守るという架空の物語に、現実世界が重なってくる。そして第4作『図書館革命』での大団円。読み終えてしまう淋しさを感じながら、物語世界がどこかで続いているという確信に近い幻想を覚えるほど、登場人物たちが物語の中で生きている。登場人物のひとりひとりが、読者に過ぎない私の頭の中を動き回っている。それも、全員が身近なキャラクターとして。
芥川賞に象徴される“純文学”という死語に近いジャンルがある。“大衆文学”というこれまた死語になっているジャンルに対する直木賞との比較において、純文学が優越的な見方をされることがある。さらには、ライトノベルというジャンルに対しては卑下する見方すらあり、マンガに至っては同じテーブルの上に載せてさえもらえない。芸術と娯楽という2極は対立するものではないし、商業的であるから否定されるものでもない。作者の有川浩がライトノベル出身の作者であることや、この『図書館戦争』シリーズの表紙を見て、手に取るのを躊躇う人がいるかもしれない。けれど、騙されたと思って読んで欲しい。
この作品は、素晴らしくステキなエンタテインメントだ。
物語の行間を読者に委ねるだけではなく、登場人物たちの呟きを敢えて文字として書く。マンガの小さな吹き出しのように。巻頭に登場人物たちのシルエット付きの紹介文がある。会話に勢いがあり、話ことばの選択にリアリティがある。たぶん賛否両論も、ある。けれど、各作品の巻末にある作者と故児玉清さんとの対談に、この作品の魅力が増す2人のことばが溢れている。
「まだあと2冊出るんだね」すっかり有川ファンとなった妻。彼女はまだ3作めを読んでいる途中。ネタバレしないように、ていねいに丁寧に記事を書いた。「バレたってヘーキだよ!」巻末の解説から読み始める妻。最後の1行を楽しみにする私。読書スタイルは違うけれど、この作品世界に魅せられたのは同じだ。
*素晴らしくステキなエンタテインメント♬ おススメです♡