Archive for 12 月 21st, 2014

五感で味わう京料理「用賀 本城」

Hire末のご挨拶を兼ねて食事に伺おうと「用賀 本城」に電話をすると、女将さんの元気な声。年内は平日の1日だけカウンタ席が全て空いているけれど、他の日はほぼ満席だと言う。その奇跡的な1日にお気楽夫婦2人分の予約をお願いし、せっかくだから友人たちを誘ってみると答えると、「今でしたら貸切もできますよぉ」と返される。幹事体質の私に火が点いた。さっそく食いしん坊な仲間たちに声を掛けると「調整してすぐに返事します←行く気満々(^^)」「やった!その日は忘年会がない。行きま〜す!」などとあっという間にメンバーが揃った。まだ空いてますかと追加の電話をすると、「大丈夫ですよぉ。実はIGAさんのことだからって、7人分席を押えておきましたから」と女将さん。それってカウンタ席全部じゃないですか(笑)

Uni&Ankimoらっしゃいませ。IGAさん、さすがの動員力です」と女将さんに迎えられる。いえいえ、本城さんの料理の美味しさを知っている友人たち故。何度もご一緒している友人たちは、他のどの店をお誘いするよりもスケジュール調整に力が入るらしい。「僕にとっては今一番好きな店です」と新進気鋭(ちょっと改名)の建築家。「ありがとうございます。それは嬉しいですね」と本城さん。すっかり友人たちも顔なじみ。寒くてもビールで乾杯。その後は本城さんの「今日はひれ酒ありますよ」の声に、全員がひれ酒をチョイス。女将さんが炙ったヒレを浸けた熱燗の蓋の隙間から火を付ける。ぼっと小さな炎があがり(何度か点火に失敗したのもご愛嬌)香しい酒ができあがる。目と音で楽しみ、温かさを歓び、香りと旨味を五感で味わう冬の酒。

Seiko城さんの料理も五感で楽しむ京料理。季節毎に趣向を凝らした器や盛付けを目で愉しむ。季節を感じる食材の歯応え、舌触りに刺激される。パリパリと、カリカリと、食材が口の中で軽やかに奏でる音を悦ぶ。ある時には王道たる食材の組合せに納得し、ある時には大胆な食材の組合せに驚く。繊細な味付け、香りを堪能する。例えば、その日の食材のセイコガニ。地方によっては背子ガニ、香箱がにとも呼ばれるズワイのメスがに。内子と蟹ミソを和え、脚の身と外子を添え、甲羅の内に盛り付ける。オーソドックスな料理でありながら、絶妙なバランスで味付けされた小宇宙。外子のプチプチ感、内子と蟹ミソのねっとり濃厚な味わい、旨味が溢れる身とが口の中で優雅に踊る。思わず目をつむり味わうことに集中し、そして思わず微笑んでしまう。

Karasumiんだか幸福だわぁ。やっぱり和食は良いよねぇ」ワシントンD.C.から帰任したばかりのマダムが婉然と微笑む。どうやら潤んだ瞳は調子に乗って飲んでいるヒレ酒のせいらしい。寒い季節に味わう美味しい京料理とひれ酒。冬のマリアージュ。ついつい飲み過ぎてしまうのは彼女だけではなく、みんな(私も含め)良いペースでヒレ酒を飲んでいる。シメの料理をいただいた後にもひれ酒が残ってしまった。それを見ていた本城さんが「まだ完成前ですけど」と自家製のカラスミをオマケに出してくれた。炙ったカラスミの艶っぽく上品な香り。ねっとり甘く、絶妙な塩加減が舌に絡み付く。紅芯大根のサクサク感で中和し、口の中にカラスミの余韻を残しつつ、そこにヒレ酒。ん〜、たまらん。それにしても美味しいぞ、世界に誇る無形文化遺産、和食。

Member度の赴任先には美味しい和食の店があるかなぁ」と、カラスミをちびちびと味わいながらマダムが呟く。不安げながらも前向きな彼女。「そぉか、ちょくちょく日本に帰ってくれば良いか」おっしゃる通り。この「用賀 本城」ならではの楽しみは季節に一度は味わいたい。ぜひ帰国の際にはこのメンバーで、本城さんの料理を味わおう。「お店全部で貸切もできますので」そう言いながら、女将が柔やかに送ってくれた。はい、いつか、ぜひ。

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