目指せ!歴爺♬『清須会議』

KiyosuMovie年早々に体調を崩し、悪寒、倦怠感、喉の痛み、鼻水…これはもしかしてと悪い予感が胸を過る。昨年のインフルエンザ罹患の経験から、早めに病院に行った。すると、「あぁ喉が腫れてるねぇ。風邪ですね」と検査もされず、抗生物質をはじめとする数種類の薬を処方される。ちょっと肩透かしながら、ほっとする。ところで、風邪の特効薬があったらノーベル賞ものだと言われる程、風邪に効く薬はない。喉の痛みや熱を抑える薬は、所詮対処療法に過ぎない。風邪を治すには自己治癒力によるしかない。安静が一番。ということで、仕事を休み、昼食用のうどん、ネギ、卵などを買い込み、お籠もり用DVDをレンタルしようと「TSUTAYA」に向かった。熱でぼ〜っとした視線の先に目に付いたのは、三谷幸喜の原作、脚本、監督作品『清須会議』。

作は既に読んでいた。予告編を観て面白そうだと思った記憶もある。本能寺の変の後、織田信長の後継を決める会議が「清洲城」で行われたという史実に基づいた話だったはず。サスペンスもので冷や汗が出ても風邪に悪そうだし、お気軽に笑える三谷作品だったら興奮して熱が上がることもないし…と、借りてみた。冒頭、本能寺での信長最期のシーン。信長は元「花組芝居」の篠井英介。バタ臭く、ちょっと男色の香りもする彼にぴったり。小さなくすぐりシーンも三谷らしく、ふふふと笑ってしまう。ほほぉ、秀吉は大泉洋か。聡く、小ズルく、ムダに明るく、軽く、現代に秀吉が生きていたらこんな感じだろうなぁ。役所広司が柴田勝家か。大泉洋の秀吉と対照的に、激情型で、思い込みが激しく、不器用で、真っすぐ。戦場では活躍できても政治を任せる訳にはいかないタイプ。この3人のキャストだけでも、ぐっと“三谷ワールド”に引き込まれてしまう。他のキャストも豪華で巧い。

KiyosuMeeting作では、脚本のように「プロローグ 天正十年六月二日 朝 燃えさかる本能寺本堂における、織田信長断末魔のモノローグ(現代語訳)」などというくだりの後に、熱いな。だいぶ熱くなってきた。…などと、書き進められる。わざわざ現代語訳と記すように、時代設定は当然安土桃山なのに、語り口は現代のことば。映像の中でも、登場人物たちは軽やかに現代人の、それも今現在のことばで語る。武将たちが尾張弁で談笑し、号令をかけ、叫び、脅し、文句を言う。現代語の時代(喜)劇。これは面白い。取っつき易い。登場人物たちの名前は聞き覚えがあるし、人物造形は的を得ていそうだけれど、関係が良く分からない。あまり時代小説は読まなかったし、時代劇は苦手だし、大学受験は世界史だったし。にも拘らず、俄然興味が湧いて来た。

木京香演じるお市の方も名前だけは知っていた。というか聞いたことはあった程度。信長の妹であり、浅井長政に嫁ぎ二男三女を生す。ところが、夫や息子たちが織田側(秀吉)に殺され、お市は娘たちと清洲城で庇護を受けていた。その戦国一の美女と賞されたお市に思いを寄せるのが、勝家と秀吉。2人の愛情表現がまた対極的で、独りで観ているのに声を出して笑ってしまう。そしてお市は秀吉への当てつけで、さして好きでもない柴田勝家に嫁ぐ…のは、史実の上に三谷幸喜の脚色が加わって、ありそう!と理解し易くなる。歴史には諸説あり、歴史学者ではないから、興味深い説の方がエンタテインメントとして楽しいに決まっている。

画を観終わり、原作を読み返し、登場人物をぐぐる。なるほど、なるほど。複雑な戦国時代の人間関係を学び、その後の豊臣家の行く末を嘆き、徳川家康のポジションに納得する。お市の方の長女、茶々は秀吉の側室となった淀殿だったのか!末娘の江は徳川家の2代将軍秀忠の正室となって3代家光の母となっているんだとか、日本史をきちんと学べば当然知っているはずのことが、新鮮な知識として実に楽しい。ゆったりと自宅安静の名の下に、原作と、映画と、日本の歴史を愉しんだ時間だった。なんだか引退後の楽しみを新たに見つけた感じ。どうせなら、歴女ならぬ、歴爺さんでも目指そうか。

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