要注意!中毒性あり〼。「萬来軒」

Oyster来軒に行きたいです!」スカッシュ仲間の小顔美女のリクエストが入った。この夏、同じくスカッシュ仲間の役員秘書から同様のオーダーがあり、小顔美女も一緒に初訪問。すっかり気に入っていただき、すぐにご両親と再訪したという。30年近く通っている地元の名店。美味しいと言ってもらえれば我がことのように嬉しい。そこである週末、仲間たちを誘って萬来軒に向かった。「あれぇ、予約今日だっけ?」とオバちゃんに迎えられる。げっ!間違えた?店はまだ早い時間だというのに、テーブルひとつを残し既に満席。瞬間、では他のどの店にしようかと逡巡。「あぁ、ごめん、ごめん。他のお客さんと間違えちゃった。再来週も予約入ってたわよね」ふぅ。相変わらずのオバちゃんのすっとぼけ振りが良い。まずは安心してビールで乾杯。

Mabo川水餃子などの定番メニューを堪能し、飲物はビールから瓶出し紹興酒へ。この紹興酒がまた絶品。常温でその風味を堪能。そこに牡蛎の甘辛炒めが登場。「うわっ!美味しいぃ〜っ♬」小さな悲鳴のような感嘆の声が上がる。生唐辛子の辛味、牡蛎の甘みと旨味、そして酸味などの複雑な味の組合せ。それが皿の上で一体となり、実に繊細かつ絶妙なハーモニーを奏でる。言うことなしの味。「ひとり2ヶにしとくね」とオーダーの際にオバちゃんに言われた時、いや3ヶ、いやいや4ヶに!とお願いするんだったと後悔。またすぐに食べに来たくなる味。そしていつもの通りに四川麻婆豆腐。この中国山椒がピリリと利いた痺れる味が病み付きになる一皿。ご飯との相性も抜群。「癖になる味だよね」「そうそう、ふっと食べたくなるの」感想は全員一致。

Okoge海ガニに代わって登場したのは五目おこげ。この季節、例年なら皆で集まって上海ガニを楽しむのが恒例。けれど、事前調査と称して萬来軒を訪ねた際に、「今年はものすごく高くてねぇ。中国の空気や水も汚染されてっから、どうしようかと思ってねぇ」と厨房担当のオジちゃんのコメント。だったら今年は諦めて他の料理で楽しもう!という趣向。かりっと揚がったおこげに、熱々の餡を掛けるジュッ、ジュワ〜ッという音が食欲を刺激し、目でも香りでも場を盛り上がる一品。「これも美味しい♫この店は久しぶりだから楽しみにしてたんだぁ」と、アスリート系女子もご満悦。

Banraiken日はどうだったですか」調理も一段落。一息入れたオジちゃんが席に来てくれた。「今日も美味しかったです♬」好き嫌い選手権に出場したら敗戦確実の、食べられない物が多い銭湯のお嬢様が笑顔で答える。四川料理などの刺激の強いモノは苦手かと思いきや、夏に続く連続参戦。「辛いもの大好きですぅ。でも貝はダメ、牡蛎は大好き♡」彼女の好き嫌いは法則性がないことを一同納得。そんな彼女をも虜にするオジちゃんの絶妙な料理は、どうやら中毒性があることが明確になった。そしてオジちゃんを囲んで記念撮影。メンバー全員が満足の笑顔。

していつものように、2次会は「BAR808」へ。おつまみはご近所の名パティシエ、マコちゃんのチーズクッキー。飲み足りないメンバーはワインを、その他のメンバーはコーヒーを。どちらにも良く合う、上品でいて濃厚な味と香り。これまた中毒性あり。年に数度、こうしてご近所の絶品中華、絶品スイーツを味わうために集まる仲間がいる。こんな場もまた嬉しい中毒性があるのかもしれない。

美味しい♡で人を繋ぐ店「広東料理Foo」

2011.11.1Fooの店ができた後、お気楽夫婦の外食行動エリアが変わった。それまでは渋谷、六本木、恵比寿を結ぶトライアングルが主な遠征先だった。「SILIN火龍園」「中国飯店」「ティオ・ダンジョウ」「マデュロ」などに足繁く通った。その時代、2011年11月1日以前をB.F.(Before Foo)と呼ぶ。そして、世田谷線松陰神社前に「広東料理Foo」が開店した後、2人の行動エリアは渋谷を起点に反転。渋谷、松陰神社前、桜上水という地味〜な三角地帯となった。Foo以外には、「ビストロ・トロワキャール」「さかなの寄り処てとら」がその中心となった。その時代をA.S(Anno Shin-chan」と呼ぶ。

SanmaAlsaceA.S.2年1月1日(A.D.2013年11月1日)、お気楽夫婦は「広東料理Foo」に向かった。おめでとうございます!出迎えてくれた店長ねもきちくん、オーナーシェフの慎ちゃんに声を掛ける。お祝いにはショコラティエ・ミキのボンボンショコラ。いつものように入口寄りのテーブルに案内される。ねもきちくんとコミュニケーションを取り易いベストシート。お祝いということで、最初の1杯はスパークリングワイン。そして、頭まできれいにいただけるサンマのコンフィを堪能。中華ビストロを標榜するFooならではの一品。ほろほろと身が解け、きりっと冷えたワインとの相性も良い。

MaconVillageShangHaiCrab海ガニは行きますか」ん〜今年のカニは高いんだよね。「そうなんですよ。ウチもお客様から要望があってという感じです」やはり。とは言え、食べておきたい季節もの。カニの卵と豆腐の煮込みをオーダー。2杯めのアルザスのリースリングはあっという間に飲み干し、マコンヴィラージュのシャルドネをいただく。この店は中華料理にビール、紹興酒ではなく(もちろんメニューにあるし、言うまでもなく美味しいが)ワインが豊富に用意され、時には日本酒を勧められることがある。それを仲間たちとわいわい飲んで楽しめる、まさしく中華ビストロ。このスタイルがすっかりお気に入り。

TakasagoNemokichi日はグルクンも入ってます」沖縄の県魚でタカサゴの別名。おめでたい時に食べられる魚だ。ではと、この店の看板メニュー「清蒸鮮活魚(鮮魚の広東式姿蒸し熱々油掛け)」をオーダー。ねもきちくんの前職の店舗「SILIN火龍園」で、彼と話をするきっかけにもなった記念の料理でもある。グルクンを取り分けるねもきちくんを撮影。目線ちょうだい!とリクエストすると、全くテレずに顔を向ける。彼の接客は、客との絶妙な距離感、料理や酒に関する話題と知識、気遣いが心地良い。これで照れ屋のシェフ慎ちゃんの料理の味が倍加する。それが店の魅力となっており、2人の組合せは良いバランス。

味しかったぁ♬」妻が満足そうに、そして余りの満腹で苦しげに呟く。さすがに小食の2人で清蒸鮮活魚は食べ過ぎ。けれど2人は、膨れたお腹以上に幸福感で満たされていた。この店から始り、“美味しい”で繋がった仲間や店が増えた。“美味しい”は人を幸福にし、人を近づけ、人と人を繋げて行く。その起点となった店、広東料理Foo。これからもよろしく!と店を出た。

読書の日々〜文学と歴史『終わらざる夏』浅田次郎

Asada書の秋。最近本の読み方が少し変わった。例えば、浅田次郎の『終わらざる夏』。今年の夏に南の島で読んだ、遥か北の島の物語。日本固有の領土である北方四島のさらに先、千島列島の北端「占守島」で起きた史実に基づく小説。1945年8月、太平洋戦争が終わった直後に、“始ってしまった”戦いの理不尽を描く。単純な歴史小説ではなく、虚実を巧みに組み合わせ、複雑な背景を整理しつつ、多彩な登場人物を活き活きと物語の中で生かし、戦わせ、亡くして行く。浅田次郎ならではの物語世界に紡ぎ直した傑作。余り戦記物は読まない私が、一気に読んだ。けれど、読み方が変わったというのは、戦記物を読んだということではない。ここからだ。

Shimushu田節に良い意味で騙され、楽しまされた。けれど、どこまでが史実なのか。どこからがフィクションなのか。それが気になった。北端の島に突然攻め入り、その島を含めた島々を平然と占拠してきた彼の国が余りに不当に思えたのだ。調べてみると、占守島の戦記は多くの人が残していた。その中で、客観的と思え、文庫化されていた大野芳『8月17日、ソ連軍上陸す』を手に取った。多くの人に取材し、参考文献を読み込んだそのノンフィクションは、比較的読み易く、これも一気に読み終えた。そして、浅田の作品は大きく歴史的事実を逸脱するものではなく、ロマンティストたる浅田の創作が重ねられているだけだと分かった。なるほど。こんな読書もあるかと得心。

Subaruはその前に、浅田次郎と史実に関する伏線があった。『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』『マンチュリアン・リポート』と続く、浅田次郎の中国ミステリーロマン(?)シリーズを全巻読み終え、その当時の時代背景をどうしても詳しく知りたくなったのだ。そこで購入したのが講談社の中国の歴史全12巻の内、第10巻『ラストエンペラーと近代中国』、そして第11巻『巨龍の胎動』の2冊。これが実に興味深く、浅田の作品を読み返しながら、どちらもじっくりと楽しめた。今の日本を取り巻く隣国との関係を実感することができた。日本人が中国に対して想起する感情の源泉も、その逆に中国人が日本に抱く感情の原因も、自分なりに理解できた。

History of China本の教育における日本史や世界史の位置付けは、現在自分たちが生活する“今”に密着していない。過去から始まり、現在に続く近代史、現代史に到る前に学年末を迎えてしまう。なぜ現在の自分たちが暮す日本がこのようにあり、隣国や世界各国とはどんな関係があるのか。それが重要ではないかのように扱われる。敢えて避けているかのように思える程に。縄文時代にどんな場所に住みどんな暮らしをしていたのか、聖徳太子や中臣鎌足、蘇我一族の大化の改新の物語も興味深い。けれど、現在の自分たちの立地点の“なぜ?”の方がもっと重要ではないか。彼の国々の偏狭歴史教育も問題だけれど、日本の歴史教育はもっと違う次元の問題を抱えている。

本で何が起きていた頃に中国では…とか、またその頃ヨーロッパでは、という感じで章が変わったりして分かり難かったなぁ」と妻。おっしゃる通り。いっそ、アメリカのSFTVドラマ『タイムトンネル』(古っ!)のように、現在を起点に過去に戻り、という編集方針で歴史の教科書を作ったらどうだろう。ん、その方が絶対に面白そうだ、独り納得する秋の夜だった。

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