2020年にインバウンド観光客4,000万人!というのが日本政府の目標だった。2019年の実績は3,188万人。2003年に観光立国を目指すと宣言して以来、2018年までの15年間で来日観光客は6倍に増えた。ところが、2019年は日韓関係の悪化で韓国からの訪日客が激減し、対前年2.2%の増加に止まった。そして2020年、新型コロナウイルス拡大防止のため各国は渡航を制限し、予定されていた東京オリンピックは延期された。
事実上、これで訪日客の目標達成は不可能となった。さらに、国内においても都道府県を越えた移動の自粛要請により、観光産業は惨憺たる状況だ。ところで、2019年の訪日客の消費額は4.8兆円に対して、日本人の国内観光消費額は22兆円、さらには日本人が海外渡航で消費する金額は1.1兆円(2018年:国内消費分)もある。つまり、地元での観光・旅行=マイクロツーリズムが国内観光産業を救える可能性があるのだ。GO!
「ホテルに泊まりに行こう!」緊急事態宣言が解除された日、ホテルジャンキーの妻が宣言した。都内から出るのは避けたい。広い部屋で、クラブラウンジとジムがあって…と選択した結果、「ウェスティンホテル東京」が残った。宿泊は約20年ぶり、お気楽夫婦が行きたかったホテルのジムが軒並み休業中だったが故の、消極的な選択。とは言え、決め手となったのは「グランサイズ恵比寿ガーデン」というジムの存在だった。
「グランサイズ恵比寿ガーデン」は今でこそコナミスポーツの傘下に入ったが、以前はサッポロビールが保有していた超高級クラブ。月会費は約3万円以上、同伴ビジターですら6,500円!という破格の施設。それだけに施設は豪華で、クラブハウスまである。それがウェスティンに宿泊すると2,500円で利用できるのだ。…宿泊費は高いけど(汗)。そしてもちろんお気楽夫婦が利用したかったのは、2面あるスカッシュコートだ。
クラブのある「恵比寿ガーデンプレイス」は、ヱビスビールの工場があった場所。ちなみに、恵比寿に工場があったからヱビスビールなのではなく、ヱビスビールの出荷のために、最初は貨物駅として恵比寿駅ができ、後に周辺の地名も恵比寿になった。そう言えば、ガーデンプレイス着工前に、工場跡地が「ファクトリー」という期間限定のスペースになり、古巣のぴあが毎年恒例の創業記念イベント会場にしたこともあった。
サッポロビールの本社はガーデンプレイスにある。私は黒ラベルもヱビスも大好きだし、箱根駅伝のスポンサーでもあるサッポロビールの好感度は高い(当社比)。スカッシュで汗を流した後に、「WINE MARKET PARTY」に立ち寄ると、ビールコーナーはサッポロ商品一色!!。さすがサッポロビール城下町。何本か買い求め客室へ戻る。ぷはぁ〜っ!と昭和初期に人気だったと言う限定発売の「サクラビール」を飲み干す。旨し。
恵比寿ガーデンプレイスには多くの飲食店が入っており、中でも「ジョエル・ロブション」は超の付く有名店。けれど高級フレンチの料理は小食のお気楽夫婦にとっては余りに量が多く、残念ながら未訪問。行ってみる?との問いにも妻は「きっと食べきれない(涙)」と断念。代わりに伺ったのは「ロティサリー・ブルー」というお手軽フレンチの店。2人の好物のお気軽で本格的な蕎麦粉のガレットをいただく♬
「美味しいね。これぐらいのボリュームでちょうど良いね」と妻も笑顔。美しい夜景とデザートのチーズケーキを味わいつつ、恵比寿の夜を堪能する。こうしてご近所の旅、恵比寿とサッポロを味わい尽くすマイクロツーリズムの夜が更けていった。移動の時間も交通費も軽く済み、地元の歴史と地元の味を楽しむ。遠くまで行く必要もなく、“旅”することができる。良いじゃん、ご近所の旅。良いじゃん、マイクロツーリズム。
「ん?ウチは前からこんなことしてなかった?」ん、してた…。
飛騨牛がやって来た。丸い缶に詰められて、6缶セットで。ギフトカタログから選んだ「キッチン飛騨」という飛騨高山の老舗ステーキレストランの「黒毛和牛ビーフシチュー」という美味しい到来物だ。このギフトカタログで商品を選ぶ行為が大好きだ。明からさまに価格はわかってしまうけれど、全国の名産品を自宅に居ながらにして選んで味わうことができる。贈る側が選ぶのではなく、贈られる方が選べる合理性が良い。
大阪からイベリコ豚もやって来た。創業85年のイベリコ豚専門店「スエヒロ家」の生ハム。イベリコ豚専門というのが驚きだが、調べてみると他にも同様にイベリコ豚専門の店が各地にあることを知った。さらにこの店を調べてみると、実店舗は大阪府池田市の石橋商店街にある、何の変哲もない小ぢんまりとした肉屋。きっと私は訪れることがない店だ。それがネットで我が家に生ハムを届ける商売をやっている。凄い時代だ。
生前はきっとお互いに会うこともなく、出自も国籍も違う、飛騨牛とイベリコ豚の出会いを演出してみた。飛騨牛のビーフシチューは温めるだけ、イベリコ豚はサラダとして野菜と合わせるだけだから、出会いの場の演出はいたってシンプル。存在感がある飛騨牛は、缶詰類にありがちな「あれ?肉はどこ?」といった寂しさがない。イベリコ豚もドングリの甘い香りを堂々と主張し、野菜とも馴染んでいる。どちらも旨し。
食べきれなかったイベリコ豚は、さっそく翌日に形を変えて登場していただいた。カリカリのバゲットとクリームチーズと組み合わせたバゲットサンドだ。これも料理と呼べる程のものではなく、3色のアスパラガスに主役を譲る名脇役として。アスパラにはオランデーズソースでしょうとメニューを考えた時に閃いた。さらに翌朝にはお気楽妻が大好きなあのメニューに挑戦だ!そして必然的にスモークサーモンのサラダが加わる。
人によって、量はこれだけ?ランチメニュー?それとも前菜だけ?と訝しがられるだろうラインナップが、少食のお気楽夫婦にとっては立派なディナーになる。メインは何?という問いには、アスパラガス!と迷わず返す。それぞれ歯応えと味わいが微妙に違う、白、緑、紫(茹でるとほぼグリーンと変わらない色合いが残念)の3色のアスパラを濃厚なオランデーズソースで楽しむ。今が旬のアスパラトリオは堂々たる主役だ。
翌朝、いよいよ家庭では不可能と言われた(当社調べ)エッグベネディクトの登場だ。この一皿のために前夜のメニューがあった。マフィンをカリッと焼き上げ、ポーチドエッグとたっぷりゼータクに乗せたスモークサーモンの上にオランデーズソースをかける。コーヒーとミルクティを淹れつつ、サラダと一緒に完成したエッグベネディクトを盛り付ける。この一連の工程を同時進行で行い、何れも熱々の内に出す事が難しいのだ。
最も気を使ったのは、ポーチドエッグだ。コーヒー用の紙フィルターに卵を割り入れ、鍋の側面に貼り付けるように茹でよ、とネットでどなたかが教えてくれた通りに挑んだものの、初挑戦にして本番。Let’s try it ! と2人分の卵を投入。茹で加減と見栄えも含めたポーチドエッグの出来が決め手だ。そして、フィルターの形状によってラグビーボール型になってしまったものの、無事に完成。ソースをかけてしまえば大丈夫。
「おぉ〜っ!美味しそうだ!」起き出して来た妻が、歓喜の声を上げる。大好物の料理の前ではさすがにテンションが上がる模様だ。そして、卵にナイフを入れると、トロリと黄身が流れ出す。グッジョブ!上手く行った。「これはもはや家庭の味ではないね♬」妻も絶賛。贈っていただいた牛と豚から始まったチェーン・クッキングは、これにて無事完結。幸福をもたらしてくれた到来物だった。またいつでもお待ちしてます♬