
香港を味わう。それがお気楽夫婦がプライベートで訪れる7度目の香港旅行のテーマだった。6泊7日で訪れることができる店は限られる。けれど、妻が作成した“香港で訪れるべき店”のリストは長い。困った。その上2人はミッション遂行のためには致命的とも言える欠陥を抱えていた。2人とも小食なのだ。食いしん坊ではある。私は酒飲みでもある。メニューを見れば、これも食べたい!それも美味しそうだ!昼からビールだ!シャンパンだ!となる。…なのに、残念ながら2人だけでは何種類もの料理をオーダーすることはできない。かつて訪れた香港で、食べ過ぎで何度も体調を壊した。そこで考えた。最も行きたい店は何度も訪れる。きちんと食べたい店にはランチで訪れる。そんな作戦。ランチであれば点心メニューをいくつかと、小さめのポーションの料理を組み合わせることができる。よしっ!これだ♬

香港で最初のランチに選んだのは金鐘(アドミラリティ)にある夜上海(ye shanghai)という上海料理の名店。前々回に香港を訪れた際に食べた上海がにが、未だに夢にまで出るという妻のリクエスト。中でももう一度食べたいとオーダーしたのが蟹粉醸蟹蓋(上海がにの甲羅詰め焼き)だった。この店、以前は銀座にも支店があったが残念ながら撤退。なおさら恋しさが募る。甲羅の中にゼータクに詰まった蟹の身と蟹卵。卵白と合えてカリカリに焼いてあり、ほじくるとジュワーっと脂が溢れ出す。そこをすかさずスプーンで少量掬って味わう。ん、んまいったら!ビールをぐびり。幸せ。「これが食べたかったんだよねぇ♬」と、妻も満面の笑み。他にも牛肉の角切りをカリカリのライスコーンで巻いた一皿、上海春巻、サヤインゲンと筍炒めなど優しい味付けの洗練された料理を味わう。接客の粗さも我慢できる味に満足。

翌日の店は、アイランド・シャングリラ ホテルにある夏宮(summer palace)という広東料理の有名店。モダンなデザインの夜上海と違い、いかにもホテルの中華料理店!という店構え。店内に入るとすらっと系の中国美人のお姉さんに案内され席へ。シャンデリアの下がる店内には大勢のビジネス系の人々。テーブルのあちこちで名刺交換の風景。そんな店なのだ。料理の味もまたオーソドックスでアッパークラス。まずは香港に来たら毎回どこかで必ず食べずにいられない、2人の大好物である皮蛋の甘酢生姜添え。繊細な仕上げ。うんまい。続いてこれまた好物の腸粉(チョンファン)は、中に入っている海老がぷりぷりで、でかい。そして上品な味付け。

そして次にキノコや野菜の衣笠茸詰め青菜添え。見た目に美しく、これまた柔らかな味付け。火の通り加減も素晴らしい。中華料理の基本となる上湯(シャンタン)が素晴らしいのだろう。そして厳選された食材で丁寧に作られているのが分かる。接客も細やか。接待に向いている高級店という風情。オーソドックスで優雅な味。でもちょっと物足りない。刺激が欲しい。「この豆板醤使ったら?美味しいよ」あ、そういう刺激ではなくてね。どうだっ!と挑んで来るような、参った!と唸るような一皿が欲しい。数品食べただけでは判断できないけれど、前回の香港旅行の際に訪れた唐閣(T’ang Court)でも感じた物足りなさ。ちなみに両店ともミシュラン香港版2009では☆☆の店。庶民である私の舌には上品過ぎるのか。再訪して確かめる必要がある。
「美味しかったねぇ♬ランチで食べるには多いけど、午前中にジムで走っている分だけ何とかなるし、夜よりも安くあがって良いね」妻は今回のランチ作戦に満足のご様子。「さぁ、夜はどこで食べようか!」
こうして、香港6泊7日の“食い倒れ合宿”とも呼べる日々が過ぎていった。
■食いしん坊夫婦の御用達 「夜上海」
2011年8月24日、スティーブ・ジョブ氏がCEOを辞任。とうとうその日が来てしまった。そしてその数日前、お気楽夫婦は悩んでいた。iPad2にすべきか、MacBook Airにすべきか。迷った末に11インチのMacBook Airを購入した。この夏、香港に旅立つ直前のことだった。購入の目的のひとつは旅先での電脳生活。旅行直前にやり取りしたいくつかのメールの返信を待ち、すぐに回答する必要があった。香港滞在は1週間。帰国まで待っていただく訳にはいかない。添付したファイルを修正しなければいけない可能性もある。そんな条件を基に検討した結果、MacBook Airを選択。そして次は、旅先でのインターネット環境の調査。こんな時、優秀なセクレタリーとなる妻が活躍する。成田空港や滞在するホテルでのWi-Fi環境を調べ上げ仕事に支障はなさそうと判断し、さらに念のためにとLANケーブルを持参することになった。
香港到着後、ホテルのWi-Fi(無料!)環境の中で仕事はあっという間に片付いた。MacBook Airのマルチタッチのトラックパッドは、慣れさえすれば思ったよりずっと使い易い。立ち上がりもストレスがなく、システム終了時はあっけないほど。それに何よりキーボードの入力の方が圧倒的に速い。MacBook Airの選択は正解だった。機内持ち込みのショルダーバッグの中でも存在感を執拗には出さず、1kgちょっとの重さも気にならない。ということで仕事のメドも付いた。よぉ〜っしっ!ヴァカンスだ!香港の味を堪能する“食い倒れ合宿”の始まりだ!さっそく毎食事の料理写真を撮りまくる。その日のうちにMacBook Airに取込んだ画像の確認と編集。さくさく。画像をFacebookにアップ。さくさく。友人たちからコメントが書き込まれる。返信コメント。さくさく。これを毎日繰り返した。香港と日本の距離を感じないコミュニケーション。実に快適な電脳生活。

ところで、妻のケータイはiPhone。その中には2人の保有するCDのほとんどが取り込まれている。飛行機のシートで、毎日午前中に通ったホテルのジムで、プールサイドで、iPodとして活躍した。さらに嬉しい誤算。滞在した2ヶ所のホテルの客室に、それぞれBOSEのiPod用スピーカーSoundDockが標準装備されていたのだ。と、どういうことが起きるか。朝はEnyaで目覚め、朝食後にいきものがかりでテンションを上げ、ジムではジャクソン・ブラウンでクロスウォーカー三昧、汗を流した後にシャワーを浴び、部屋に戻りきりりと冷えたビールをくいっと飲みながらサザンを聴く。そしてプールサイドで夕陽を眺めながらボビー・コールドウェル、夕食後に画像をアップしながらビリー・ジョエル。などという林檎的音楽生活が実現するのだ。

こうして香港でも活躍したMacBook AirとiPhoneのApples。実は日本のお気楽夫婦宅でも並行して活動の場を広げていた。まずは、AppleTV。リビングルームの液晶大画面TVと繋ぎ、iTunesと連携。iMacの中に取り込んだ全ての楽曲がリビングで聴ける。けれど、液晶TV(ウチは東芝REGZA)の音は貧相。映像なしの音楽だけを聴くにはちょっと淋しい。そこで登場したのはVictor・JVCのホームシアターサウンドシステム。サブウーハーなしの“なんちゃって”フロントサラウンドだから、場所は取らないし、価格も手頃。液晶TVの音響ではちょっとなぁ、というお気楽な夫婦にぴったり。そしてiPodに対応しており、充電も可能なドック付き。これで東京の林檎的音楽生活も充実することになった。
「ところで、記事の冒頭のスティーブ・ジョブの話題は何か関係あるの?」妻の素朴な疑問。あると言えば、ある。ないと言えば、ない。けれど、マック信奉者、Appleファンとしては淋しい限りのニュース。そうとは知らず、引退の直前に林檎的生活を充実させたのも何かの縁かなと。「つまり関係ないってことだね」はい。
*香港の滞在記は次回以降!