マスターは修行中「Bar LAPITA(ラピタ)開店!」鶴岡市

庄内空港着陸前の海岸線ハーバーを背に暑の夏にも慣れかけた7月末、嬉しい便りが届いた。故郷で暮らす弟から、市役所を辞めて開店準備してきた店ができるという挨拶状。店の名前はLAPITA(ラピタ)。宮崎駿監督の作品『天空の城ラピュタ』ではなく、南太平洋の海洋民族の名前であり、小学館から発行されていた(現在は休刊)雑誌の名前にちなんでいるという。雑誌ラピタのコンセプトは「大人の少年誌」だった。休刊中というのが縁起は悪いが、弟らしいネーミング。さっそく開店祝いを手配しつつ、お披露目をしてもらう日程調整を開始。そう言えば、昨夏に亡くなった末弟の義父の一周忌にも出席しなければ。そうか、いっそ1泊2日で、祝いと弔いの旅にしよう!

ステージ付きCDラックる週末、お気楽夫婦は慌ただしい旅に出た。羽田空港では開業間近の国際線ターミナルや、4本目のD滑走路を眺めながら飛び立ち、庄内空港では晴天に恵まれたおかげで、南の島のリゾートのような青く光る海岸線を眺めながら無事に着陸。そして、迎えにきてくれた弟と共に、生家近くにあるヨットハーバーを訪ね、母の墓前に花を手向けた。さらに、川遊びで身体を冷ました後にビールをきゅっと飲み干し、スタンバイOK。マスター(弟)の運転で宿泊先のホテルに向かう。お気楽夫婦をホテルに降ろすと、マスターは開店準備のために店に向かう。

カウンタ待たせしました!」義妹と姪がホテルに迎えに来る。店の前にはお祝いの花と「本日貸切」の案内板。階段を上がり、ドアを開ける。ほほぉ。想像以上に広い店。いわゆる“居抜き”で借りたため、以前の経営者の嗜好で揃えたソファ、シャンデリア、内装はカラオケスナック系。大きなモニターや壁に飾られたLPレコードのジャケット、棚一杯のCDなど、マスターの趣味の品々が溢れる。店にやってきた客は、古い雑誌コレクションの前で、ジャケットの前で、CDラックの前で、それぞれの思いで佇む場所らしい。スナック系の内装と、’70年代フォーク&ロック、’80年代POPSのBGMがまだ溶合ってはいない。けれど、これは間違いなく弟の城、マスターの部屋。「Common a my room!」と招かれ、やってきた彼の友人の気分。

サッカー観戦用モニター2人が贈った胡蝶蘭の鉢の傍、ボックス席のソファに座り、改めて店内を眺める。カウンタの中では、まだプロになりきっていないマスターがぎこちなく微笑む。「開店準備で10kg痩せたんだ。やっぱり諸先輩に聞いた通りたいへんだった」と、それでも満足げに語る。彼の一番の財産は、役所勤めだった頃の人脈。開店から1週間程、毎日がお披露目の貸切営業だったとのこと。市長をはじめとした役所時代の諸先輩、同僚、高校時代の同級生、後輩、バレーボールのコーチをしていた頃の教え子たち、その父兄…。地元に密着した生活をしていたからこそ、広がった人脈ネットワーク。そんなお世話になった方々の来店が一巡した頃、本当の勝負になる。知人友人相手に修行中のマスターが、プロになった頃に店の展望が開け…て欲しい。

い店だね」地元名産のだだ茶豆を齧りながら、お酒を飲めない妻が呟く。うん、良いスペースだ。自分で注いだ生ビールを味わいながら、私は思う。このスペースを愛してくれる客を相手に、良い意味でゼータクな商売をすれば良い。客商売はたいへんだけど、経営はかんたんではないけれど、組織の中での煩わしい気遣いはいらない。好きなだけ仕事を続けることができる。好きな街で仕事ができる。そんな道を、そんな仕事を選んだマスター。Go Ahead!

夏はカレーだ!「レトルトカレー」

カレーの本棚らばがに、ほたて、牛タン、さくらんぼ、お茶、名古屋コーチン、京野菜、じゃこ天、牡蛎、完熟マンゴー、ゴーヤ…さて、これらは何でしょう?日本各地の名産?半分正解。実は、これ全てご当地レトルトカレーの具材。それ以外にも、トドカレー(缶入り)や、全国的に有名になった横須賀海軍カレー、地元老舗ホテル(例えば、函館五島軒、横浜のニューグランド、箱根の富士屋ホテルなど)のレトルトカレーなど、各地で話題のカレーは枚挙に暇がない。日本人の食生活に欠かせないカレー。独自の進化を遂げ、それぞれの地方でオリジナルのカレーが新たな名物となっている。

全国各地のレトルトカレーんなレトルトカレーが家庭に普及したきっかけと言えば、お馴染みの大塚食品のボンカレー。発売された当初は、量が少なく、具材も小さく、やはり母が作ってくれたカレーの方が旨い、と思いながら食べた(当時は子供だった世代の)方々も今や日常的に利用しているはず。そして、発売当初から食品としてだけではなく、日本のレトルトカレーの王道を作った(と私が勝手に思っている)という功績がある。それは、ブック型のパッケージ。スペースを取らず保管しやすいし、販売する側にもメリットがある。北野エースという店では日本各地のレトルトカレーを、圧倒的な種類を揃え、常時販売している。その陳列棚はまるで本屋か図書館。

サグチーズカレーマトンカレーる夏の夜、食欲が無い(お気楽夫婦は食欲はありありだけど)時はカレーだ!と思い立ったお気楽夫婦。2人で食べるにはレトルトカレーだ!ということで、近所にできたカルディ(レトルトカレーの種類が豊富!)でレトルトカレーをゲットすることになった。ところで、妻はご飯よりもパン好き。カレーを食べる時でもご飯ではなく、ナン(クスクスでも可)をチョイス。従って、選ぶのは必然的にじゃがいもをはじめとした具材ゴロゴロの典型的日本のカレー「カレー曜日系」ではなく、フォンドボー系の欧州カレーでもなく、ナンに合わせるにはインド系の本格カレーということになる。うむむ、そんなカレーが果たして…あった。2人が選んだのは、かなり辛そうなマトンカレーとサグ(ホウレンソウ)とチーズのカレー。いずれも本格的で旨そうだ。

マトンカレーを盛り付けるサグチーズカレーを盛り付けるにお湯を沸かし、レトルトパックを投入。冷凍のナンをオーブンレンジで温める。料理とも(当然ながら)呼べないお気楽夫婦の夕餉の支度。そこに添えるのは、お気楽妻にやってきたブーム、新鮮野菜のピクルスと生野菜のサラダ。熱々のカレーをナンに乗せてパクリとひと口。うっ、旨いっ!なぁんだ、本格インド系カレーも、レトルトでOKじゃないか!ナンもこれぐらいの味であれば充分だ。おっ!キャベツにサグカレーを乗せて食べると、これまた旨いじゃないか!う〜ん、これは新鮮な味の組合せ!これは旨い!と、(元々食欲不振ではなかったけれど)2人の食欲増進。やはり夏はカレーだ!

大阪のソースころで、前述の北野エース、レトルトカレーだけではなく、品揃えが面白い。例えばソース。大阪人は数種類のソースを使い分けるとは聞いていたが、実物が並んでいるのを見るとある種の感動を覚える。たこ焼き、お好み焼き、焼きそば…それぞれ使い分けなくてもええやないかいっ!となぜかインチキ大阪弁で突っ込みたくなる。ある意味、日本人のデリケートな味覚の象徴。これからの日本の観光資源、輸出品は“日本の食文化”だっ!と叫びたくなる。「…それは、きっと暑いからだね。何だか記事も散漫だよ」カレーを食べても汗ひとつかかず、冷静な妻が呟く。はい。確かにテンション上がってました。カレー食べて、ぽたぽたと汗かいてました。でも、やっぱり、夏はカレーだ!よね?

坊主が上手に烏山に坊’sの店を…「Raperino」

ひよこマメ入りトリッパ気楽夫婦の住む街に、同じ系列の繁盛店がある。ナショナルチェーンの飲食店ではなく、地元で数店を営む、センターキッチンではない店たち。2人にとって、この規模が嬉しい。例えば、吉祥寺であれば株式会社麦の店たち。ジャズバーのFUNKY、SOMETIME。こぢゃれたダイニングバーのD-Ray、OLD CROW。落着いた佇まいの老舗居酒屋のMARU、蔵。井の頭公園沿いの人気店、金の猿。そしてケーキのLEMON DROPなど。今では余り伺えなくなったけれど、いずれもお気楽夫婦が足繁く通った店。料理や店のジャンルも、名前も違い、同じ系列とは判らない。けれど、共通するのは美味しい料理と心地良いサービス。自然と足が向く店たちだった。

パテ山の繁盛店グループの名前は、坊’s。未熟な者を“坊主”と呼ぶところから、初心を忘れないために…と店のホームページにある。お店は、烏山ダイニング 坊’s、坊’s ANNEX、烏山ダイニング一言居士、ピナコラーダ(店名は変わった?)など数店舗。いずれもお気楽夫婦の馴染みの店。そして、グループの旗艦店とも言うべき店が昨年開店した。Raperino(ラペリーノ)という名のイタリアンダイニング。烏山では珍しいテラス席もある“大箱”のイタリアン。Raperinoという名前の由来は、イタリア語で坊主とのこと。徹底しているネーミング。開店後、あっという間に人気の店になった。

鯖のマリネとカリカリポテトる週末、ミキマニアの秘書嬢と共にRaperinoを訪ねた。6時前だというのに、既に店は賑わっている。子供連れ、家族連れの姿が多い。明るく広い店内、けれどファミレスのような、ナショナルチェーンの居酒屋のようなチープな雰囲気ではない。この人たちは、今までだったら他の街に流れて行ったんだろうなぁ、という客層。壁には大きな黒板、手書きの文字でおススメ料理が書いてある。店内にあるワインクーラーも大きく、オープンキッチンでは忙しくスタッフが立ち働いている。確かに、この街にはなかったタイプの店。よっし、食べるぞ!というポジティブな気持にさせる空間。腹ぺこの3人、たっぷりと料理をオーダー。

焼きナスとリコッタチーズ皿の前菜は、いずれもリーズナブルで美味しい。「良い店だねぇ」ミキマニアの秘書嬢が呟く。うん、それは良かった。グラスで頼んだワインがなくなると、スタッフがすっと寄って来る。「同じワインがよろしいですか」う〜む、絶妙なタイミング。では、こちらを。スタッフが新しいボトルを持って来る。「ちょうど新しいボトルになりました」とにっこり。では、多めに注いでください♬と冗談を言うと、やはり笑顔と共に並々とワインがグラスに満たされる。嬉しい♡このスタッフに与えられる裁量が小さな店の良いところ。がちがちのマニュアルでは提供できないサービス。そんなスタッフのサービスが心地良い。

味しかったね♡ミキちゃんちもあるし、良い街だよね」それはどうもありがとう。舌で気に入ってもらえるのは、食いしん坊なお気楽夫婦にとっては、自分の街への最大の賛辞。街を元気にするのは、こんな店たちでもある。頑張れ!坊’s!

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SINCE 1.May 2005