美味礼讃(鮑の肝と鱧編)「たん熊北店」

060716_7再訪した<たん熊>で、夏の味を堪能するお気楽夫婦。最初の一皿<水貝>の残りというよりは、こちらがメイン?という一品をいただく。鮑の肝の和え物。口に含んだ後に微かに山椒の香りが残る。「うわぁ~っ、美味しい!抱えて連れて帰りたい!」と、飲めないのに、“のんべの舌”を持つ妻。確かに旨い。お酒が進む。その日、生ビールの後にいただいたのは、“お薦めワインのお試しセット”。3種類の白ワインを少しづつ。いずれも美味しい辛口のセレクション。満足。

それにしても、このカウンタの席は楽しい。オープンキッチンはエンタテインメント。神出鬼没の本城さんは、仕込中の弟子を指導していたかと思えば、フロアでサービスしながらお客様に話しかけ、常連のお客様を見送り、カウンタの中で鱧の骨切りをしていたりする。「あんまりようせんと、指切ってしまうんです」と言いながら、包丁捌きは鮮やか。ごりっごりっ、という小気味良い音と共に、寸止めされた鱧に美しい花を咲かせていく。そして、いつの間にか目の前に小皿が届けられる。うわぁっ、またいただけるらしい。雲丹を鱧で巻いて、かりっと揚げた一品。「美味しいぃ・・・幸せぇ。ありがとうございます」今日は口数が多い妻。「鱧の端ですから」と、照れる本城さん。

060716_8「そろそろ召し上がりますか」と、頃合いをみて声を掛けられる。<鱧のしゃぶしゃぶ>のお出まし。韓国産とは言え立派な松茸と、美しい姿の鱧、湯葉が盛り付けられた皿、小鍋がセットされる。既に熱々のスープが入っている。「まずは松茸を入れてお待ちください」スープに松茸の仄かな香りが加わる。そして、鱧。スープの中でふわっと満開に花咲く白い身。熱々を頬張る。くぅわぁ、旨い。滲みるねぇ。今や全国区となった京野菜、水菜もしゃきしゃき美味しい歯触り。

「スープを少し残しておいていただければ、煮麺でも、雑炊でもお作りします」先日の“丸鍋”は雑炊だったので、煮麺で。竹墨入りの素麺、これがまた旨い。「この店はやっぱり凄いねぇ。味だけじゃないんだよね。ひたすら牛蒡の八幡巻を仕込んでる彼、目が真剣だよね」<季節のデザート盛り合わせ>を味わいながら妻。そうなのだ。頑張れ!未来の巨匠たち!という感じの若手も、ちょっと余裕が出来た中堅も、実に小気味良い仕事っぷり。味に深みや奥行き、活きの良さを加えている。それでいて、人をもてなし、和ませる、実に良い店。「またご贔屓に、お待ちしてます」・・・もちろんですとも。普段はリアクションの少ない妻が、これほど絶賛する店も珍しい。また是非お邪魔しますともっ!

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