今年もまた、そして相変わらず「上海蟹」

P1_14食べ物にどんどん季節感がなくなっていく今、貴重な一皿がある。それを皆で食べることを楽しみに、毎年集まる仲間がいる。残暑の季節が終わる頃、お気楽夫婦が二人で下見。今年の<萬来軒>の仕入は9月下旬から。「あんまり早く来ても蟹がまだ小っちゃいから、遅い方が良いよ」・・・相変わらずのおばちゃん。この接客だけは、マニュアル化できない。「今年は蟹足の剥き身もいっぱい仕入れちゃってねぇ」おじちゃんが照れたように独りごちる。きっと、おばちゃんに怒られたに違いない。その曰く付きの“蟹足の剥き身料理”も食べに来ることを約束して店を出る。

秋晴れの週末の夜、今年集まったのは3組、6人。乾杯の後、いくつかの美味しい前菜を楽しんだ後に、主役登場。大皿の上に載ったメスの<蒸上海蟹>の甲羅にびっしり詰まった卵と味噌が、旨そうっ♪披露宴のケーキカットのように、メンバーがそれぞれ写真を撮りまくる。今年は、近所に引っ越してきた友人夫妻がキッチンバサミとおしぼりを、ホテル好きのカップルが小さな蟹フォークまで用意してきた。去年までのキッチンバサミの順番待ちが解消。準備万端!上海蟹の細い足の身まで綺麗に剥ける。こりゃ良いね。好評。ねっとりとした蟹味噌に、足の身を絡めて口の中に入れる。んん、んまぁ~いっ!やっぱ、秋はこれだねぇ。

P1_15そして、今年の目玉、(おじちゃんが、おばちゃんに怒られたから“お目玉”?)<蟹黄魚翅(上海蟹とフカヒレの煮込み)>登場。くっはぁ~っ、これまた旨そう。レンゲで掬って口の中に入れようとする直前に、蟹味噌の甘い香りが鼻腔を刺激する。口に含むと、今度はフカヒレのコリコリ感と蟹味噌のねとねと感が複雑に絡み合って、なんとも美味しい。メンバーが感嘆の声を上げる。「私も剥くの手伝ったわよ」おばちゃんが、それでもなんとなく嬉しそうにぶつぶつ呟く。おじちゃんも厨房から出てきて、料理の解説をしてくれる。「美味しいっすねぇ」「あぁ、良かったです」すると、そこに新しいお客さま。「あぁ、ごめんなさい、いっぱいなんです」・・・って、おばちゃん、席空いてるし。

「全く、相変わらずだよねぇ」支払いを済ませ、仲間と店を出る。“相変わらず”の料金の安さ。たっぷり食べて、飲んで1人4000円程度。そして、“相変わらず”のおばちゃんの接客。我々がいる間だけで、断って帰したお客様は3組。それに、“相変わらず”皆と食べる<萬来軒>の料理は美味しかったし、楽しかった。近所に引っ越してきた友人夫妻の、新居お披露目の趣旨もある今年。のんびりと友人宅に向かう夜道を歩く。いつものメンバーが、毎年集まるきっかけが作れる<上海蟹>に感謝しながら。

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