願わくは 桜の頃に「SILIN 火龍園」東京ミッドタウン

Photo本人にとって「花」と言えば「桜」を指すようになったのはいつ頃からなのだろう。ただ「お花見」と言えば、梅でもなく、菜の花でもなく、もちろんチューリップやヒマワリなどではなく、誰が何も言わなくとも、桜である。西行の有名な歌に「願わくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月のころ」がある。これも言うまでもなく、花とは桜を指している。西行法師が生きたのは平安末期の後白河院政時代から鎌倉幕府成立の頃。その頃から日本人に愛でられ続けた桜。春の訪れを告げ、卒業や入学、出会いと別れの季節でもあることから、人それぞれのいろんな記憶にも重なる。ここ数年、毎年のようにサクラにまつわるヒット曲が生まれる。それは偶然などではなく、マーケティング的にも正しいと言える。

Photo_2Photo_3 気楽妻が忙しくなる春。ある週末、東京ミッドタウンにある「SILIN 火龍園」に向かった。この店の料理が大好きな妻のリクエストでもあり、毎晩残業続きでカロリーメイトなどを齧りながら過ごす夜とのバランスを取るためでもある。「せっかくだから桜が咲いてる頃に行こうよ」という妻の要望になんとか桜も持ち堪え、ちょうど訪れた日が満開。黄昏時、食事の前に檜坂公園を散策すると、ライトアップされた桜が実に美しくも妖しい雰囲気。梶井基次郎ではなくても樹の下には何かが埋まってるような気がしてくる。ただ単純に美しいだけではなく、人格さえありそうな、狂おしい春爛漫の象徴。

Photo_4んばんは。今日は残念ながらお魚はこれだけになってしまったんですよ」席に付くとさっそく支配人が海鮮のプレートを持って登場。季節に関係なく明るく元気な“良い人”だ。「鴨のローストが最後にお二人分だけご用意できそうですが、押さえておきますか」はい、それは是非!ということで、前菜は焼鴨から。カリカリの皮とジューシーな肉、梅ジャムのソースとの組合せがきちんと美味しい。次は山椒塩をまぶした牡蛎のフリット。あつあつの衣で包まれた牡蛎をひと口齧る。ふわぁりと潮の香り、牡蛎独特のワイルドな香り、そして山椒の香りと共に、濃厚な牡蛎の味が一気に口の中に飛び込んで来る。あぢあぢ、うんまぁい♪「これは絶品だねぇ」この店ご自慢のXO醤をちびちびと舐めながら妻が呟く。これで酒は飲めないというのは惜しい。

Photo_5いて白菜とピータン、塩卵の炒め物。塩卵の塩味が他の食材と絡み、これまた美味しい。そしてその日の白眉はサイマキ海老のガーリック蒸し。新鮮な海老を香ばしく、ジューシーに仕上げた逸品。「幸せな気分だぁ♪」残業続きでへたり気味だった妻も週末の元気モードに完全に切り替わる。小食ながらも中華好きの妻。美味しい中華料理さえ食べておけば、もともと体力に自信あり、この年度始めの仕事量も乗り切れる。「やっぱり中華は良いねぇ」そんな妻のことばを耳に挟んだのか、支配人登場。「2月に香港にまた行って来ました。3泊だったんですが、朝・朝・昼・昼・夜・夜と毎日6食で、4kg太って帰って来ました。まだ戻りません」と嬉しそうに笑う。ほんとに美味しいものを食べることが、中華料理が大好きで堪らないという風情。そんな支配人の下で作られる料理こそ、楽しく、嬉しく、美味しい。

わくは 花の下にて 春食まん その如月の 多忙のころ・・・妻の「食む」と言えば「中華」を指す。「あ、食むのは桜の頃だけじゃなくて良いよ。また来るよ♪」はいはい。

【食いしん坊夫婦の御用達】 SILIN火龍園

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