Archive for 6 月 12th, 2011

好事魔多し「アキレス腱断裂」

Team IGAIGA悪のコンディションのチームだった。前週に自転車ですっ転んで腕と足を痛めたエース。肘と手首の炎症が治らない上に、めっきり体力のなくなった監督兼プレーヤーの私。恋に悩み1ヶ月近く練習をしていない役員秘書。そして、ハードな仕事が続き腱鞘炎でラケットが持てず、3週間もコートに入っていなかった妻。そんな4人がチームを組んで、スカッシュの大会に参戦した。試合は3人のリレー方式による団体戦。1番手のプレーヤーはどちらかが11点を取るまで、ポイントを引き継いだ2番手のプレーヤーは合計22点を取るまで、そしてエースの3番手が33点を取れば勝利!というルール。男女混合で、2番手だけは必ず女性が出場すること以外はメンバー選出は自由。各チームのメンバーは、プロ選手であるコーチから初心者までレベルはバラバラ。女性との対戦に力を抜き過ぎて負けてしまいそうになる男性のプレーヤーがいたり、2番手までの得点に圧倒的な差があってもエースが巻き返したり、各チームの応援の拍手合戦があったり、お気楽で楽しい大会だ。

気楽夫婦を含めた同じクラブの仲間4人は、順調に負け続けていた。同じメンバーで何度も大会に出場し、上位入賞を果たしたこともあるチームなのだけれど、その日は全員が最悪の状態。3戦目でようやく初勝利。腕痛の妻は1戦だけ出場したものの、ラケットを持つのがやっとの状態。予選リーグでは1勝2敗のチームが3組あり、得失点差で見事に最下位!成績下位のトーナメントに堂々の進出。けれど、トーナメント1回戦ではその日初めての快勝。準決勝は予選で対戦したチームが相手。エースを温存され予選では勝利したものの、圧倒的な実力を持つ相手チームのエースが参戦すれば、負傷中のエースで対戦する我がチームの分は悪い。同じクラブの他のメンバーで構成した2チームは順調に勝ち続けているし、戦績は彼らに任せよう。ウチのチームは楽しもう!と妻にもう1戦だけ出場させることを決めた。その監督(私)の判断が悲劇を招いた。

1番手の監督兼プレーヤーは手首が痛み始め、ラケットが上がらない。ぎりぎりで勝利し2番手の妻にリレー。すると、腕の痛みを感じさせない鋭いクロスがコートのコーナーに突き刺さる。ストレートショットがきれいに決まる。あれ?絶好調。フットワークも良く、小気味良く動いている。相手にほとんど得点を許さず21点目を取り、ゲームポイント。良しっ!この点差なら、もしかしたらエース勝負でも勝てるかもしれない。ところが、コートの中央に戻ると、一瞬体勢を崩した妻。動けない。何が起ったか分からないという目で後ろを振り返る。慌ててコートに入って様子を聞くと「後ろから、踵をがーんと蹴っ飛ばされたと思った。やっちゃったかもしれない」と冷静に呟く。動くな!と妻に伝え、スタッフのコーチを呼ぶ。妻のかかとを触ると「あぁ、僕はプロじゃないので断言できないですが、アキレス腱がないですね。切れていると思います。救急車を呼びましょう」え?アキレス腱がない?そんなことばに、まだ現実感がない。皆で妻をコートの外に運ぶ。クラブの仲間が集まり心配そうに話しかける。幸いなことに痛みはないらしい。

事溜まってるんだよねぇ。困ったなぁ。明日、会社どうしようかなぁ」焦っているのか、呑気なのか分からない発言を続ける妻。「完治まで時間はかかると思います。頑張ってください」スタッフが不吉なことばを告げる。慌てて自分の荷物をまとめ、妻の荷物はチームメイトの役員秘書にお願いする。「分かった。私も一緒に付いてくよ」ありがとうと言いながら、冷や汗でびっしょりの自分に気付く。そして救急隊が到着。担架に乗せられ救急車に運び込まれる。近くの救急病院で診察。やはりアキレス腱断裂との診断。看護士に注意事項の説明を受ける。搬送先の病院に入院する必要はないという。ほっとすると同時に、急に現実感がやってくる。できないこと、やってはいけないことは予想以上に多いことが分かる。応急処置を受け左足を包帯で巻かれた妻の顔が苦々しいのは、痛みのせいではなく、仕事のことを考えているかららしい。「どちらでも良いって先生は言ってたけど、手術の方が再発が少ないし、手術した方が良いわよ」こっそりアドバイスする気さくな看護士。やっぱり手術ですか。痛そうだなと言いそうになったことばを呑み込む。

葉杖を借り、タクシーに乗り込み、遠路はるばる自宅に向う。車中でスタッフにお礼の電話、クラブの仲間に状況報告のメールを送る。さぁて、妻にとっての療養生活、私にとっての介護生活が始まった。

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