NODA×MIWA×RIE=『MIWA』NODA MAP VOL.18

MIWA2技派とか、本格派と呼ばれる女優は多い。逆に、演技ができないで女優と言えるのか!片手間で女優をやられても困るじゃないか!という、真っ当な突っ込みもできる。とすると、その表現自体は適切ではない。けれど、可愛いだけで、美しいだけでTVドラマや映画に出演する“女優”も多いのは事実。だからこその演技派であり、本格派、実力派と分類されることになる。宮沢りえは、その誰もが知る幼い頃からの美貌によって、決して演技派とは呼ばれてはこなかった。1987年の初代リハウスガールでの衝撃的な美少女としてCM登場。1989年の『ぼくらの七日間戦争』での映画デビュー。1991年の写真集『Santa Fe』。そして、その絶頂からの低迷。激やせ。

MIWA沢りえの舞台初見は2007年のNODA MAP VOL.13『ロープ』。その後、『パイパー』『THE BEE」と野田秀樹の舞台で彼女の演技を観続けて来た。その度に、宮沢りえの際立つ存在感を体感した。野田の舞台世界に見事に溶け込み、活き活きとした、堂々たる「演技派」女優だと実感した。世間的には、2002年公開の映画『たそがれ清兵衛』での演技で再評価。そして、今や伝説的な逸話となった『おのれナポレオン』での天海祐希の急病による緊急代役。誰もがその演技を、男気(女気?)を、堂々と認めることになった。このエピソードが、女優宮沢りえの評価の分岐点になるのだろう。*個人的には、2004年公開の映画『父と暮らせば』が評価の分岐点。

MIWA3NODA MAP 第18回公演『MIWA』は、今年最大の話題作のひとつ。まだ存命である「美輪明宏」の生涯をベースに、野田秀樹が創り上げる「MIWA」の物語。虚実綯い交ぜというよりは、美輪明宏という希有で孤高な存在を、野田秀樹が解き、織り直し、妄想した物語。その現実世界だけではなく、男と女という性差もを超越した半生(いくつまで生きるのだろう?)を、長崎、東京という現実の街に描く。古田新太と宮沢りえの2人だからこそ表現できるMIWAの2面性。多面性。冴え渡る野田の暗示的ことば遊び。そしてシンプルな舞台装置で表現する空間の妙。エンディングで流れるのは、ジョルジュ・ムスタキの『Ma Solitude(私の孤独)』という象徴的な選曲。

A-sighn台は総合芸術だと言われる。脚本という文章の芸術があり、演出や演技という空間表現の芸術があり、舞台美術、照明、音楽など、多方面のARTの結集。それが、数十分という時間と、せいぜい数百人が見守る空間で、やり直しがきかないライブで行われる。再現性はない。その場に立ち会う観客がいて初めて成立するという意味から言えば、観る者すらその総合芸術に含まれる。確かに、観客が創る空気は舞台に干渉する。そして、野田秀樹と宮沢りえの希有な才能、美輪明宏という題材によって、化学反応は起きた。そして、その贅沢な瞬間を客席から見届けることができた。何より、宮沢りえの中性的な少年からオトナの女まで、可憐で幅の広い演技を味わった。

っぱり舞台は良いねぇ」感情体温の低い妻が、彼女としては(おそらく、余りそうは見えないが)興奮気味に呟く。そして芝居の後はいつものAサインバーへ。カウンタに並んで座り、きりっと冷えたビールを飲みながら、芝居の余韻を楽しむ。店内に流れているのはホール&オーツ。「カリカリポークとミミガー、クーブイリチーください!」妻が満足げにいつもの料理をオーダーする。2人にとって、この時間まで含めて、舞台は“総合芸術”だ。

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