異界の日常化「浜松移住計画2009/2010」

初日の出の両親と共に年末年始を過ごすようになって数年。仕事納めの後、東京駅で駅弁を買い込み、西に向かう新幹線の車中で妻と2人で乾杯。車窓に流れる風景と共に、1年間のいろいろな出来事が記憶という過去となって飛び去っていく。酒の酔いが増すのに反比例して、日常の些事が頭の中からすぅっと消えていく。隣の座席の妻も、故郷の街が近づくにつれて甘えん坊の一人娘になっていく。自分たちの住む街とは地続きではあるのに、現実とは薄い膜で隔てられた異界でもある妻の故郷の街、浜松。住民ではなく、旅人でもない、中途半端な存在として滞在する異郷での生活。

富士山かし、その異郷は毎年のように現実との距離を縮めている。数年前、スポーツシューズが持ち込まれ、スカッシュラケットとボールが常備されてからは、異郷での生活はお気楽夫婦の日常生活に一段と近づいた。浜松に到着した翌日にはラケットを抱えて早々にスポーツクラブに向かう。休日のお気楽夫婦の生活パターンそのまま。その上、昨年から妻の両親がお風呂代わりに(別の)スポーツクラブに通い始めたことで、日常生活を超えてしまった。なにしろ大晦日の夕方に両親の通うスポーツクラブに4人揃って向かったばかりか、その僅か数時間後の元旦の午後にトレッドミルで走っていた。はっきり言えば、おバカである。

寿司界にスポーツが持ち込まれたと同時に、食生活などにおいてもお気楽夫婦の日常が確実に侵食していた。この年末の営業最終日には残念ながら間に合わなかったけれど、浜松訪問の度に「割烹 弁いち」に通う。両親を連れて訪れる回数を重ね、彼らにとっても馴染みの店と言えるまでになった。それ以外にも、お気楽夫婦が検索した店で食事をし、両親が評判を聞いて予約した温泉宿に宿泊する。それが年末の恒例となった。早めに年末休みに入った「弁いち」に代わり、今年の店は「寿し半 藍路」というこぢゃれた日本料理店。鮨がメインの繁盛店。「弁いちは残念だったけど、この店も悪くないね♪」妻も満足そうに鮨をつまむ。

寿司2ころで、松に置いておくパソコンを持ってきたんだから、酔っ払ってばかりいないでブログの更新もしなさいね」と妻。そうなのだ。お気楽夫婦宅にMacが導入され、任意引退となったWindowsパソコン2号。それが浜松に持ち込まれ、データ通信用のSoftBankのUSB端末が装備された。非日常と日常、仮の生活と実生活の違い。それは1年に2、3度しか使用しないモノを仮の生活の場に常設すること。それはまさしくお気楽夫婦にとってはパソコンとネット環境を導入すること。こうして浜松で初めてブログ記事が更新されている。

界を日常化することは、浜松移住計画の準備でもある。両親のためにデジタルフォトフレームを購入し、画像データを編集してきた妻。浜松で通うスポーツクラブに仲間も増えた。「後は仕事を辞めても暮らせる経済力だけだね」…お気楽夫婦の目指す道のりは、相変わらず遥か遠い。そんな2人を今年もよろしくお願いいたします。

毎日がクリスマス(後編)「なかむらや/サザン/SILIN」

サザンつぶ貝サザンプティシャンパンリスマスの夜、スカッシュコートに現れたお気楽夫婦。「クリスマスにスカッシュやってて良いんですか?どこかで食事じゃないんですか?」と驚くコーチの山ちゃん。今年食べ歩いた馴染みの店に挨拶を兼ねて訪問しており、その日はスポーツクラブの地下にある「なかむらや」の番だと告げると納得の様子。「IGAさんたちは、毎日がクリスマスのようなものですもんね」むむ、言い得て妙。さっそくブログ記事のタイトルにさせてもらう。ひと汗流し、なかむらやに向かうと残念ながら満席。店主に年末のご挨拶をしつつ、「サザン」へ。この店も団体客で一杯。カウンタでちんまりと乾杯。

今日の海鮮今日の焼モノ日は騒々しくてすみません」と馴染みのスタッフに声を掛けられる。いえいえ、自分たちが好きで通う店が賑わうのは何より。嬉しい限り。さっくりと食事をして席を立つ。こうして“美味しい食事感謝週間”も無事5日目を過ぎた。そして6日目、待望の「SILIN」へ。夏にNYC帰りの友人夫妻と共にこの店を訪れた際に、次回は冬の名物「土鍋ご飯」を食べに来ようと約束をし、再訪を果たした。ご近所の友人夫妻もお誘いし、3組6人での忘年会。ところが当日ご近所の友人(夫)が風邪でダウン。残念。けれど、大勢で中華料理を食べるというコンセプトには5人でも充分。さっそく海鮮をチョイス♪

ホタテと黄ニラ炒めモンゴウイカ炒め配人の根本さんが満面の笑みで海鮮プレートを持ってやって来る。ご近所の友人(妻)は魚屋の娘で、世田谷の火龍園のご近所だと告げるとすぐに意気投合。お魚談義に花が咲く。その日選んだのは、たっぷりとしたホタテ、ぴちぴちのモンゴウイカ。それぞれおススメの調理法をチョイス。そんな根本さんとのやり取りもまた楽しい。巨大なホタテの貝柱は黄ニラと一緒にあっさり塩味で、モンゴウイカは山椒塩で炒める。「美味しぃ〜♪こんな大きなホタテは食べたことがないね」魚に詳しいご近所の友人(妻)も唸らせる美味しさ。素材の味を最大限に引き出すための最小限の味付け。実に旨い。

田菜炒めザーサイに伺った時に飲んだ国産のワイン、何でしたっけ」NYC帰りの友人夫妻が声を揃える。2人共前回訪問の際に飲んだアルガブランカ イセハラが気に入ったらしい。「前にお飲みいただいたのは2008ですが、先日2009が入荷しました。これも良い出来です」と根本さん。さっそくお願いしてテイスティング。ふぅわりと広がる香りが素晴らしい♪NYC帰りの友人夫妻と一緒に、結局2本のボトルをいただくことに。釜焼前菜の盛り合せ、シラウオのフリット、搨菜(ターサイ)炒め、絶品のXO醤など、その日選んだメニューのどれもがワインの味を引立て、ワインが美味しい料理を引立てる。いずれも(まるで3組の夫婦のように?)良い組合せだ。

土鍋土鍋ごはんして待望の煲仔飯(土鍋炊き込みご飯)。土鍋で炊いたほっこりご飯と、かりかりのお焦げ、甘辛い2種類の腸詰め、豚と鶏肉が絶妙のハーモニー。「ん、んまいっ」大食漢のNYC帰りの友人(夫)が絶賛。ご近所の友人(夫)へのお土産にドギーバックに詰めるのも忘れない。「この漬物とまた合うねぇ♪」支配人の根本さんが薦めてくれた中華漬物が口の中の余分な脂を中和する。「いつか香港に皆で行って、こうして一緒に食事ができると良いね」「その時には根本さんに案内いただいて♫」そう言って皆で笑うと「はい!ぜひ。店を辞めてご一緒します」おいおい、何も辞めんでも。笑いが広がる。

日がクリスマス。そんな1年が、こうしてまた過ぎて行く。友人たちと、お気に入りの店で、美味しい料理。これほどのお気楽な日々があろうか。「今年のクリスマスプレゼントは、お互いに無しで良いね」と妻。良いよ。こんな時間を一緒に過ごすことが、きっと何よりのプレゼントだ。「あ、でも片方無くしたピアスを買ってもらおうかな♫」え?

毎日がクリスマス(前編)「萬来軒/はしぐち亭/用賀 本城」

萬来軒焼ギョーザ萬来軒鶏と漬け物炒め子クリ、家(ウチ)クリが今年のクリスマスのトレンドらしい。女子だけで(男子の目を気にせず)楽しむクリスマス。家に皆で集まって(ゆったり)過ごすクリスマス。イルミネーションに誘われて、浮かれた街に出かけて楽しむことも良いけれど、家で家族や友人たちと過ごすのもまた良し。ところで、お気楽夫婦はと言えば、1年を締めくくり、年末の挨拶廻りをしなければ!ということで、今年1年美味しい料理を食べさせていただきありがとうございました!とクリスマスを挟んだ1週間を、馴染みの店を訪問する“強化週間”と位置付けた。早い話が、相変わらずの外食三昧。やれやれな夫婦。

はしぐちレバーペイストはしぐち鯛のカルパッチョ日、ご近所中華の名店「萬来軒」からスタート。焼餃子、鶏の唐辛子炒め、ホタテと白菜の煮込みなどをオーダー。しみじみ旨い。今年もお世話になりました。「こちらこそぉ。来年もよろしくお願いします」1代限りになるだろうこの四川の名店の味を、あと何回味わえるのだろう。「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです。良いお年を!」厨房を覗き、オジちゃんにも声を掛け健康を祈る。2日目、ご近所の洋食屋「はしぐち亭」に向かう。味もサービスも安定してきたし、まだまだレベルを上げることができる若さが、可能性がある。今後も楽しみにしています。ごちそうさま。

鮎の風干しふぐ焼白子3日目、お気楽夫婦の住まいから歩いて10秒のベルギービールの店。毎日のように(客の入りを心配して)店内を覗いてしまう。継続は力だ!来年も頑張れ。そして4日目。京料理の名店「用賀 本城」に向かう。予約の際、奥さまに「クリスマスにウチみたいな和食で良いんですか?」と問われる。ふふっと思わず微笑んでしまう。本城さんの料理と、奥さまの柔らかく温かな物腰のバランスが、良い。たん熊北店の味はそのままに、居心地の良さを加えたこの店は1年を締めくくる味に相応しい。その日のおススメメニューから「鮎の風干し にがうるか添え」「背子がに酢の物」などの絶品料理からスタート。

鯛の薄造りハマグリ蕎麦いて「ふぐ焼白子」「鯛の薄造り」そして名物の「丸鍋」をいただく。いずれも相変わらずの幸せな味。私の酒も進む。「お茶も進む進む♪」いつものカウンタ席で妻もご機嫌。そして締めに何か…。すると本城さん「ニシン蕎麦をご用意しましょか」え!私の大好物。蕎麦屋ではいつも鴨南蛮かニシン蕎麦の私。「あぁ、私も一緒ですわ」本城さんと思わず握手。「実は、私はあんまりニシン蕎麦は好きじゃないんですよ」と妻。1杯の蕎麦のために丁寧に出汁を取り、ニシンを温め、蕎麦を茹で、冷水で締め、ネギを切り…実に丁寧な仕事。ゼータクなニシン蕎麦ができあがる。つゆをひと口。うんまぁい!優しいつゆとほっこりとした上品な甘さのニシン。これまでの生涯で最高の、涙モノの一杯だ。

れ?はまぐり蕎麦?いつの間にか別の腕に妻用の1杯ができあがっている。もちろん出汁も別。本城マジック!「うわぁ!美味しい♪」ふんわりと優しい潮の味。旨い。じゃあ、ニシン蕎麦も食べてみたら。「えっ?美味しいね。今までの誤解が解けた感じ。生臭くないし味も濃くない。美味しい〜♫」珍しく妻のテンションが上がる。「やっぱり本城さんの味は幸せになる味だねぇ」うん、今年も美味しい1年だった。お気楽な1年の総集編、毎日がクリスマスのような日々は後半に続く。

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SINCE 1.May 2005