思い出の味、懐かしの味「花邑と笹だんご」

花邑人たちが集まった週末、それぞれが会わなかった期間分の話題を提供し、交わせなかった会話の時間を埋め、突っ込めなかったネタに歓声を上げた。「なんか、四角くって、カステラみたいな感じで、アンコとかが層になってて、饅頭みたいなの」とNYC帰りの友人(妻)。それはクイズか?四角い時点で既に饅“頭”ではないし。「とても美味しかったの。浜松のお菓子なんだけどね、知ってるかなぁって思って。今度お土産で買ってきて♫」浜松出身の妻も???でいっぱい。さすがにそれだけの情報ではとても買えそうもない。「何ていう店か分かる?」「巌(いわお)って字に、口に巴って書いて…」「あぁ、巌邑堂だね。昔からある和菓子屋さんだよ。でも、そのお菓子は知らないなぁ…」と、悩みつつも場の話題が変わり、すっかり四角い饅頭の存在を忘れていたお気楽夫婦。

髙島屋の翌日、ニコタマの髙島屋で買物をしていたお気楽夫婦。「巌邑堂」 という看板を地下食品売場に発見。改装して入れ替わった店のひとつに巌邑堂があったのだ。おぉ!なんという神のお導きか。ふらふらと引寄せられるように売場に向かう妻。ショーケースの中にNYC帰りの友人(妻)が表現した外見にぴったりのお菓子を発見。「花邑」という和菓子だった。店の説明によると、白いカステラの中に酒粕を混ぜて餡をサンドした、ということだから彼女の説明は間違ってはいない。「懐かしいなぁ。巌千鳥って大好きだったんだぁ」と妻。それを店のスタッフが聞きつけ、「浜松のご出身ですか」と問われ「ええ、そうなんです」と頷く妻。妙に和んだ空気が売場に漂う。「じゃあ、花邑と巌千鳥を自宅用で」これは買わねばなるまい。

ささだんごにはそれぞれ思い出のスイーツ(甘い味という意味で)がある。まして子供の頃は、お土産やお菓子は今のような選択肢が少なかった分、同年代の間で懐かしい味が重なるはず。わが家では、北海道のお土産と言えばバター飴、東京土産は本高砂屋のエコルセか、祖母の好物だった虎屋の羊羹が定番だった。それ以外に、毎年季節毎に口にする甘い記憶があった。例えば、五月の節句に祖母が作ってくれたチマキ(笹巻きと呼んでいた)と笹だんご。笹の葉に包んだよもぎ餅の中にたっぷり詰まったアンコ。笹の葉とヨモギの葉の香りと、甘くサラサラとした餡とちょっと固めの餅の絶妙なバランス。記憶中枢の中に刻み込まれている味。そんなある日、スーパーの店頭で笹だんごを発見。妻が巌邑堂に反応した如く、ふらふらと手に取りレジに向かう私。

餡がたっぷりだんご、好きだったんだよねぇ。「ふぅ〜ん、そうなんだ」余り興味を示さない妻。言われてみれば巌邑堂に反応できない私も同様。幼い頃の記憶に刻まれていないアイテムをお互いに「どうよ!」と言い合っても仕方がない。「アンコが甘〜い。私は味見だけで良いかな」5ヶ入りの笹だんごの大半を食べることになった私。「こっちの方が美味しいよ」妙に固いサブレ(巌千鳥)を齧りながら妻が呟く。私にとってはあっさりし過ぎて物足りない味。懐かしい記憶という味付けが足りない分だけ、お互いの味覚に訴える力がないのかもしれない。「花邑も食べてみようか」ん、酒粕が入ってしっとりとした生地は、カステラというより確かに饅頭。NYC帰りの友人(妻)の感想通り。そして、巌邑堂の新作ということもあり、妻にとっても初めての味。お気楽夫婦の新たな味の記憶に同時に刻まれる。

「でも、ちょっと甘いかなぁ」妻の味覚は酒飲みの私よりも、ずっと辛党。

いつもの秋味「上海蟹2009」萬来軒 千歳烏山

海鮮春巻 つて「Levene」というスポーツクラブがあった。調布店が国領駅の近くにできたのが1987年。ラケットボールコートが10面もあるのが“ウリ”の総合スポーツクラブだった。早々にクラブに入会し、本格的にラケットボールを始めたお気楽夫婦。しかし、競技人口は思った程増えず、次々にラケットボールコートが減って行った。減ってしまったコートの一部を改造してスカッシュコートができた。コートのサイズは公式のものではない、いんちきスカッシュコート。けれど、やってみたら、これが実に面白かった。いつしかラケットボールよりもスカッシュコートに入っている時間が長くなった。すっかりスカッシュに転向してしまったお気楽夫婦。そこで出会った仲間たちがいた。同様にスカッシュを始めたばかりのメンバーたち。ビギナー向けの大会に一緒に参戦したり、他のクラブに練習に行ったり、食事に行ったり、旅行にいったり。その後、ティップネスと合併したことでLeveneという名が消え、スカッシュコートもなくなり、お気楽夫婦も含めたメ ンバーは次々に退会して行った。けれど、変わらずずっとお付き合いは続いている。嬉しい限り。

四川水ギョーザんな仲間たちが必ず年に1回、集まるイベントがある。ご近所中華の名店、萬来軒で食べる上海蟹の会。今年集まったのは、ご近所の友人夫妻、NYC帰りの友人夫妻、ビストロMARR夫妻、スカッシュ漬けの独身男、そしてお気楽夫婦の9人。去年は同様のメンバーでNYC帰りの友人夫妻の帰国お祝いを兼ねたパーティだった。「お久しぶりぃ♪」「1年って、あっという間だねぇ」三々五々に集まるメンバー同士でわいわいと挨拶が交わされる。個々に会ってはいても、この顔ぶれが揃うのはせいぜい年に1回。皆が楽しみにしてくれている秋の恒例イベントだ。その日の萬来軒は3組の予約客で満席。それぞれが互いに見覚えのある常連客ばかり。おばちゃんも気楽で楽しそうに、それでもやっぱり気怠そうに接客している。海鮮春巻、四川水餃子などお馴染みのメニューからスタート。「やっぱりこの店は美味いねぇ♪」「今日はお昼も来ちゃったもんね」「今日はボクササイズでね…」「えぇ〜っ!そうなんだ!」「焼餃子も美味しいんだよ」「お父さんの具合はどう?」「そんなメニューもあったんだぁ!食べたい♫」賑やかに会話が弾け、錯綜する。

上海がにしてメインの蒸し上海蟹登場。メンバーも準備してきた蟹用ツールをスタンバイ。例年、店で用意してくれるキッチン鋏だけでは足りず、お気楽夫婦の用意する キッチン鋏を皆で回し使っていた。ところが一昨年あたりから友人夫妻たちが次々にキッチン鋏を持参するようになり、昨年からはマイ蟹フォークを持参するまでになった。そして今年はついにスカッシュ漬けの独身男までが“道具”を持参。キッチン鋏と蟹フォークが合体している便利もの。良いねぇ、使いやすそうだね。「見つけた時、これだ!って思ったんすよ」うん、うん。そのノリが良いね。このイベントに参加することを楽しみにしてキッチン鋏を選んでいる姿が目に浮かぶ。嬉しい光景だ。「幸せだぁ♫」「んん〜、美味しいね」お約束のように蟹の身をほぐす友人(夫)たち。友人(妻)の大半は、ほぐしてもらった蟹味噌と身を満面の笑みで頬張るだけ。「え?これは自分で食べるよ」「ウチはそれぞれで取って食べるもんね!」「良いなぁ。私のも取って♫」それぞれの夫婦模様、実に良いバランスだ。

麻婆豆腐婆食べてく?」おばちゃんが尋ねると、友人たちは一斉に「食べるぅ〜」「食べたい〜」の大合唱。「やっぱりこの店に来たら麻婆豆腐食べて行かなきゃね」「今日はちょっと辛みは抑えておこうか」皆すっかり萬来軒のおばちゃんとも顔馴染み。「ごはんはどうする」と尋ねられれば、すかさず「食べる!」「食べたい」「やっぱなきゃダメでしょ」と返す。そして大皿でやってきた麻婆豆腐。中国山椒の痺れる辛さ「麻味」が堪らない。ご飯を手に手に友人たちが一斉に麻婆豆腐を頬張る。これまたお馴染みの風景。「今日はどうでした?」一息付いたおじちゃんも調理場から店に出てくる。「いやぁ、牡蛎が抜群に美味しかったです」「豚とタマゴが旨かったぁ。特に生のキクラゲが旨いですね」「それは良かった。あと何年現役でできるか分かんないけど、またいらしてください」いつもの秋の、いつもの仲間と食べる美味しい料理。今年も大満足。いつまでも続く楽しい宴はなく、終わりのない物語もない。けれど、おじちゃんが頑張っている間は、毎秋の味を楽しみに、皆で集まることになるだろう。また来年の秋に!

幸福のテーブル「SILIN 火龍園」東京ミッドタウン

蒸し牡蛎IGAさんにご報告です。IGAさんご夫妻の影響もあり、○月○日に入籍いたしました。今後ともよろしくお願いいたします」ある日、そんな嬉しいメールをもらった。新郎のワカモノは「IGA-IGA.com」のデザインを担当してもらったWebデザイナーであり、Macの個人指導の先生でもある。何度もお気楽夫婦宅を訪ねてもらい、Macの集中講座を開催してもらった。講座開催のお礼はその日の夕食。ご近所の名店「萬来軒」や「はしぐち亭」などでたっぷり食べてもらった。そんなワカモノの結婚のお祝いに相応しいのは、やはり美味しい食事。ん?そう言えば、SILIN 総支配人の根本さんへの夏の香港食い倒れ旅行の報告もしなければ。ということで、さっそく「SILIN 火龍園」を予約。ある週末、新婚の友人夫妻をお誘いして東京ミッドタウンに向かった。

焼鴨らっしゃいませ♪お待ちしておりました」根本さんがにこやかに迎えてくれる。香港の情報ありがとうございました。さすが龍景軒は良い店でした。「はい。IGAさんのブログを何度もチェックさせてもらいました。あのレベルのサービスを香港でもやればできるんだ、という感じですよね。担当者が運ぶ係、サーブする係と分かれているのはイギリスの統治時代の名残なんですよ」さっそく香港談義。「ところで、今日も海鮮から選ばれますか。ご用意してお待ちしてました」プレートの上に美しく並ぶ魚介類の中から牡蛎とスジアラをチョイス。「どれも美味しそうですねぇ」新婚カップルの目も輝く。まずはプリプリの蒸し牡蛎の上にガリガリとペッパーを挽いて食す。「うわぁ〜美味しいぃ♪」奥さまも感激の味。続いて根本さんがキープしておいてくれた焼鴨。「この甘酸っぱいソースが美味しいんだよね」と妻が薦める。「これも美味しいですね!焼鴨って食べたことないです」2人とも良いリアクション。

スジアラれにしても、ワカモノ夫婦は新婚だというのに浮ついた雰囲気もなく、けれどもちろん愛情オーラもお互いに纏いつつ、実に自然な佇まい。一緒に住んでみて、こんなはずじゃなかった!なんてことはない?イヂワルオヤヂの質問にも「僕はないかなぁ」「私も特にはないですねぇ」とさらりと返す2人。「ところで旅行の行き先は決まったの」と妻。そう言えば、前にワカモノ夫妻たちと一緒に食事をした際にホテル好き同士で盛り上がっていた。「まだなんですよ。タイも良いなぁって思ってるんですけど」「マレーシアも良いよ。食事もそんなに辛くないし、全体に清潔な感じだよ。クアラのマンダリンっていうホテルが…」得意分野の話題になれば妻の舌も滑らか。妻にとってもワカモノ夫妻の好感度は高いらしく、実に楽しそう。スジアラの姿蒸し、豚バラ肉の塩魚蒸しなどの料理を絶賛しながらも話が弾む。ワカモノ夫妻の幸福エネルギーがお気楽夫婦にも伝わってくる。幸福のエネルギー充填、充填!

お祝いの桃まんじゅうんな幸福のテーブルに、更なる幸福がやって来た。「おめでとうございます。中国ではお祝いに桃饅頭を食べるんです」と、総支配人の根本さんがお祝いの中華菓子(キャンドル付き!)をサービスしてくださった。その日、席に着くと早々にワカモノ夫妻の結婚のお祝いだと告げると「前もって言ってくだされば、お祝いの提灯でもご用意したのに!」と残念がっていた根本さん。本気でそんなことをやりそうだから言わなかったんですよ!と軽口で返したが、こんなサプライズで更に返していただいた。感謝。「わぁ、感激です。記念になります♪」とワカモノ夫妻も喜んでくれた。きっと2人の幸福オーラがさらに周囲にも伝わったに違いない。美味しく、楽しく、幸福な2人と共にテーブルを囲めば、周囲にも幸福がやってくる。幸福は幸福を呼ぶ。そんな中国の格言を思いだす。幸福の素、ワカモノご夫妻、これからもよろしく♪幸福のお裾分けをし合おうぜ!「ん?ところで、そんな諺あったっけ」と妻。いえ、ありません(きっぱり)。

「食いしん坊夫婦の御用達」 ■SILIN 火龍園

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SINCE 1.May 2005