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日本各地にいわゆる「和モダン」の宿ができている。伝統的な日本旅館のおもてなしの心、和風建築の美しさ、などの良い部分とホテルの機能的、合理的な部分を融合させている。これは温泉好き、ホテル好きのお気楽夫婦にとって嬉しいことだ。それに加え、温泉旅館でのんびりするというコンセプトなら妻の両親との同行が可能。修善寺の老舗旅館、嵯峨沢館も優れた和モダンの宿だ。駐車場で出迎えるスタッフの対応は隙がない。和風の落ち着いたエントランスを通ると、ウッディな家具で統一されたロビー。「プー露(ネーミングはいかがかとは思うが)」と呼ぶ温水プールに続くウッドデッキのガーデンテラス。狩野川からの風が心地良い川沿いのテラスは、湯上がりにぴったり。
客室は和室だけではなく、和室にベッドとリビングルームを配した和洋室もある。ほとんどの部屋に露天風呂が付いている。その上、館内には川の湯、寝覚の湯、渓流の湯などの湯処が11ヶ所もあるばかりか、岩盤浴までも。そして、足の具合が良くない義母にありがたい個室での食事は、椅子とテーブル。和洋の良いとこ取り。こんなホスピタリティ溢れる宿は、海外からの客を迎えるにも相応しい、素晴らしい日本文化でもある。
【快楽主義宣言へ】 ■「和みの空間、安らぎの時間」2005年10月16日
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あつみ温泉は、開湯約1,000年というから、平安時代から続く歴史ある温泉。中でも360年以上の歴史を誇る老舗旅館が「たちばなや」だ。昭和天皇をはじめ、皇太子・皇太子妃などの皇室の方々が宿泊した名旅館でもある。あつみ温泉に宿泊するなら、この宿をいちばんにお薦めする。良きライバルである萬国屋の豪華さはないけれど、上品で楚々とした風情の佇まいは、お気楽夫婦が日本旅館に求める姿にぴったり。まずは風呂が良い。檜をふんだんに使った大浴場、続きの露天風呂、貸切の展望露店風呂の「星の湯」は快適そのもの。大浴場の中央にある檜の枕に頭を置き、高い天井を眺めていると、すーっと現世の雑事が消えて行く。落ち着きと趣のある客室で、ゆったりとした気分で食す夕食、そして何よりも朝食が絶品。日本旅館の朝食はかくあるべきという少量多品の皿が並ぶ。そのひとつひとつに心がこもる。そして、緑溢れる庭を眺めるラウンジや待ち合いコーナーで過ごす時間も悪くない。大切な人をもてなす宿として、ぜひ一度は訪れて欲しい。
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1995年のクリスマス。初めて香港の街を歩いていた際に緊急事態発生。持病の過敏性腸症候群の症状が。大勢の人で溢れる尖沙咀。お腹の不調は酷くなる。そこで、ザ・ペニンシュラでトイレを借りようと向かったところ、クリスマスの期間は宿泊客以外は館内に入れないという。その対応に、ちょっと傲慢なホテルという一方的なイメージを持ち、以来ずっと敬遠していた。何度か香港を訪れても、立ち入ることさえしなかった。ホテルの機能には大きく2つある。 1つは、パブリックエリアとして宿泊客以外の訪問者も受け入れるレストラン、バー、ショップなどの場所。そしてもうひとつは、もちろん客室などのプライベートエリアだ。人気のホテルは、パブリックエリアに多くの観光客を受け入れることになる。それもホテル。その時のお気楽夫婦の視点は、外来者のものだった。
2009年の夏、宿泊客として初めてペニンシュラを訪ねた。宿泊客へのサービス、プライベートスペースの安寧のために、1995年のクリスマスに、 ホテル側が行ったことの意味を実感した。アフタヌーンティで人気のザ・ロビーは、空席を待つ人の列ができる。フラッシュを使って撮影する観光客が注意される。大声で会話しながら通り過ぎる買物客。そんな喧噪を避けるために、ホテルに滞在中、お気楽夫婦は客室に隠った。プライベートエリアに入った瞬間、目の前に広がる景色の素晴らしさ。外出することが勿体ないと感じてしまう、居心地の良い客室。そして、気持の良いジムで走り、プールのデッキでのんびりしていると、香港半島の先端、尖沙咀にいることを忘れてしまう。その時のお気楽夫婦は、まったり和む宿泊者の視点。…人間、勝手なものである。
【快楽主義宣言より】 ■「憧れホテルの引力」2009年8月30日