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ホテルの経営権が移るということは世界的に良くある話ではある。しかし、日本においてこのホテル程、波瀾万丈の歴史があるホテルもなかなかない。1995年にシーホークホテル&リゾートとして開業した当時は、ダイエー傘下。ダイエーがプロ野球南海ホークスを買収し、ホームタウンとして博多湾を臨む海岸沿いにホークスタウンを建設。福岡ドームと共に人気のホテルだった。そしてダイエーの経営破綻。球団はソフトバンクに売却され、ホテルはJALホテルズに運営委託された。ところがJALが経営破綻。2010年6月にヒルトン・ワールドワイドに運営先が変更され、ヒルトン福岡シーホークに名称変更。そして何より、村上龍の小説『半島を出よ』では、高麗遠征軍に占拠される物語の中で重要な拠点となった。
お気楽夫婦は、JALホテルズの時代に宿泊。巨大なリゾートは2人の好みとは違ったけれど、明るく開放的な客室は快適だった。
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2001年9月11日深夜、天神でたっぷり飲んだ私はタクシーに乗った。ホテルの名前を告げてシートに腰を下ろすと運転手が深刻そうに呟いた。「これは戦争になるね」ん?何?「戦争だよ」聞けば、NYCのワールドトレードセンターが爆破されたという。まさか。酔っぱらった私は、部屋に戻りTVを付けた。そしてTV画面には航空機がツインタワーに突っ込む映像が繰り返し繰り返し流されていた。シャワーを浴び、冷蔵庫のビールを出し、TVの前に座り込んだ。これは戦争だ。
翌朝、二日酔いと寝不足の身体を叩き起こすために、ホテルのジムでトレッドミルで走り込んだ。ジムのモニターには昨夜と同様の画像が流れていた。夢ではなかった。これはたいへんなことになる。
そんな記憶の上に新たな記憶を塗り込めるために、翌年の秋、妻と共にグランドハイアット福岡に宿泊した。キャナル・シティという再開発地区の中心にある斬新なデザインのホテル。メインダイニングは中華料理。今までのホテルの常識を覆すコンセプト。中華料理好きのお気楽夫婦にぴったり。劇団四季の常設劇場(当時)があり、シネコンがあり、ショッピングセンターがあり、レストラン街がある。開業は1996年。2003年に開業したグランドハイアット東京と六本木ヒルズの先駆け的なプロジェクトとも言える。ホテルの機能としては充分だけれど、眺望はいずれも今ひとつ。そんなところも似ているかもしれない。
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高さ296M、高層ビルとして日本一の高さを誇るランドマークタワー。その49階から最上階70階までを占めるのが横浜ロイヤルパークホテル。*お気楽夫婦の宿泊当時はそこに“ニッコー”が付いた。つまり、横浜ロイヤルパークホテルは、日本で最高層のホテル。ちなみに、建築物としても、今話題の東京スカイツリー(完成後634M)東京タワー(333M)明石海峡大橋(298M)に次ぐ高さ。客室は52階から67階、地上210M以上。このホテルの最大のウリは、どの方向にも遮るものがない素晴らしい“ビュー(眺望)”にある。
お気楽夫婦が宿泊したのは、コーナーツイン。名前の通りに角部屋の開放的な眺望だけではなく、バスルームにある窓からも不思議な風景が眺められる。船の客室にあるような丸い窓からは、波が見えそうな雰囲気。けれど、見えるのはもちろん遥か眼下に広がる模型のような街並。ビルから見下ろす眺望というよりは、飛行機からの眺めに近い。下から見上げた時には堂々と聳えていたインターコンチも、コスモクロック(観覧車)さえも、このホテルの従者のように思えてくる。いつしか現実=地上の景色と隔離された異空間にいる気分になってしまう。どこから眺めてもそれと分かる、文字通りランドマークであるのに、その内側にはホテルという名のHideaway(隠れ家)が包まれている。